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よびごえ
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女が仕事帰り、ちょっとした森の前を通る場所がある。
街灯もあまりないような場所だ。
女にとっては身の危険を感じてしまう場所だし、錆びついた看板には痴漢注意と書かれている。
普段は自転車でささっと通ってしまう場所なのだが、その日は自転車を修理に出していて歩きだった。
ただのパンクかと思っていたが、いろいろガタが着ていて、結局総点検して貰うことになってしばらく自転車屋に預けている。
女は不安な気持ちを抑え、森の前を徒歩で通る。
距離にして一キロから二キロ程度で、森の中ではなく森の前を通るだけなのだが、夜に通るとやはり怖い。
しかも、それだけの距離があるのに街灯は、二本しかたっていない。しかも、かなり古い街灯であまり明るくもない。
自転車でも怖いのに、歩きだとどうしても早歩きになってしまう。
そうは言っても、森の前であり森の反対側は点々とではあるが住宅があったりもする。
仕事帰りとはいえそれほど遅い時間でもない。
家の外灯がまだついているような時間だ。
住宅地側を歩けば問題ない、と女は自分に言い聞かせ、速足で歩く。
ちょうど森の真ん中くらいの場所だ。
街灯もなく、森の反対側も畑になっている、真っ暗な場所だ。
そんな場所で、森側から「おーい、おーい」と呼ぶ声が聞こえる。
ただ人の声か、と言われると疑問が残る。
鳥の声と言われるほうが納得できる、そんな声とも鳴き声とも取れる声で「おーい、おーい」と呼ぶ声が聞こえる。
女は驚きつつも足を止め、森のほうを見る。
闇だ。
闇しか見えない。
真っ暗な暗闇があるだけだ。
困ってる人でもいのかと、女は思ったが、女は恐怖のほうが勝っていた。
その場から全力で走ってその場を去った。
自転車には週末に自転車を取りに行くと伝えている。
明日と明後日も徒歩であの森の前を行かないといけない、そう考えると女は不安だった。
次の日は駅前でタクシーを捕まえて帰った。
けれど、時間がたつとただの気のせいで夜に鳥が鳴いていただけだと思うように女はなっていた。
だから、さらにその次の日、金曜の夜は歩きで帰ってしまった。
森のちょうど真ん中ぐらいの真っ暗な道。
一昨日、声が聞こえた場所に差し掛かったとき、また「おーい、おーい」と人の声とも鳥の鳴き声とも聞こえる声が聞こえてくる。
ただ明らかに女に向けられている。
女がその場に行くまではそんな声は全く聞こえてこなかったのだ。
その不気味な呼び声は間違いなく女にあててかけらられたものだ。
女がその考えに思い当たった瞬間、闇が揺れた。
森がざわめく。
葉や枝がぶつかり合いザワザワザワと音を立て始める。
その音よりも大きな声で「おーい、おーい」と声が聞こえる。
声の主が近づいてきている。しかも、真っ暗な森の中からだ。
そう思った女は逃げ出そうとするが、足がすくんでしまってうまく走れない。
それでも何とか女は動き始めるが、上手く走れずもどかしく思いつつも必死に走る。
その間にも呼び声は大きくなってくる。
もうすぐ後ろで声が聞こえる、振り返れば、この暗闇の中でも、そこに何が居るのか確認できてしまう、と言う距離感の時に、キキィーと音がして明るくなる。
女が後ろを見ると車が止まっていた。
あわただしくおじさんが車から降りてきて、車の前方周りを見渡す。
おじさんが女に気づいて、頭を下げながら近寄ってくる。
「あの、すいません。今何か引いてしまった気がしたんですが……」
と、声をかけられた。
「私以外、誰も、何も、いませんでしたよ」
と、女は安心して返事を返した。
実際、そこには何もいない。
街灯もあまりないような場所だ。
女にとっては身の危険を感じてしまう場所だし、錆びついた看板には痴漢注意と書かれている。
普段は自転車でささっと通ってしまう場所なのだが、その日は自転車を修理に出していて歩きだった。
ただのパンクかと思っていたが、いろいろガタが着ていて、結局総点検して貰うことになってしばらく自転車屋に預けている。
女は不安な気持ちを抑え、森の前を徒歩で通る。
距離にして一キロから二キロ程度で、森の中ではなく森の前を通るだけなのだが、夜に通るとやはり怖い。
しかも、それだけの距離があるのに街灯は、二本しかたっていない。しかも、かなり古い街灯であまり明るくもない。
自転車でも怖いのに、歩きだとどうしても早歩きになってしまう。
そうは言っても、森の前であり森の反対側は点々とではあるが住宅があったりもする。
仕事帰りとはいえそれほど遅い時間でもない。
家の外灯がまだついているような時間だ。
住宅地側を歩けば問題ない、と女は自分に言い聞かせ、速足で歩く。
ちょうど森の真ん中くらいの場所だ。
街灯もなく、森の反対側も畑になっている、真っ暗な場所だ。
そんな場所で、森側から「おーい、おーい」と呼ぶ声が聞こえる。
ただ人の声か、と言われると疑問が残る。
鳥の声と言われるほうが納得できる、そんな声とも鳴き声とも取れる声で「おーい、おーい」と呼ぶ声が聞こえる。
女は驚きつつも足を止め、森のほうを見る。
闇だ。
闇しか見えない。
真っ暗な暗闇があるだけだ。
困ってる人でもいのかと、女は思ったが、女は恐怖のほうが勝っていた。
その場から全力で走ってその場を去った。
自転車には週末に自転車を取りに行くと伝えている。
明日と明後日も徒歩であの森の前を行かないといけない、そう考えると女は不安だった。
次の日は駅前でタクシーを捕まえて帰った。
けれど、時間がたつとただの気のせいで夜に鳥が鳴いていただけだと思うように女はなっていた。
だから、さらにその次の日、金曜の夜は歩きで帰ってしまった。
森のちょうど真ん中ぐらいの真っ暗な道。
一昨日、声が聞こえた場所に差し掛かったとき、また「おーい、おーい」と人の声とも鳥の鳴き声とも聞こえる声が聞こえてくる。
ただ明らかに女に向けられている。
女がその場に行くまではそんな声は全く聞こえてこなかったのだ。
その不気味な呼び声は間違いなく女にあててかけらられたものだ。
女がその考えに思い当たった瞬間、闇が揺れた。
森がざわめく。
葉や枝がぶつかり合いザワザワザワと音を立て始める。
その音よりも大きな声で「おーい、おーい」と声が聞こえる。
声の主が近づいてきている。しかも、真っ暗な森の中からだ。
そう思った女は逃げ出そうとするが、足がすくんでしまってうまく走れない。
それでも何とか女は動き始めるが、上手く走れずもどかしく思いつつも必死に走る。
その間にも呼び声は大きくなってくる。
もうすぐ後ろで声が聞こえる、振り返れば、この暗闇の中でも、そこに何が居るのか確認できてしまう、と言う距離感の時に、キキィーと音がして明るくなる。
女が後ろを見ると車が止まっていた。
あわただしくおじさんが車から降りてきて、車の前方周りを見渡す。
おじさんが女に気づいて、頭を下げながら近寄ってくる。
「あの、すいません。今何か引いてしまった気がしたんですが……」
と、声をかけられた。
「私以外、誰も、何も、いませんでしたよ」
と、女は安心して返事を返した。
実際、そこには何もいない。
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