それなりに怖い話。

只野誠

文字の大きさ
163 / 710
しばんむし

しばんむし

しおりを挟む
 最近、男の部屋で虫を見る。
 死番虫だ。
 茶色く、小さい、甲虫だ。

 たしかに、この家は古い家だ。
 先祖代々受け継いだ古い家だ。
 虫が湧くのも分かる話だ。

 だが、少し離しは変わってくる。男が使っている部屋だけに虫が妙に湧くのだ。

 なにか餌になるような物はないはずなのに、男の部屋にだけ死番虫が湧く。
 いくら掃除をしても、次の日になれば虫が湧いている。
 男は首をかしげる。
 仕方なく燻煙式の殺虫剤を使うが、それでも次の日にはもういるのだ。

 どこからともなく現れる。
 そして、動き回る。
 床に、壁にと動き回る。

 結局、どこから湧いてくるのかわからない。
 男は死番虫のことを調べる。
 名前の由来は死神の時計が刻むような音を発することからと言われている。
 また、乾燥食品によく湧くという事も分かった。

 男の部屋以外には死番虫を見かけることはない。
 だから、ここに何かがあるはずだ、と男は自分の部屋を徹底的に掃除することにした。
 部屋の物を全てだし、部屋を掃除していく。
 そこで気づく。
 箪笥の裏の壁に小さな穴がありそこから、死番虫が出てきていることに。
 死番虫の巣でもあるのか、そう思った男は穴の中を覗く。

 中は暗く何があるのかよくわからない。
 ただカサカサと何かが蠢く音とカチカチと時計の秒針のような音が聞こえてくる。
 相当な量の死番虫がいるようだ。

 ここまでやったのなら、と男は業者を呼び壁紙を剥がし、壁の一部を剥がしてもらう。
 そして、出て来たのはミイラ化した人間の死体だった。
 男は驚いて、そのミイラ化した死体を餌にしていた死番虫に吐きそうになる。
 
 まさか壁の中にこんなものが埋まっているとは男も知らなかった。
 警察が調べた結果、それはかなり昔の、それこそ戦前の物だという事がわかった。

 少なくとも男には事件性は無いという事で余り大事にはならなかった。
 それでも男は、この先祖代々受け継いできた家に住み続けるかどうか迷いはする。



 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百の話を語り終えたなら

コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」 これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。 誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。 日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。 そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき—— あなたは、もう後戻りできない。 ■1話完結の百物語形式 ■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ ■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感 最後の一話を読んだとき、

短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)

本野汐梨 Honno Siori
ホラー
 あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。 全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。 短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。 たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。

奇談

hyui
ホラー
真相はわからないけれど、よく考えると怖い話…。 そんな話を、体験談も含めて気ままに投稿するホラー短編集。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...