それなりに怖い話。

只野誠

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しょうじ

しょうじ

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 男は法事に来ていた。
 かなり早くお寺に着いてしまっているため、お寺の待合室で待っていた。

 かなり古い建物。
 障子は廊下と、襖は他の部屋と繋がっている。そんな一室だ。
 これまた古いエアコンが唸りをあげて冷たい風を出していく。
 少し冷えすぎなくらいだ。

 男は置いてあった急須に茶葉のパックをいれて、備えてあったポットからお湯を注ぐ。
 煎茶の良い香りが漂う。
 これまた備えてあった茶菓子をかじりながらお茶を飲む。
 煎茶の爽やかな味わいと甘い茶菓子の味わいがとても良い。
 暖かい煎茶が冷えすぎの室内では心地よく思える。

 男は一息つく。
 ふと視界に影が写る。

 障子だ。
 ぼんやりと日の光を通す障子に人影が写っている。
 男はやっと誰か来たのか、そんなことを考えて挨拶の準備をしようとする。
 だが、障子の前の人影は部屋に一向に入ってこない。

 それに変だ。
 人影が着物を着た女性に見える。
 法事なので着物を着ていてもおかしくはないのだが、法事してはかなりはではでしい着物だ。
 お坊さんの袈裟がそう見えているだけかと思ったが、人影の髪は長いように思える。

 人影は今もゆらゆらと揺れている。
 髪が揺れているのが、影でわかるくらいだ。

 そこで男は不思議に思う。
 障子にこんなはっきりと影が、それも髪の毛の影まで映るものなのかと。

 障子に映る人影は男をからかっているのか、舞を踊るように優雅にゆったりと動いている。

 男は若干の恐怖に囚われ始める。
 寺の待合室という不思議な空間が男に何かを感じさせる。
 だが、今はまだ午前中だ。
 日の光の中にいる。
 その事が男を強気にさせる。
 それになんだかんだで、この部屋には自分だが近くに人もいるはずだと。
 そして、ここは寺だぞ、と、そんな怪しげな存在がいるわけないと。

 男は勇気を出して、人影の写る障子を開けた。

 そこには誰もいなかった。
 そこにあったのは日の差し込む明るい廊下だけだった。
 男は慌てて、確認するように障子を閉める。

 そこにはもう何も写り込んでいなかった。

 男は呆気に取られる。
 そうして男が呆けていると、お坊さんが親戚を連れてくる。
 男は慌てて先ほど見た影をお坊さんに報告する。

 そうするとそのお坊さんは、ギョッとした顔を見せる。
 そして、また出たのですか、と言葉を漏らした。

 男は、あの影はなんなのですか? と、お坊さんに聞くと、お坊さんはたまに出るのですが正体不明で楽しそうに舞っているだけで害はないのですが気持ちの良い物ではないですね、と言った。
 お坊さんでも祓えない物ですか? と男が聞くと、お坊さんは、ニッコリ笑った。
 しすて、うちの宗派は幽霊を信じてないんですよ、と笑顔でそう言った。

 男はやっぱり呆気に取られた。
 ただそれだけの話だ。



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