それなりに怖い話。

くらげ

くらげ

　砂浜にクラゲが打ち上げられている。
　透明なクラゲだ。

　少女はそれを見る。
　浜辺に打ち上げられているクラゲは生きているのか死んでいるのか、それもわからない。
　ただ、死んでもクラゲには毒があることは少女は知っている。
　だから、少女はクラゲに触ろうとはしない。

　色のない透明なクラゲで、四つの模様だけが白く見えている。
　
　かなり大きなクラゲで直径三十センチから四十センチくらいはある。
　触手の部分を含めれば数倍以上に大きい。
　この辺りの海にいるクラゲは精々十五センチなので、このクラゲがかなり大きい。

　ただ少女はこのクラゲに対して何もできない。
　クラゲは毒を持っているのだから、不用意に触ることはできない。
　去年、同じように砂浜に打ち上げられたクラゲを助けようとして酷い目にあったことを少女は思い出す。
　クラゲの毒は想像以上にいたい。

　だから、少女に出来ることはない。
　少女に出来ることと言えば、かわいそうにと思う事くらいで何もない。

　そもそも、この大きなクラゲが生きているのか死んでいるのか、少女には判断できない。
　それに、少女はもうクラゲに刺されて痛い思いをするのは嫌だとも考えている。

　砂浜に打ち上げられたクラゲを見守ることしか少女にはできない。

　その夜の事だ。
　少女は夢を見る。

　なにもない空間で大きなクラゲに追われる夢だ。
　少女はすぐに昼間見たクラゲが助けなかったので怒っているのだと理解する。

　夢の中で少女は大きなクラゲから逃げる。
　だが、大きなクラゲは少女をどこまでも追いかける。

　そして、クラゲは少女に触手を伸ばす。
　毒の刺胞がある触手を。

　夢の中では少女は触手に触れられた場所に痛みを感じる。
　それでも少女は謝りながら、クラゲから逃げた。

　翌朝、少女の体には無数のクラゲに刺された跡が残っていた。

　少女は親にまたクラゲ触ったんでしょうと、怒られたが少女は、触らなかったから刺された、と言い返した。

　ただそれだけの話だ。