それなりに怖い話。

只野誠

文字の大きさ
311 / 769
まどのすきま

まどのすきま

しおりを挟む
 少女の部屋の雨戸。
 立て付けが悪くちゃんと閉まらない。
 ちゃんと鍵はかかるので特に問題はないのだが、ほんの五ミリ程度、隙間がどうしても空いてしまうのだ。
 無論カーテンもあるので、そこから少女の部屋が覗かれることもない。

 だが、あるのだ。
 隙間が。五ミリ程度の、そんな隙間が。

 深夜、少女がそろそろ寝ようか、という時間帯。
 不意に少女は窓が気になり始めた。
 特に物音がしたわけではない、何かの気配を感じたわけではない、視線を感じたわけでもない。
 だが、不意に窓が気になったのだ。

 少女は無意識にカーテンを開ける。
 そうするとカーテンとガラスの窓の間にたまっていた冷たい空気が放たれる。
 少女はその冷たい空気を感じつつ、雨戸の隙間に目をやる。

 そこからは闇が見えるだけだ。
 他に何も見えるわけはない。
 と、少女が思っていると、雨戸と雨戸の間に白い物が見えた。

 少女は身構え、嫌な顔をする。
 それは何かの虫の幼虫だ。イモムシだ。
 幼虫が寒さをしのぐかのように、外から雨戸の中に入ろうともがいていたのだ。

 もう十一月も下旬だ。
 幼虫がそんな時期にいるなんて珍しい、と思いつつも少女はいい顔をしない。
 ただ、叫んだり慌てたりもしない。
 まだ少女と幼虫の間には、ガラスの窓があるからだ。

 だから、少女はその幼虫が雨戸のうちに入り込もうとするのを、どこか他人事のように見ていた。
 外も寒いのだから、少しでも寒さをしのげる場所に行きたいのだろう、それくらいにしか思ってなかった。

 だが、次の瞬間だ。
 雨戸の閉まりきれない隙間から、別の幼虫が顔を出す。
 同じく白いイモムシだ。
 大きさは二センチもないくらいの小さな幼虫だ。

 流石にガラスの窓があるとはいえ、二匹目となると少女はあまりいい顔はできない。
 寝る前に嫌なものを見つけてしまった、と、そう考える。

 だが、虫は群れるものだ。

 少女が二匹目の幼虫に顔を顰めていると、三匹目、四匹目と、それととどまらず次々と雨戸の隙間から入り込もうとする幼虫が増えだした。
 流石に少女は声を上げる。

 そして、別の部屋にいる父親の元へと走る。

 少女が父親を呼び、自分の部屋に戻ってくると、もうその幼虫はいなかった。
 まるではじめっから、そんな物がいなかったかのように、幼虫はいなくなっていた。

 その夜、少女は夢を見る。
 自分の部屋に幼虫が入り込み、部屋の至る所を這いまわる幼虫の夢を。

 少女が悪夢から起き、窓を開けようとしたときだ。
 処女の部屋のガラスの窓にいくつかの、三つか四つの繭のような物がくっついている。

 少女はそれがすぐに昨日の幼虫の繭だと理解して、悲鳴を上げる。



 その繭は父親によって撤去され、雨戸のたてつけも修理された。
 それでも少女はたまにあの幼虫の悪夢を見る。
 なぜなら、少女の部屋に入り込もうとした幼虫はもっとたくさんいたからだ。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。 意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。 隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

きさらぎ駅

水野華奈
ホラー
親友から電話があった。 きさらぎ駅という場所にいるらしい… 日常の中の小さな恐怖が今始まる。 触れてしまったが最後。 二度と戻れない。

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

『ショート怪談』訪れるもの

見崎志念
ホラー
一話完結のお話をぽつぽつとしたためております。ドロッとしたよくわからないものに対しての恐怖をお楽しみください

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】 ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。 八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。 === エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中 【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】 【怖さレベル】 ★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度 ★★☆ ふつうに怖い話 ★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話 ※8/2 Kindleにて電子書籍化しました 『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』

処理中です...