それなりに怖い話。

只野誠

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ぶひん

ぶひん

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 部品がない。
 いや、ないわけがない。

 男は通販で家具を買った。
 届いたその日にに部品が足りているかどうか、それだけはチェックしたのだ。

 組み立て式の家具だったので、週末にでも作る気でいたのだ。
 そして、週末はやってきた。
 男が昼食を取った後に、家具を作り出す。
 設計図に沿って丁寧に作る。

 だが、届いたときはあったはずの部品がないのだ。

 男は首を捻り、丁寧に周囲を探す。
 プラスチックの部品だ。
 それが可動部の要で、それがないとこの家具を作ることは出来ない。

 ほんとの数センチ程度の部品だが、それがなければどうにもならないし、後からその部品だけ取り付けることもできない。

 たしかにその部品はあったはずなのだ。
 しかし、今はない。

 男は独り暮らしで、他に住人がいるわけではない。
 なのに部品がなくなっているのだ。

 男は記憶をたどる。
 検品したときは確かにあった。
 だが、今はない。

 何度も何度も男は周囲を探るが、それらしい部品はない。
 ネジなどなら、他のもので代用できるかもしれないが、そのプラスチックの部品はそう言うわけにもいかない。

 しかも、それは可動部に絶対必要な部品なのだ。

 だが、その部品はない。
 男は諦める。

 そして、販売元に電話して相談しようとした時だ。
 スマホと共にその部品が出てくる。
 男のポケットの中から、なくしたはずの部品が出てくる。

 男はやはり首を捻る。
 ポケットに入れた覚えはなかったのだ。
 無意識のうちに入れてしまったのか、男はとりあえずそう思うことにした。

 そして、家具作りを再開しようとする。
 だが、今度はそのプラスチックの部品を止めるためのネジがない。
 さっきまであったのにだ。
 男が首を捻り辺りを探すが、影も形もない。
 そこで、男はひらめく。

 まさかと思ってポケットに手を突っ込むと、そこには目的のネジが出てくる。
 流石にポケットの中に入ってたらすぐに気づきそうな大きさのネジが出てくる。

 男は首を捻るしかない。

 だが、家具作りを再開する。
 そうやって度々必要な備品がなくなりっては、ポケットから出て来るを繰り返していると、時刻は夕方になっていた。
 もう外から差し込んでくる光はオレンジ色だ。
 男はため息をつきつつ、ネジを閉めようとして、ドライバーを落としてしまう。

 その時だ。
 床に落ちたドライバーを誰かの手が拾い上げ、男に手渡ししてくれた。
 男は、ああ、すいません、と声に出してお礼を言った後、背筋が凍り付く。

 この家には自分しかいないのだ。
 先ほど、ドライバーを拾い上げてくれた手は誰の手だったのか……
 男が辺りを見回すが、男以外は誰もいなかった。

 それは当たり前の話だ。



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