320 / 710
いけのこおり
いけのこおり
しおりを挟む
今日も庭の小さな池に氷が張っている。
池にいるのは金魚だけだかが、それでも金魚のために氷を割っておかなければならない。
男は仕事に行く前に、箒の柄で池の氷をつつき、割っていくのが日課になりつつある。
その日も男は池の氷をつつく。
そんな厚い氷ではないので、すぐに割れる。
これで金魚たちも大丈夫だろう、男はそう考えて池を見る。
だが、だいぶ池は汚れている。
そろそろ掃除してやらないといけない時期だが、今は寒い。
池に氷が張るほど冷たいのだ。
だが、億劫になりながらもやらなければならない。
金魚はもともと子供たちが夏祭りの金魚すくいで捕まえて来たものだ。
それをここの小さな池に放したのだ。
金魚は数も減らず、のびのびと池で泳いでいる。
だが、子供たちが金魚の世話をしていたのは、夏の終わりごろまでだ。
今は完全に男の仕事になってしまっている。
池の氷を割ったところで、男は金魚の餌を池に投げ込んで、週末に無理やりにでも子供たちと池の掃除をしなければ、と心に誓う。
次の日はやけに冷え込んでいた。
男が池の氷を箒の柄でつつくが、氷は厚く簡単には割れなかった。
仕事に行く前の時間であまり時間がないのだが、仕方なく男は手でその氷を取り除く。
冷たい。
指がもがれると思うほど池の水も氷も冷たい。
それに今日は氷が厚いせいか、水草のような物を巻き込んで凍ってしまっている。
男は背広に池の水がつかないように注意しつつ、氷を取り除こうとする。
だが、そこで男は気づく。
氷に巻き込まれていたのは水草ではない。
長く、黒い、髪の毛だ。
それに気づいてしまった男は、ヒィ、と声をあげて、氷を投げ捨てる。
そのまま、家の中へ逃げ帰り、妻に池のことを伝える。
後のことを妻に任せて、もう時間がないからと、男は仕事へ向かう。
男の妻が、家の用事を済ませた後、庭の池の様子を見ると、そこには池の近くに投げ出された水草だけが横たわっていた。
妻は、男が見間違えたのだと、そう思って笑いながら池を見ると、池の中から、水の中から人が、妻を見ていたのだ。
女は大きな悲鳴を上げる。
その悲鳴を聞いて、隣人が駆けつけて来るが、その時はもう池の中の人は見つからなかった。
妻の話を聞いて、男は掃除ではなく池を埋めることにした。
金魚たちには家の中でも飼える水槽に移ってもらうことにした。
ただそれだけの話だ。
池にいるのは金魚だけだかが、それでも金魚のために氷を割っておかなければならない。
男は仕事に行く前に、箒の柄で池の氷をつつき、割っていくのが日課になりつつある。
その日も男は池の氷をつつく。
そんな厚い氷ではないので、すぐに割れる。
これで金魚たちも大丈夫だろう、男はそう考えて池を見る。
だが、だいぶ池は汚れている。
そろそろ掃除してやらないといけない時期だが、今は寒い。
池に氷が張るほど冷たいのだ。
だが、億劫になりながらもやらなければならない。
金魚はもともと子供たちが夏祭りの金魚すくいで捕まえて来たものだ。
それをここの小さな池に放したのだ。
金魚は数も減らず、のびのびと池で泳いでいる。
だが、子供たちが金魚の世話をしていたのは、夏の終わりごろまでだ。
今は完全に男の仕事になってしまっている。
池の氷を割ったところで、男は金魚の餌を池に投げ込んで、週末に無理やりにでも子供たちと池の掃除をしなければ、と心に誓う。
次の日はやけに冷え込んでいた。
男が池の氷を箒の柄でつつくが、氷は厚く簡単には割れなかった。
仕事に行く前の時間であまり時間がないのだが、仕方なく男は手でその氷を取り除く。
冷たい。
指がもがれると思うほど池の水も氷も冷たい。
それに今日は氷が厚いせいか、水草のような物を巻き込んで凍ってしまっている。
男は背広に池の水がつかないように注意しつつ、氷を取り除こうとする。
だが、そこで男は気づく。
氷に巻き込まれていたのは水草ではない。
長く、黒い、髪の毛だ。
それに気づいてしまった男は、ヒィ、と声をあげて、氷を投げ捨てる。
そのまま、家の中へ逃げ帰り、妻に池のことを伝える。
後のことを妻に任せて、もう時間がないからと、男は仕事へ向かう。
男の妻が、家の用事を済ませた後、庭の池の様子を見ると、そこには池の近くに投げ出された水草だけが横たわっていた。
妻は、男が見間違えたのだと、そう思って笑いながら池を見ると、池の中から、水の中から人が、妻を見ていたのだ。
女は大きな悲鳴を上げる。
その悲鳴を聞いて、隣人が駆けつけて来るが、その時はもう池の中の人は見つからなかった。
妻の話を聞いて、男は掃除ではなく池を埋めることにした。
金魚たちには家の中でも飼える水槽に移ってもらうことにした。
ただそれだけの話だ。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)
本野汐梨 Honno Siori
ホラー
あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。
全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。
短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。
たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。
百の話を語り終えたなら
コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」
これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。
誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。
日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。
そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき——
あなたは、もう後戻りできない。
■1話完結の百物語形式
■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ
■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感
最後の一話を読んだとき、
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる