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くらいひ
くらいひ
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その日はどこか暗かった。
部屋に電気がついていないわけではない。
外の天気も晴れていて日の光が届かないわけではない。
なのに、男はどこか暗く、世界が暗く感じていた。
何がどう暗いのか。
それは男にもうまく説明できない。
だが、視界は、見えているものは、普段と変わらないのも関わらず男はどこか暗いと、そう思っていた。
まるで自分だけ見えない遮光カーテンの中にいるかのような、そんな感じなのだ。
自分の目がおかしいのか、と、男は思うのだが、視界的に暗いわけではない。
ただ、暗い、とそう感じるだけなのだ。
実際部屋の中は明るい。
だが、なぜか暗いと、男はそう感じてしまう。
部屋の中だけではない。
雲一つない青空の下に出ても、太陽の光が届く場所にいても、男はなぜか暗いと、そう感じていた。
無論、実際に暗いわけではない。
だからこそ、男は混乱する。
自分はどこかおかしくなってしまったのではないかと。
そして、もう一つおかしなことに気づく。
音が遠いのだ。
音が聞こえないわけではない。
ただ、音がしているのにどこか遠くから聞こえて来るかのように聞こえてくるのだ。
男は何かの病気の前兆かもしれない。
そう考えた。
病院に行った方が良い、そう考えて、とりあえず身支度をするために鏡の前に立った時だ。
自分の背後に誰かがいる。
黒い服を着た女性で、黒い布で顔を隠している。
その女性が手で、男の目と耳を覆っているのだ。
男は訳が分からない。
手で覆われたら何も見えるわけはないのに、鏡の中の自分は背後にいる黒い女性に手で覆われているのだ。
もちろん、実際の男は手で視界を隠されているわけではない。
男は振り返る。
そこに黒い服の女性などいない。
いるわけがない。
だが、鏡の中の自分は黒い服の女性に目と耳を覆われているのだ。
こいつのせいか、と、男は理解する。
これは病院に行くよりお祓いに行ったほうが良いのかもしれない、と男が考える。
試しに、男は鏡の中で自分の目と耳を覆っている女の手を、振り払うようにする。
そうすると、鏡の中の黒い女はあっさりと男の背後から消えていなくなった。
男はもう暗く感じることもないし、音が遠くから聞こえるようなこともない。
その代わり激しい頭痛が男を襲う。
男が頭痛に耐え切れずその場に倒れ込む。
男は理解する。
背後にいたあれは、この痛みを遠ざけてくれていたのだ。
男はそのまま倒れ込み意識を失う。
その後、男がどうなったのか。
この話が伝わっているということはそう言うことだ。
部屋に電気がついていないわけではない。
外の天気も晴れていて日の光が届かないわけではない。
なのに、男はどこか暗く、世界が暗く感じていた。
何がどう暗いのか。
それは男にもうまく説明できない。
だが、視界は、見えているものは、普段と変わらないのも関わらず男はどこか暗いと、そう思っていた。
まるで自分だけ見えない遮光カーテンの中にいるかのような、そんな感じなのだ。
自分の目がおかしいのか、と、男は思うのだが、視界的に暗いわけではない。
ただ、暗い、とそう感じるだけなのだ。
実際部屋の中は明るい。
だが、なぜか暗いと、男はそう感じてしまう。
部屋の中だけではない。
雲一つない青空の下に出ても、太陽の光が届く場所にいても、男はなぜか暗いと、そう感じていた。
無論、実際に暗いわけではない。
だからこそ、男は混乱する。
自分はどこかおかしくなってしまったのではないかと。
そして、もう一つおかしなことに気づく。
音が遠いのだ。
音が聞こえないわけではない。
ただ、音がしているのにどこか遠くから聞こえて来るかのように聞こえてくるのだ。
男は何かの病気の前兆かもしれない。
そう考えた。
病院に行った方が良い、そう考えて、とりあえず身支度をするために鏡の前に立った時だ。
自分の背後に誰かがいる。
黒い服を着た女性で、黒い布で顔を隠している。
その女性が手で、男の目と耳を覆っているのだ。
男は訳が分からない。
手で覆われたら何も見えるわけはないのに、鏡の中の自分は背後にいる黒い女性に手で覆われているのだ。
もちろん、実際の男は手で視界を隠されているわけではない。
男は振り返る。
そこに黒い服の女性などいない。
いるわけがない。
だが、鏡の中の自分は黒い服の女性に目と耳を覆われているのだ。
こいつのせいか、と、男は理解する。
これは病院に行くよりお祓いに行ったほうが良いのかもしれない、と男が考える。
試しに、男は鏡の中で自分の目と耳を覆っている女の手を、振り払うようにする。
そうすると、鏡の中の黒い女はあっさりと男の背後から消えていなくなった。
男はもう暗く感じることもないし、音が遠くから聞こえるようなこともない。
その代わり激しい頭痛が男を襲う。
男が頭痛に耐え切れずその場に倒れ込む。
男は理解する。
背後にいたあれは、この痛みを遠ざけてくれていたのだ。
男はそのまま倒れ込み意識を失う。
その後、男がどうなったのか。
この話が伝わっているということはそう言うことだ。
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