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みしらぬせいと
みしらぬせいと
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女は学校の教師だ。
たまにだが校舎の見回りを任せられることがある。
女が一番若い教師だからかもしれない。
見慣れた校舎ではあるが、日が落ちた校舎はどこか不気味だ。
生徒がいるときには感じない、言い知れぬ寂しさと、どこからか這い寄ってくるような恐怖がある。
そんな校舎の教室で女は人影を見る。
急いで女が教室に行くと一人の生徒が直立不動で教室の真ん中に立っている。
女が、もう下校時間ですよ、と声をかけるとその生徒が振り返る。
見たことのない生徒だ。いや、制服自体がこの学校の物ではない。
だが、女がそれ以上に異様だと感じたのは、その生徒の顔だ。
異様に白いのだが、暗い教室の中で妙に目立って見える。
顔自体が淡く発光しているかのようにも見える。
その生徒、制服からして男子生徒は膨れ上がったようなまん丸い顔で女を見る。
白目などがないほど大きな黒目で女を見る。
女は見たことないのだが、まるで水死体のように、パンパンに膨れ上がったような顔でその生徒は女を見ている。
直立不動で、教室の真ん中で、白い顔で、見ているのだ。
女も尋常でない何かを感じてはいたが、その制服、うちのじゃないわよね? どこの生徒ですか? と声をかけた。
その瞬間だ。
教室内の机や椅子がガタガタと音を立てて揺れだす。
女が地震かと思っているが、揺れているのは机と椅子だけで、他は全く揺れてもいない。
その事に気づいた女は、後ずさり始める。
教室の扉を閉めて、その場から走り去る。
特に追われるようなことはなかった。
だが、それ以降度々その生徒を校舎で、しかも放課後の誰もいなくなった校舎で見かけるようになる。
女は年配の教師にそのことを相談すると、年配の教師は、あー、と言った後、口を閉じた。
そして、少しの間を持ってから、後で学校を出てから、とだけそういった。
女は年配の教師と仕事帰りに居酒屋へ行く。
そこでポツリポツリと話し始める。
あれは昔からあの学校に住み着いている、霊か妖怪か、そんな存在だ。
ここ最近は見なかったんだが、校舎内でそれの話をすると寄ってくるんだ。
ただ、見かけても近づかなければ何もされないから、見かけたら逃げればいい。
と、そう言った。
女はその説明だけでは不満で、あれは何なんですか? と年配の教師に問う。
年配の教師は、自分も知らない、と答え、ただ噂をするとよって来てドアの隙間から職員室を覗くこともある。だから校舎内ではあまり話さないでね、と言った。
女は納得できなかったが、そもそも納得できるものでもないのだろうと、諦めた。
その後も、何度かあの見知らぬ生徒を見かける。
女は見かけたとたんに逃げるようにしている。
たしかに、それで何かされるようなことはない。
ただ、それは放課後の誰もいなくなった校舎に今もいるのだ。
たまにだが校舎の見回りを任せられることがある。
女が一番若い教師だからかもしれない。
見慣れた校舎ではあるが、日が落ちた校舎はどこか不気味だ。
生徒がいるときには感じない、言い知れぬ寂しさと、どこからか這い寄ってくるような恐怖がある。
そんな校舎の教室で女は人影を見る。
急いで女が教室に行くと一人の生徒が直立不動で教室の真ん中に立っている。
女が、もう下校時間ですよ、と声をかけるとその生徒が振り返る。
見たことのない生徒だ。いや、制服自体がこの学校の物ではない。
だが、女がそれ以上に異様だと感じたのは、その生徒の顔だ。
異様に白いのだが、暗い教室の中で妙に目立って見える。
顔自体が淡く発光しているかのようにも見える。
その生徒、制服からして男子生徒は膨れ上がったようなまん丸い顔で女を見る。
白目などがないほど大きな黒目で女を見る。
女は見たことないのだが、まるで水死体のように、パンパンに膨れ上がったような顔でその生徒は女を見ている。
直立不動で、教室の真ん中で、白い顔で、見ているのだ。
女も尋常でない何かを感じてはいたが、その制服、うちのじゃないわよね? どこの生徒ですか? と声をかけた。
その瞬間だ。
教室内の机や椅子がガタガタと音を立てて揺れだす。
女が地震かと思っているが、揺れているのは机と椅子だけで、他は全く揺れてもいない。
その事に気づいた女は、後ずさり始める。
教室の扉を閉めて、その場から走り去る。
特に追われるようなことはなかった。
だが、それ以降度々その生徒を校舎で、しかも放課後の誰もいなくなった校舎で見かけるようになる。
女は年配の教師にそのことを相談すると、年配の教師は、あー、と言った後、口を閉じた。
そして、少しの間を持ってから、後で学校を出てから、とだけそういった。
女は年配の教師と仕事帰りに居酒屋へ行く。
そこでポツリポツリと話し始める。
あれは昔からあの学校に住み着いている、霊か妖怪か、そんな存在だ。
ここ最近は見なかったんだが、校舎内でそれの話をすると寄ってくるんだ。
ただ、見かけても近づかなければ何もされないから、見かけたら逃げればいい。
と、そう言った。
女はその説明だけでは不満で、あれは何なんですか? と年配の教師に問う。
年配の教師は、自分も知らない、と答え、ただ噂をするとよって来てドアの隙間から職員室を覗くこともある。だから校舎内ではあまり話さないでね、と言った。
女は納得できなかったが、そもそも納得できるものでもないのだろうと、諦めた。
その後も、何度かあの見知らぬ生徒を見かける。
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ただ、それは放課後の誰もいなくなった校舎に今もいるのだ。
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