それなりに怖い話。

只野誠

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まっくら

まっくら

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 女が目を覚ますと真っ暗だった。
 まだ真夜中か、女は寝ぼけた頭でそう考えた。
 でも、それにしては真っ暗だ。

 真夜中にしても、少しは光で見えるはずなのに。
 何らかの、電子機器なんかの光は、あるはずなのだ。

 だが、女が目を開けても見えるものは闇だけだ。

 眼が慣れていない、とか、そう言った話ではない。
 眼を開けても閉じても、変わりがないくらい真っ暗なのだ。

 次第に鮮明になっていく思考で、女もなにかおかしいと勘づき始める。

 とりあえず頭に何かかぶってないか、手で払ってみる。
 そうすると、確かに顔の上に何かがある。

 触れられないのだが、なにか、布のような物が何枚も何枚も重なっているような感覚だけはある。
 ただ、それには触れられないのだ。
 なにかある感覚はするのだが、女の手はその布のような何かを掴むことも触ることもできないのだ。

 そのことで女もパニックになる。
 女は寝たまま、手をばたつかせて、顔の上にある何かをどうにか振り払おうとする。

 女があんまりにも手を大きく振るものだから、それも気が付く。
 それは下を見る。
 女を見る。

 女もそれと目が合う。
 それは女性だった。

 ちょうど女の顔の上に立つように、いや、宙に浮く様に。
 ドレスを着た女性が立っていたのだ。

 女が必死に振り払おうとしていたものは、そのドレスを着た女性のスカートの裾だったのだ。

 女の脳はそれを理解できない。
 なぜドレスを着た女性が自分の上に立っているのか。
 またスカートでなにも見えないはずなのに、その女性と今、目が合っているのか。

 いや、それはわかっている。
 そのドレスを着た女性が、透けているからだ。
 さっきまでは真っ暗だったのだが、今は透けているのだ。

 女が呆然としていると、そのドレスの女性はどんどん透明になって消えていった。

 そして、いつもの部屋だけが残る。
 もう窓の隙間から朝日が差し込んできている。

 女はしばらく呆然としていたが、すべては夢だったと、そう思うことにして二度寝した。
 女が目覚めたとき、既に昼過ぎだった。

 ただそれだけの話だ。


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