それなりに怖い話。

只野誠

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のびてくるて

のびてくるて

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 少女には親友がいる。
 住んでいる場所も近所で、幼い頃より姉妹のように育った同い年の親友がいる。
 だが、ここ数カ月その親友と一緒にいるとたまに奇妙なものを見るようになった。

 手だ。

 排水口や下水溝、そういったところから、親友の背後のそう言った場所から白い手が出て、親友に向かいゆっくりとだが確実に、親友の死角を突いて伸びて来るのだ。
 少女にはそれがどういった物か理解できなかったし、大人にそのことを言っても信じてくれなかった。
 親友は疑うことなく少女の話を信じてくれたが、親友がその手を見ることはなかった。

 親友が見ようとするとその手はスッーと、空中に溶けるように消えてしまうのだ。
 ただ少女にはあの手に捕まれてはいけない、大変なことになる、そう思えて仕方なかった。

 なにせ、排水口や下水溝と言った場所からその青白い手は伸びて来るのだ。
 良い物の訳がない。

 少女は親友を守れるのは自分しかいない、そう考えていた。

 その日も、少女の親友に向かい手が伸びて来ていた。
 下水溝からだ。
 しかも、少女が気づいた時、その手は親友にもう手が届く寸前まで伸びて来ていた。

 少女は咄嗟に親友を突き飛ばして、自分がその手の前に立った。
 伸び着て来ていた手は少女を掴む。

 冷たく生臭く湿った手だった。

 そして、その手は物凄い力で少女を引っ張る。
 排水口に引きづり込むように。
 少女の力ではその力に対抗することはできないほど強い力だ。

 そこへ突き飛ばされた親友が来て、その伸びて来た手を掴むと、しっぺをした。

 子供の頃、なんかの罰ゲームでした、あれだ。
 二本の指を立てて相手の腕にぶつける。
 ただ少女のの親友はしっぺの達人として少しばかり名を馳せていた。

 ベチンと大きな音を立てて、しっぺが行使されると、その伸びて来ていた手も、たまらずに少女を離し虚空へと消えていった。
 そして、親友は少女に向かい、本当に手から守ってくれていたんだ、ありがとう、とお礼を言って、少女も助けてくれてありがとう、とお礼を言い返した。

 それからというもの、その手が少女の親友に伸びることはなくなった。
 ただ、それだけの話だ。



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