それなりに怖い話。

只野誠

文字の大きさ
416 / 769
でんしゃにゆられる

でんしゃにゆられる

しおりを挟む
 男は疲れていた。
 とてもとても、疲れていた。
 電車の座席に腰掛けながら、周りを見る。
 周りの者達も疲れているのか生気のない表情で呆然と電車の座席に座っている。

 男は疲れているせいか、なんで電車に乗っていたか思い出せない。
 けど、窓の外は真っ暗なので帰る途中なのだろう。

 どこへ?
 きっと我が家だ。
 自分の家に帰りたい。
 暖かい我が家へ帰りたい。
 そう望む。
 そして、ゆっくりと死んだように眠り休みたい。
 男は心から、そう願った。

 だが、男は自分が乗っている電車の行先すら理解できない。
 この電車がどこに向かっているのか、それも男には理解できない。

 呆然と周りを見る。
 まるで乗客は死人のように生気がなく自ら動きもしない。
 ただ揺れる電車に揺られている。

 なにかがおかしい。
 男がそう思っていると、目の前に誰かが歩いていく。
 それを男が見上げると、相手も男に気づく。

 それは車掌だった。
 今時珍しい、男はそう思ったが、声が出ない。
 けれども、車掌の方が話しかけてくる。

 おや、あなたはまだですね、次の駅で降りてください。まだ間に合いますよ、と青白い顔で車掌は男に声をかけられた。

 男は返事は出来なかったが、頷いて見せる。
 ほどなくして電車が駅に止る。

 男はあまり言うことを聞かない体を何とか動かし、電車をなんとか降りる。
 その電車はそれを待っていたかのように、男が降りるとドアを閉め、再び出発していった。

 男はここはどの駅だ、と思い辺りを見回す。
 駅には人っ子一人いない。
 どこの駅かもわからない。

 なんで電車を降りてしまったのか、男はそんなことを考え始める。
 いつしか男は駅に設置してあるベンチに座り寝てしまい意識を失う。

 次に男が目を覚ますと、そこは病院だった。
 男は仕事をし続け過労死寸前のところだったそうだ。
 会社で倒れ病院に運ばれたのだという。

 男の周りには親や妻が集まっていた。
 男は何となく笑って、家に帰りたい、と、そう呟いた。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。 意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。 隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

きさらぎ駅

水野華奈
ホラー
親友から電話があった。 きさらぎ駅という場所にいるらしい… 日常の中の小さな恐怖が今始まる。 触れてしまったが最後。 二度と戻れない。

『ショート怪談』訪れるもの

見崎志念
ホラー
一話完結のお話をぽつぽつとしたためております。ドロッとしたよくわからないものに対しての恐怖をお楽しみください

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】 ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。 八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。 === エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中 【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】 【怖さレベル】 ★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度 ★★☆ ふつうに怖い話 ★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話 ※8/2 Kindleにて電子書籍化しました 『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』

処理中です...