それなりに怖い話。

只野誠

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かいじゅう

かいじゅう

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 少年の周りには怪獣の影が時折見えた。
 それは影だけなのだが、少年以外には、その影も見えないのだが、確かに少年にとっては確かに存在していた。

 そして、怪獣は少年に囁くのだ。
 オマエヲタベタイ、と、オマエハウマソウダ、と。

 少年は親や学校の先生に相談するのだが、まるで相手にしてくれない。
 それどころか、怪獣の影はそんな少年のことをあざ笑うのだ。

 少年は怪獣の影から逃げる。

 そんなものはいない。
 そう自分に信じ込ませる。
 大人たちの言う通りに。

 だが、怪獣の影はどんどん少年に近寄って来る。
 今はもう少年のすぐ後ろで少年に囁く。

 モウスグダ、と。

 少年にはその言葉を無視することができなかった。
 もう息が、生臭く湿った生臭い怪獣の息が、少年の耳元にかかっているのだから。
 少年はその怪獣がいると、そう思ってしまう。
 信じてしまう。

 少年は恐怖に駆られ、その場から大きな声をあげて逃げ出す。
 何度も転びそうになる。
 もつれる足で懸命に少年は怪獣の影から逃げていた。

 だが、少年が逃げ込んだ場所は袋小路の道だった。

 少年が慌てて引き返そうとした時、道に大きな怪獣の影が映る。
 ツカマエタ、影がそう囁く。
 少年は、大きな声をあげて怪獣の影の方へと走りだす。
 恐怖からわけが分からなくなった少年の行動だった。

 少年は怪獣の影を踏む。

 そして、影の元の方を見る。
 それを見た少年は呆気に取られる。

 そこにあったのは壊れかけの怪獣のおもちゃだ。
 それがポツンと道に置かれ、その影が大きな怪獣の影となっていただけだ。

 少年は、息を吐きだす。
 正体がわかってしまえば、なんてことはない。

 少年はよくも今まで怖がらせてくれたと、その怪獣のおもちゃを蹴ろうとした時だ。

 聞こえたのだ。
 たしかに。
 足元から。

 イタダキマス、と。

 その後、その少年の姿を見た者は誰もいない。
 だから、この話はただの嘘だ。
 誰もそのことを知る者などいない。



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