414 / 708
ぬま
ぬま
しおりを挟む
男が住んでいる場所の近くに、近くと言っても歩くとそれなりに距離はあり車で行くことにはなるのだが、山間に大きな沼がある。
地元の釣り人には隠れたフナの釣り場所として知られている。
男は休みの日に朝早くその沼に向かう。
それこそ夜が明ける前、そんな時間に急ぐように向かう。
別に釣りが趣味なわけではない。
男の趣味は写真だ。
朝日があの名も知らない沼の水面に反射するその光景は神々しいものがある。
それを写真に収める為だ。
途中までは、車で進める所までは車で、後はどうしても歩きになる。
遊歩道的な道はあるが、車が通れるような道ではない。
男はカメラと朝食が入った鞄だけを持って遊歩道を小走りに歩く。
もう夜が開け始めている。
あまり時間はない。
無事に日が昇る前に男は沼のほとりにたどり着く。
そして、少し靄が出ている中、カメラを構える。
男の予想では、沼を挟んで山の合間から日の出が始まるはずだと。
少なくとも方向的にはそう言う場所を選んだ。
カメラを構えながら、男は今か今かと構図を想像してその瞬間を待つ。
沼の水面と山の合間からの日の出を撮るために男は地面に寝っ転がり、その時を待つ。
だが、カメラの画面に、デジタルの画面に、おかしなものが映り込んでくる。
沼の水面から何かが浮き出してくるのだ。
男はカメラを覗き込むのをやめて、沼を見る。
そこにも実際にそれはある。
それは最初、沼の底から湧き水が勢いよく湧き出ているかのような、そんな物でしかなかった。
水柱が立つほどでもない、ただそれだけの物だった。
だがそれは次第に異質な物へとなっていく。
湧き出ているのは水ではなく泥だ。
それでもまだ超常的な物ではない。
ただその湧きだした泥が、沼の水面に立つように人型を作っていったのであれば、話は変わって来る。
沼の水面に湧き出た泥は、どんどんと人の形へとなっていく。
そして、それは男を見つけると、手を伸ばすのだ。
男に向かい手を伸ばすのだ。
男が恐怖で固まっていると日が昇る。
その日に照らされて、その泥の人型は崩れ、沼の底へと沈んでいく。
複数の波紋で複雑な波となった沼の水面に朝日が当たり黄金の輝きを見せ始める。
だが、男は沼から逃げ帰る。
流石に写真など撮る気にもなれない。
そして、その話を親にする。
そうすると男の父親は、あの沼は昔っから人食い沼と言われている、と、そう言った。
なにか言い伝え的な話は父親も聞いていなかったので、男に話してはなかったがとも続ける。
男の父親は笑いながら、もう沼にはいかんほうがいいぞ、とそう言った。
男も、頼まれてもいかない、とそう答えた。
これはそれだけの話だ。
地元の釣り人には隠れたフナの釣り場所として知られている。
男は休みの日に朝早くその沼に向かう。
それこそ夜が明ける前、そんな時間に急ぐように向かう。
別に釣りが趣味なわけではない。
男の趣味は写真だ。
朝日があの名も知らない沼の水面に反射するその光景は神々しいものがある。
それを写真に収める為だ。
途中までは、車で進める所までは車で、後はどうしても歩きになる。
遊歩道的な道はあるが、車が通れるような道ではない。
男はカメラと朝食が入った鞄だけを持って遊歩道を小走りに歩く。
もう夜が開け始めている。
あまり時間はない。
無事に日が昇る前に男は沼のほとりにたどり着く。
そして、少し靄が出ている中、カメラを構える。
男の予想では、沼を挟んで山の合間から日の出が始まるはずだと。
少なくとも方向的にはそう言う場所を選んだ。
カメラを構えながら、男は今か今かと構図を想像してその瞬間を待つ。
沼の水面と山の合間からの日の出を撮るために男は地面に寝っ転がり、その時を待つ。
だが、カメラの画面に、デジタルの画面に、おかしなものが映り込んでくる。
沼の水面から何かが浮き出してくるのだ。
男はカメラを覗き込むのをやめて、沼を見る。
そこにも実際にそれはある。
それは最初、沼の底から湧き水が勢いよく湧き出ているかのような、そんな物でしかなかった。
水柱が立つほどでもない、ただそれだけの物だった。
だがそれは次第に異質な物へとなっていく。
湧き出ているのは水ではなく泥だ。
それでもまだ超常的な物ではない。
ただその湧きだした泥が、沼の水面に立つように人型を作っていったのであれば、話は変わって来る。
沼の水面に湧き出た泥は、どんどんと人の形へとなっていく。
そして、それは男を見つけると、手を伸ばすのだ。
男に向かい手を伸ばすのだ。
男が恐怖で固まっていると日が昇る。
その日に照らされて、その泥の人型は崩れ、沼の底へと沈んでいく。
複数の波紋で複雑な波となった沼の水面に朝日が当たり黄金の輝きを見せ始める。
だが、男は沼から逃げ帰る。
流石に写真など撮る気にもなれない。
そして、その話を親にする。
そうすると男の父親は、あの沼は昔っから人食い沼と言われている、と、そう言った。
なにか言い伝え的な話は父親も聞いていなかったので、男に話してはなかったがとも続ける。
男の父親は笑いながら、もう沼にはいかんほうがいいぞ、とそう言った。
男も、頼まれてもいかない、とそう答えた。
これはそれだけの話だ。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる