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ぬま
ぬま
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男が住んでいる場所の近くに、近くと言っても歩くとそれなりに距離はあり車で行くことにはなるのだが、山間に大きな沼がある。
地元の釣り人には隠れたフナの釣り場所として知られている。
男は休みの日に朝早くその沼に向かう。
それこそ夜が明ける前、そんな時間に急ぐように向かう。
別に釣りが趣味なわけではない。
男の趣味は写真だ。
朝日があの名も知らない沼の水面に反射するその光景は神々しいものがある。
それを写真に収める為だ。
途中までは、車で進める所までは車で、後はどうしても歩きになる。
遊歩道的な道はあるが、車が通れるような道ではない。
男はカメラと朝食が入った鞄だけを持って遊歩道を小走りに歩く。
もう夜が開け始めている。
あまり時間はない。
無事に日が昇る前に男は沼のほとりにたどり着く。
そして、少し靄が出ている中、カメラを構える。
男の予想では、沼を挟んで山の合間から日の出が始まるはずだと。
少なくとも方向的にはそう言う場所を選んだ。
カメラを構えながら、男は今か今かと構図を想像してその瞬間を待つ。
沼の水面と山の合間からの日の出を撮るために男は地面に寝っ転がり、その時を待つ。
だが、カメラの画面に、デジタルの画面に、おかしなものが映り込んでくる。
沼の水面から何かが浮き出してくるのだ。
男はカメラを覗き込むのをやめて、沼を見る。
そこにも実際にそれはある。
それは最初、沼の底から湧き水が勢いよく湧き出ているかのような、そんな物でしかなかった。
水柱が立つほどでもない、ただそれだけの物だった。
だがそれは次第に異質な物へとなっていく。
湧き出ているのは水ではなく泥だ。
それでもまだ超常的な物ではない。
ただその湧きだした泥が、沼の水面に立つように人型を作っていったのであれば、話は変わって来る。
沼の水面に湧き出た泥は、どんどんと人の形へとなっていく。
そして、それは男を見つけると、手を伸ばすのだ。
男に向かい手を伸ばすのだ。
男が恐怖で固まっていると日が昇る。
その日に照らされて、その泥の人型は崩れ、沼の底へと沈んでいく。
複数の波紋で複雑な波となった沼の水面に朝日が当たり黄金の輝きを見せ始める。
だが、男は沼から逃げ帰る。
流石に写真など撮る気にもなれない。
そして、その話を親にする。
そうすると男の父親は、あの沼は昔っから人食い沼と言われている、と、そう言った。
なにか言い伝え的な話は父親も聞いていなかったので、男に話してはなかったがとも続ける。
男の父親は笑いながら、もう沼にはいかんほうがいいぞ、とそう言った。
男も、頼まれてもいかない、とそう答えた。
これはそれだけの話だ。
地元の釣り人には隠れたフナの釣り場所として知られている。
男は休みの日に朝早くその沼に向かう。
それこそ夜が明ける前、そんな時間に急ぐように向かう。
別に釣りが趣味なわけではない。
男の趣味は写真だ。
朝日があの名も知らない沼の水面に反射するその光景は神々しいものがある。
それを写真に収める為だ。
途中までは、車で進める所までは車で、後はどうしても歩きになる。
遊歩道的な道はあるが、車が通れるような道ではない。
男はカメラと朝食が入った鞄だけを持って遊歩道を小走りに歩く。
もう夜が開け始めている。
あまり時間はない。
無事に日が昇る前に男は沼のほとりにたどり着く。
そして、少し靄が出ている中、カメラを構える。
男の予想では、沼を挟んで山の合間から日の出が始まるはずだと。
少なくとも方向的にはそう言う場所を選んだ。
カメラを構えながら、男は今か今かと構図を想像してその瞬間を待つ。
沼の水面と山の合間からの日の出を撮るために男は地面に寝っ転がり、その時を待つ。
だが、カメラの画面に、デジタルの画面に、おかしなものが映り込んでくる。
沼の水面から何かが浮き出してくるのだ。
男はカメラを覗き込むのをやめて、沼を見る。
そこにも実際にそれはある。
それは最初、沼の底から湧き水が勢いよく湧き出ているかのような、そんな物でしかなかった。
水柱が立つほどでもない、ただそれだけの物だった。
だがそれは次第に異質な物へとなっていく。
湧き出ているのは水ではなく泥だ。
それでもまだ超常的な物ではない。
ただその湧きだした泥が、沼の水面に立つように人型を作っていったのであれば、話は変わって来る。
沼の水面に湧き出た泥は、どんどんと人の形へとなっていく。
そして、それは男を見つけると、手を伸ばすのだ。
男に向かい手を伸ばすのだ。
男が恐怖で固まっていると日が昇る。
その日に照らされて、その泥の人型は崩れ、沼の底へと沈んでいく。
複数の波紋で複雑な波となった沼の水面に朝日が当たり黄金の輝きを見せ始める。
だが、男は沼から逃げ帰る。
流石に写真など撮る気にもなれない。
そして、その話を親にする。
そうすると男の父親は、あの沼は昔っから人食い沼と言われている、と、そう言った。
なにか言い伝え的な話は父親も聞いていなかったので、男に話してはなかったがとも続ける。
男の父親は笑いながら、もう沼にはいかんほうがいいぞ、とそう言った。
男も、頼まれてもいかない、とそう答えた。
これはそれだけの話だ。
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