それなりに怖い話。

只野誠

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がっこうのいけ

がっこうのいけ

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 少年が通っている小学校には大きな池がある。
 噂では生徒が溺れ死んだ、そんな曰く付きの池だ。

 もちろん、立ち入り禁止にはなってはいるが、小学生の少年らがそんなことに従うはずもない。
 池は子供たちの恰好の遊び場だ。

 そもそも、そんな深い池でもない。
 どの場所でも足はつくし、何ならそこは泥で泣くコンクリートで固められている人工の池だ。
 そこで少年らは夏の間はザリガニを取ったり、それ以外の時期でも釣り針のない釣り糸を垂らし釣りの真似事などをして遊んでいた。
 
 そうして、その日も少年らが遊んでいると、日が暮れ始める。
 そろそろ帰ろうと、誰かが言い出す。
 少年らも遊ぶのを辞め帰り支度を始める。

 だが、まだ少年の一人が釣りの真似事をしたまま、動かないでいる。
 この池にはザリガニは居ても魚はいない。
 何も釣れはしないのだ。
 ただの真似事なのだ。

 けれど、そのまねごとをしている少年は青い顔をしたまま、池に釣り糸を垂らして座り込んでいる。

 別の少年がその釣りの真似をしている少年に声をかける。
 もう日が暮れるから帰ろうと。
 すると、釣り糸を垂らしていた少年は震えながら、池の中を指さす。

 話しかけた少年が指を刺された方を見ると、池の中に人がいるのだ。
 池に入るにはまだ池の水は冷たい。
 そんな池の中に全身を沈ましえて、池の中で笑っている人がいるのだ。

 それを見た少年は、叫び声をあげて逃げ出そうとする。
 それを座っていた少年が掴んで止める。
 逃げ出そうとした少年は、掴んできた少年を見る。
 掴んできた少年は言うのだ、腰が抜けた、助けてくれ、と。

 逃げ出そうとした少年の叫び声で、他の友人らも集まって来る。
 その時にはもう池の中には人はいなくなっていた。

 また別の少年が腰の抜けた少年を背負い、用務員室に逃げ込む。
 そして、口々に言うのだ。

 池の中に死んだ生徒が出た、と。

 用務員のおじさんは、また池で遊んでいたのか、と、ため息をつく。
 そして、あの池で死んだ生徒など今までいない、そうきっぱりと否定する。

 そこで叫び声をあげた少年は、釣りの真似事をしていた少年に、お前が見つけたんだろ? と、そう声をかけようとするのだが……

 そんな少年はどこにもいなかった。
 腰が抜けて歩けなくなって背負われていた少年はどこにもいなくなっていたのだ。

 少年たちはポカンとした顔をする。

 そうすると、あの池には死んだ生徒はいないが人を化かす狸が住んでいるので、近寄らんようにな、と笑いながら言った。

 その後も池で遊ぶ子供は絶えることはない。
 ただそれだけの話だ。





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