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よるのまち
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少年は夜の街にいた。
それ程都会でもないその街は夜の十時を過ぎれば、飲み屋さえしまってしまうような、そんな街だ。
ただ、畑や田んぼ、山や森があるわけでもない。
ただの住宅地。そんな普通の街だ。
少年も遊びたくて家に帰りたかったのではない。
家に帰るのが嫌だった、ただそれだけの理由だ。
家にいたら暴力を振るわれる、ということはないが、口うるさい母親に辟易していたのだ。
少年が受験生ということもあるのだが、学校から帰れば、勉強をさせられ、塾に行かされ、塾から帰って来ても勉強させられる。
まさに息をつく暇がなかったのだ。
とても息苦しかったのだ。
だから少年は塾が終わった後、自転車を走らせたのだ。
暗くなった街を自転車で疾走したのだ。
人通りどころか、車すら走っていない。
少し大きめの道路、その真ん中を自転車を全速力で漕ぐ。
それだけで気持ちが楽になった。
普段通らないような道を通って家に帰るだけ。
そのつもりだった。
だが、少年は気が付くと見知らぬ場所を自転車で走っていた。
大きな道路を走っていたつもりが、いつの間にかに住宅地の細い道に入り込んでいた。
見たことのない大きなマンションや入り組んだ家々。
少年の頭の中で自分はどの辺だろうかと考える。
まだそれほど自転車を走らせたわけではない。
それでも、少年は不安を感じ、自転車を止め、後ろを振り返る。
やはり知らない道だし、暗くて先がよくわからない。
少年はとりあえず大きな道路に出よう、そうすれば場所もわかるはずだと。
来た道を引き返す。
だが、いくら自転車を漕いでも大きな道路には出ない。
まるで住宅地が迷路のようになっていて、グルグルと同じ場所を回っているようにすら感じる。
少年も焦り出す。
完全に道に迷ってしまった、しかも、こんな夜中に、と。
とりあえず少年は一番大きそうなマンションに向かう。
マンションにはたどり着けたが、やはり少年の見たことのないマンションだ。
そのマンション名も聞いたことがない。
だが、マンションの前に掲示板があり、この辺りの地図があった。
少年はその地図を見て覚える。
最寄りの駅まで、少年の知っている駅までの道も記されている。
少年はその地図通りに道を進む。
あれほどさまよっていたのに、今度はあっさりと知っている道に出て、そのまま駅まで行きつくことができる。
少年は、そこから涙目になりながら、今度は知っている道をたどって家まで帰る。
家に帰ると両親が心配して、警察に電話するかどうかで迷っていたところだ。
少年は素直に道に迷ったことを両親に伝える。
だが、この辺りに少年の言うような大きなマンションはない。
ないのだ。
ただそれだけの話だ。
ついでに、少年の塾の帰る際、自転車で街をさまよう癖は治らなかった。
少年の息苦しい生活はもうしばらく続く。
それ程都会でもないその街は夜の十時を過ぎれば、飲み屋さえしまってしまうような、そんな街だ。
ただ、畑や田んぼ、山や森があるわけでもない。
ただの住宅地。そんな普通の街だ。
少年も遊びたくて家に帰りたかったのではない。
家に帰るのが嫌だった、ただそれだけの理由だ。
家にいたら暴力を振るわれる、ということはないが、口うるさい母親に辟易していたのだ。
少年が受験生ということもあるのだが、学校から帰れば、勉強をさせられ、塾に行かされ、塾から帰って来ても勉強させられる。
まさに息をつく暇がなかったのだ。
とても息苦しかったのだ。
だから少年は塾が終わった後、自転車を走らせたのだ。
暗くなった街を自転車で疾走したのだ。
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少し大きめの道路、その真ん中を自転車を全速力で漕ぐ。
それだけで気持ちが楽になった。
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だが、少年は気が付くと見知らぬ場所を自転車で走っていた。
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まだそれほど自転車を走らせたわけではない。
それでも、少年は不安を感じ、自転車を止め、後ろを振り返る。
やはり知らない道だし、暗くて先がよくわからない。
少年はとりあえず大きな道路に出よう、そうすれば場所もわかるはずだと。
来た道を引き返す。
だが、いくら自転車を漕いでも大きな道路には出ない。
まるで住宅地が迷路のようになっていて、グルグルと同じ場所を回っているようにすら感じる。
少年も焦り出す。
完全に道に迷ってしまった、しかも、こんな夜中に、と。
とりあえず少年は一番大きそうなマンションに向かう。
マンションにはたどり着けたが、やはり少年の見たことのないマンションだ。
そのマンション名も聞いたことがない。
だが、マンションの前に掲示板があり、この辺りの地図があった。
少年はその地図を見て覚える。
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少年はその地図通りに道を進む。
あれほどさまよっていたのに、今度はあっさりと知っている道に出て、そのまま駅まで行きつくことができる。
少年は、そこから涙目になりながら、今度は知っている道をたどって家まで帰る。
家に帰ると両親が心配して、警察に電話するかどうかで迷っていたところだ。
少年は素直に道に迷ったことを両親に伝える。
だが、この辺りに少年の言うような大きなマンションはない。
ないのだ。
ただそれだけの話だ。
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