それなりに怖い話。

只野誠

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すきま

すきま

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 箪笥と箪笥の合間に少しだけ隙間がある。
 両方の箪笥は古く大きな箪笥で、祖母の時代から使っているような代物だ。

 大きな箪笥だけに角には枠のような飾りがついているので、どうしても箪笥と箪笥の間に、隙間ができてしまうのだ。
 その家に住む少女はたまにその隙間を覗く。

 なにか、別の世界につながっているのではないか。
 そんな様に少女は考えていたからだ。
 暗く細く狭い先に何かがあるように思えているんだ。

 夕方、家に誰もいない時、少女が箪笥の前で遊んでいる時だ。
 箪笥と箪笥の隙間から、何かが聞こえて来たのだ。

 少女は箪笥と箪笥の間を覗いてみる。
 そうすると、そこには世界が広がっていた。

 言うならば商店街。
 そんな通りが隙間から見えたのだ。
 少女は感動する。
 やっぱり自分が思っていた通り、この隙間には別の世界が広がっていたのだ。

 商店街は少女から見ても古臭い、昔の商店街に思えた。
 少女は隙間に顔をくっつけて隙間を覗く。

 商店街は見えるけど、人の通りはない。
 商店街も夕焼けの景色だ。
 少女はその商店街を見て心を躍らせる。

 ふと匂いが鼻につく。
 その匂いが線香の香りだと少女は気づく。
 隙間を覗くのをやめ、同じ部屋にある仏壇を見る。

 そこには先ほどまでついてなかったはずの線香が火をつけられて立っていた。
 少女は驚いて、仏壇を調べるが他におかしなところはない。
 いつ線香が仏壇にあげられたのか、少女にはわからない。
 親が帰って来たのかとも少女は考えたが、帰って来た様子もない。

 少女はおかしいと思いながらも、今は箪笥の隙間が気になる。
 再び少女が箪笥の隙間を覗くと、そこはただの何も見えない、いつも通りの隙間になっていた。

 少女は残念がる。
 だが、良かったのかもしれない。
 あのまま覗いていたら何が起きたのか、それは誰にも分からないのだから。




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