それなりに怖い話。

只野誠

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かえる

かえる

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 少女の住む家の庭には、稀に、だが、大きなカエルが現れる事がある。
 近くに池や川はないのだが、度々カエルは庭に現れる。

 少女は気味悪がっていたが、少女の両親は家の守り神だから、と、笑っていた。
 大きなイボガエルにしか思えない少女は、そのカエルが現れても嫌そうな顔を浮かべるだけだ。

 そのカエルが現れる時は夕方で、それも夕日が真っ赤な日に庭にどこからともなく現れる。
 何かされるわけでも、ましてや守り神的なことをするわけでもない。
 ただ、その大きなカエルは現れるだけだ。
 鳴くこともなく、近づくとどこかに跳ねて帰っていく。

 だが、その日は違った。

 真っ赤な夕日が印象的なその日、少女が庭にいると、やはりどこからともなく大きなカエルがやって来る。
 少女は、その大きなカエルを見て家の中に逃げ帰ろうとする時、声がかけられる。

 不幸が来る、避けたくばタンブリを食べるのだ、カエルは少女に向かい、老人のような声でそう言ったのだ。
 少女が振り返ると、もうカエルはいなくなっていた。

 少女は急いで家の中に入り、母親にカエルが言っていたことを伝える。
 そうすると、母親は顔を真っ青にする。

 タンブリって何? と、母親は少女に聞くがわかるはずもない。
 母親は急いで、父親に電話をする。

 そうすると父親は、イワナのことだ、どうにか買って帰る、それまで夕食は食べないように、と電話越しに告げる。

 少女からすれば訳の分からない話だ。
 夜遅く、少女が普段ならもう寝ているような時間に父親が帰って来る。
 氷の入ったビニールに魚を入れて帰って来た。

 父親は、なんとか一尾だけ買ってこれた、これを皆で食べよう、そう言った。

 少女はお腹が減ってはいたが、それ以上に、もう眠気のほうが勝っていた。
 母親が急いでイワナを焼く。

 そして、無理やりにでも少女の口に入れる。
 少女は半分寝ながらも、それを飲み込む。
 両親は、安どのため息を漏らし、自分たちもイワナを口にする。

 そして、骨だけ残ったイワナを皿にのせて、ついでにお猪口に酒を注いで、庭先に置いておく。
 翌朝にはイワナの骨も、酒もなくなっていた。
 
 ただそれだけの話なのは、イワナを食べれたから、かもしれない。




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