それなりに怖い話。

只野誠

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もぐら

もぐら

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 モグラが出るのでどうにかして欲しい。
 男はそう年老いた祖父から相談された。

 都会で育った男はモグラの対処法など知らない。
 ただ年老いた祖父に相談されてほって置けるほど、男も薄情ではない。
 休みの日に祖父の家へと出向く。

 そこで、家庭菜園の畑にモグラが出るのでどうにかして欲しいと相談される。
 祖父も今までモグラなんて見たことなかった、とそう言った。

 男は既に祖父の家に行く際、ホームセンターに行き、モグラの対策用品を買ってきていた。
 とりあえずこれらを使って様子を見よう、と男は祖父に提案する。
 祖父も孫の提案に嬉しそうに乗る。
 
 男は買って来たソーラー式のモグラ撃退機を見せる。
 太陽光で充電してそれでモグラが嫌う振動を出してモグラを遠ざけるというものだ。
 電池式より値は張ったが、年老いた祖父が使うならこちらの方が手間がないだろうと、そう考えての事だ。

 男は小さな畑に行くと、確かに穴が開いてある。
 俗にいうところの、土を掻き出したモグラ塚というのもある。
 確かにこれはモグラだ。
 男が調べたにわかの知識の限りではそう思えた。

 その巣あたりに男が買ってきた杭のようなモグラ撃退機を打ち込んでおく。
 これで定期的に振動を起こして、モグラを追っ払ってくれるはずだ。

 それに男が調べた限り勝手にモグラを駆除することは鳥獣保護管理法に違反するため、駆除はできない。
 つまり追い払うくらいしかできなかったのだ。

 ただ、男もモグラという存在を知ってはいるが見たことはない。
 見られるものなら、その目で一目見てみたい、そう思っていた。
 しばらくモグラの巣の前で様子を見ていたがモグラが姿を現すこともなかった。
 男は祖父の家に入り、食事と酒を振舞われる。
 祖父としても、こちらの方がメインだったのかもしれない。
 男は祖父の家でもてなされた後、夕方にもう一度家庭菜園の畑を訪れる。

 赤い夕陽に照らされたモグラ塚が見える。
 そのモグラ塚が動いた。
 男は、おっ、モグラが出て来るのか? と期待を膨らませる。
 だが、モグラ塚から出て来たものはモグラではなかった。

 では何か?

 それは顔だった。
 人間の手ほど、握りこぶしほどの小さな人間の顔だ。
 男は人形でも埋まっていたのか? と一瞬思ったがそれがすぐに思い違いだと知る。
 それが話しかけて来たからだ。

 それは男に向かい、その奇妙な杭を抜け、五月蠅くてかなわん、と、そう言ってきたのだ。
 男はあまりのことで、言われた通りモグラ撃退機を抜く。
 そうすると小さな顔は、満足したように穴の中に消えていった。

 男はそのことを祖父に伝える。
 そうすると祖父は笑う、モグラじゃなくて神様だったか、と。
 後日、祖父は畑のそばに小さな神棚を設置して、そこに酒をお供えするようになった。

 そうすると、なぜか家庭菜園の畑は良く実るようになったそうだ。

 男も祖父の家に行くときは何かお供え物を買っていくようになった。
 ただ、それだけの話だ。





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