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解決編:火竜殺しの帰還
みんなも考えてみよう
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さらに翌日。
結果から言うと、俺は生きている。
狩人のゴーワンは、洞穴で冷たくなった傷一つない赤黒い巨体を前に、複雑そうな顔を崩さずにいた。
そして恐る恐る近付き、何度かサッカーボールほどの大きさの目玉を殴りつけてから、宣言するのだった。
「死んでる」
その言葉を聞き、俺も鱗のない腹を殴ってみるが反応はない。
大きな牙がたくさん生えた口元に立つも、確かにすでに息絶えていた。
つまり、火竜は間違いなく死んでいるということだ。
「ゴーワンさん、どうしますこれ」
「島の全員でどうにかする」
そう言うと、ゴーワンは火竜の二つの目玉を石のナイフでくりぬき、片方を俺に持たせた。
重いし、臭いし、べとべとするしで最悪だが、これがあれば火竜が死んだとわかるだろう。
仮に息を吹き返しても、前が見えないならまだ御しようがあるというものだ
そうして浜辺に戻ると、俺たちを見たユージンは浜辺で腰を抜かしてしまった。
「火竜の目ん玉!?死んだの!?」
「そうだ」
「ひゃー!こりゃ祭りだ!」
「急がないと」俺は小躍りするユージンを窘める。
「折悪く王国が来た、なんて笑えない」
「そうだな、島長に知らせないと」
ユージンは笑いながら船の支度を始める。
船の上で鼻歌を歌っているゴーワンに、ユージンは尋ねた。
「止めはどっちが刺したんだ?」
ゴーワンは「どっち、とかではない」と顎髭を撫でる。「ただ、運がよかったんだ」
まず、殺害方法自体は俺が考えた。
タイミングに関していえば間違いなくツイていた。
そして、ゴーワンがいなければ火竜を殺すことはまずできなかったし、ゴーワンの幾度の失敗があったからこそ思いついた殺害方法だともいえる。
だが、過酷な労働環境でビシバシと嫌味な上司にしごかれている日本人諸君なら、一度はこのやり方を考えたことがあるはずだ。
俺が「島長にも話すから、その時に」と言うと、ユージンは興味が失せたようで、いそいそと島へ急ぐのだった。
『火竜が死んだ』
何度も島民を震え上がらせた二つの目玉が知らせたその事実は瞬く間に島中に広がり、島長の命令によっていくつもの船が火の島へと向かった。
一つは、竜を解体するため。
もう一つは、黒い岩の採掘拠点の足掛かりを探すためだ。
「問題は、どうやって殺したのかじゃ」
島長であるカメサメとユージン、そして俺だけが高い櫓の上に立っていた。
いつもの屋敷ではどこで誰が効いているかわからないし、ひそひそ声で話したところで壁が薄いから意味がない。
つまりこれは彼らなりの密談、と言うことなのだろう。
「それって重要です?」
「重要じゃよ。もし仮に『見た相手を殺す魔法』なんてものがお主にあったならどうじゃ?力を振りかざしこの島を奪うともわからんじゃろう」
そんなチートで活躍したいとも思わないが、言いたいことはわかる。
俺にそんな力があれば、そういう使い方をするかもしれない。
そう思わせるか?
いや、ゴーワンと言う共犯者がいるから、隠したところでいずれはバレる。
さて、問題です。
俺はどうやって火竜を殺したのでしょうか?
結果から言うと、俺は生きている。
狩人のゴーワンは、洞穴で冷たくなった傷一つない赤黒い巨体を前に、複雑そうな顔を崩さずにいた。
そして恐る恐る近付き、何度かサッカーボールほどの大きさの目玉を殴りつけてから、宣言するのだった。
「死んでる」
その言葉を聞き、俺も鱗のない腹を殴ってみるが反応はない。
大きな牙がたくさん生えた口元に立つも、確かにすでに息絶えていた。
つまり、火竜は間違いなく死んでいるということだ。
「ゴーワンさん、どうしますこれ」
「島の全員でどうにかする」
そう言うと、ゴーワンは火竜の二つの目玉を石のナイフでくりぬき、片方を俺に持たせた。
重いし、臭いし、べとべとするしで最悪だが、これがあれば火竜が死んだとわかるだろう。
仮に息を吹き返しても、前が見えないならまだ御しようがあるというものだ
そうして浜辺に戻ると、俺たちを見たユージンは浜辺で腰を抜かしてしまった。
「火竜の目ん玉!?死んだの!?」
「そうだ」
「ひゃー!こりゃ祭りだ!」
「急がないと」俺は小躍りするユージンを窘める。
「折悪く王国が来た、なんて笑えない」
「そうだな、島長に知らせないと」
ユージンは笑いながら船の支度を始める。
船の上で鼻歌を歌っているゴーワンに、ユージンは尋ねた。
「止めはどっちが刺したんだ?」
ゴーワンは「どっち、とかではない」と顎髭を撫でる。「ただ、運がよかったんだ」
まず、殺害方法自体は俺が考えた。
タイミングに関していえば間違いなくツイていた。
そして、ゴーワンがいなければ火竜を殺すことはまずできなかったし、ゴーワンの幾度の失敗があったからこそ思いついた殺害方法だともいえる。
だが、過酷な労働環境でビシバシと嫌味な上司にしごかれている日本人諸君なら、一度はこのやり方を考えたことがあるはずだ。
俺が「島長にも話すから、その時に」と言うと、ユージンは興味が失せたようで、いそいそと島へ急ぐのだった。
『火竜が死んだ』
何度も島民を震え上がらせた二つの目玉が知らせたその事実は瞬く間に島中に広がり、島長の命令によっていくつもの船が火の島へと向かった。
一つは、竜を解体するため。
もう一つは、黒い岩の採掘拠点の足掛かりを探すためだ。
「問題は、どうやって殺したのかじゃ」
島長であるカメサメとユージン、そして俺だけが高い櫓の上に立っていた。
いつもの屋敷ではどこで誰が効いているかわからないし、ひそひそ声で話したところで壁が薄いから意味がない。
つまりこれは彼らなりの密談、と言うことなのだろう。
「それって重要です?」
「重要じゃよ。もし仮に『見た相手を殺す魔法』なんてものがお主にあったならどうじゃ?力を振りかざしこの島を奪うともわからんじゃろう」
そんなチートで活躍したいとも思わないが、言いたいことはわかる。
俺にそんな力があれば、そういう使い方をするかもしれない。
そう思わせるか?
いや、ゴーワンと言う共犯者がいるから、隠したところでいずれはバレる。
さて、問題です。
俺はどうやって火竜を殺したのでしょうか?
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