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第2話 邪王炎殺黒川さん
戦う男、馬大 可士
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「何なのお前、ノンデリなの?女の子と医療品の組み合わせなんて、一番首突っ込んじゃダメだから」
「そうだぞ貴公。語るに落ちる戦いの傷とは思わなんだか」
「ホントそうですよね!」と水樹は隣に座る体はスーツ、頭は騎士の男に同調して、黒ずんだグレートヘルムの横っ腹をバンバン叩いた。
何よりその平手で叩かれた音が鉄製のそれすぎる。
反動で顔を守るバイザーがガションと下りるが、二人にとってはアルアルらしく、騎士は野太い声で「ハハハ!」と気前よく笑っていた。
「して、貴公」
「この騎士の方が本題に入る前に、ちゃんと説明してくれよ水樹」
「クライアントだが?」
(じゃあ頭を叩くのは良くなくないか...?)
騎士は咳払いをすると自らを株式会社DaNAのマーケティング担当、馬大可士と名乗った。
会社の紹介記事の掲載を、是非我が社に依頼したいといのだと言う。
他所の社名にケチをつける気はないが、バ○トマンとベイスターズのファンに怒られないんだろうか。
「では改めて、馬大さん」
「騎士だ」
急な訂正に僕が面食らっていると、水樹はすかさずにフォローに入った。
「名前の漢字を組み合わせると騎士になるんだよ。つまりダークナイトの中のナイトってわけ」
おお、活字でなかったら分からなかった。
とは言え英語でンナァイと読ませますかね普通。
「いつもはこうではないのだが、この後に決戦が控えていてな。気持ちを上げる必要があるのだ」
馬大さんはアイルランド料理を運んできた給仕に「大義である」と500円玉を渡すと、俺の方へと向き直った。
「怪我をしていないなら別の目的があったのだ」
「それがわかればいいんですが」
「ふ、己の竜を封じ込めていたのだよ」
んんん?何か胡散臭い話になってきたぞ?
しかし、水樹は「なるほど」と話を合わせた。
(...何故合わせられるんだ?)
「何も、右手に竜の力を押さえ込んでいたってことでなくても、包帯をはずすことが何かのルーティンになっていた可能性はある」
「そうとも。時に人間は様々な形で自らのスイッチを押すものだ」
馬大さんはバイザーを上げ、ポテトをむしゃりと食べた。
何も、彼女が中二病だと言いたいわけではなかったらしい。
「サングラスを外す、特定の音楽を聴く、あるいはカッコイイヘルメットを着ける。彼女にとって、隠して巻いていた包帯が何かのスイッチになっていたとしても可笑しくない」
「...それなら、巻き方を忘れないように、と言ってたのも頷けますね」
何てこった、筋が通っているぞ。
流石マーケ担当(?)、頭のキレが冴えている。
つまり今日、総務は凄く忙しいってことだ。
「今は見守り、いざとなればエナジードリンクの差し入れをするのだ!」
「はい!ありがとうございます!」
僕ら3人は謎が解けたことを祝して、冷たい水の入ったジョッキをガツンとぶつけ合う。
しばらくして、僕たちはギネスシチューでパンパンになったお腹をさすりながら店を出た。
僕もいっぱしの騎士になったような、不思議な高揚感が湧いていた。
水樹はこの後も馬大さんと同行するらしい。
それが、ちょっと羨ましかった。
ふと、疑問が湧く。
臨戦態勢を取るほどの一大事に、外部の人間がいてもいいのだろうか。
僕は去り行く二人の背を呼び止めた。
「馬大さんはこの後どうされるんです?」
「違う、騎士だ。ふ、地獄の悪鬼どもを根絶やしにしてやるのよ」
相変わらず訳がわからない。
水樹へ助けを求めて視線を流すが、血糖値スパイクのせいで上手く頭が回っていないのか、
「戦鎚を携えた羅刹と凍える鬼の率いる軍団と、暗黒騎士たちの大決戦だ。これはいい記事になる、くくくくく」
と妙なことをボソボソ嘯くだけだ。
きっと、大仕事なのだろう。
僕はそんな彼らの姿が見えなくなるまで見送ってから、自分の会社、いや我らが城塞へと戻ったのだった。
「そうだぞ貴公。語るに落ちる戦いの傷とは思わなんだか」
「ホントそうですよね!」と水樹は隣に座る体はスーツ、頭は騎士の男に同調して、黒ずんだグレートヘルムの横っ腹をバンバン叩いた。
何よりその平手で叩かれた音が鉄製のそれすぎる。
反動で顔を守るバイザーがガションと下りるが、二人にとってはアルアルらしく、騎士は野太い声で「ハハハ!」と気前よく笑っていた。
「して、貴公」
「この騎士の方が本題に入る前に、ちゃんと説明してくれよ水樹」
「クライアントだが?」
(じゃあ頭を叩くのは良くなくないか...?)
騎士は咳払いをすると自らを株式会社DaNAのマーケティング担当、馬大可士と名乗った。
会社の紹介記事の掲載を、是非我が社に依頼したいといのだと言う。
他所の社名にケチをつける気はないが、バ○トマンとベイスターズのファンに怒られないんだろうか。
「では改めて、馬大さん」
「騎士だ」
急な訂正に僕が面食らっていると、水樹はすかさずにフォローに入った。
「名前の漢字を組み合わせると騎士になるんだよ。つまりダークナイトの中のナイトってわけ」
おお、活字でなかったら分からなかった。
とは言え英語でンナァイと読ませますかね普通。
「いつもはこうではないのだが、この後に決戦が控えていてな。気持ちを上げる必要があるのだ」
馬大さんはアイルランド料理を運んできた給仕に「大義である」と500円玉を渡すと、俺の方へと向き直った。
「怪我をしていないなら別の目的があったのだ」
「それがわかればいいんですが」
「ふ、己の竜を封じ込めていたのだよ」
んんん?何か胡散臭い話になってきたぞ?
しかし、水樹は「なるほど」と話を合わせた。
(...何故合わせられるんだ?)
「何も、右手に竜の力を押さえ込んでいたってことでなくても、包帯をはずすことが何かのルーティンになっていた可能性はある」
「そうとも。時に人間は様々な形で自らのスイッチを押すものだ」
馬大さんはバイザーを上げ、ポテトをむしゃりと食べた。
何も、彼女が中二病だと言いたいわけではなかったらしい。
「サングラスを外す、特定の音楽を聴く、あるいはカッコイイヘルメットを着ける。彼女にとって、隠して巻いていた包帯が何かのスイッチになっていたとしても可笑しくない」
「...それなら、巻き方を忘れないように、と言ってたのも頷けますね」
何てこった、筋が通っているぞ。
流石マーケ担当(?)、頭のキレが冴えている。
つまり今日、総務は凄く忙しいってことだ。
「今は見守り、いざとなればエナジードリンクの差し入れをするのだ!」
「はい!ありがとうございます!」
僕ら3人は謎が解けたことを祝して、冷たい水の入ったジョッキをガツンとぶつけ合う。
しばらくして、僕たちはギネスシチューでパンパンになったお腹をさすりながら店を出た。
僕もいっぱしの騎士になったような、不思議な高揚感が湧いていた。
水樹はこの後も馬大さんと同行するらしい。
それが、ちょっと羨ましかった。
ふと、疑問が湧く。
臨戦態勢を取るほどの一大事に、外部の人間がいてもいいのだろうか。
僕は去り行く二人の背を呼び止めた。
「馬大さんはこの後どうされるんです?」
「違う、騎士だ。ふ、地獄の悪鬼どもを根絶やしにしてやるのよ」
相変わらず訳がわからない。
水樹へ助けを求めて視線を流すが、血糖値スパイクのせいで上手く頭が回っていないのか、
「戦鎚を携えた羅刹と凍える鬼の率いる軍団と、暗黒騎士たちの大決戦だ。これはいい記事になる、くくくくく」
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きっと、大仕事なのだろう。
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