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裏話
0.5話
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<<音声書き起こし>>
―――まずは自己紹介をしていただいてもいいですか?
・・・私のことは、「マルティナ」とでも呼んでください。
勿論偽名ですが、呼び名が必要でしょう?
―――マルティナさん。素性を隠してまでしたい「依頼」とはどんな内容なんですか?
本題に入るのが早いですね。
あなたの会社のある社員の動向を見張ってほしいのです。
「黒川さゆ」という女性社員です。
―――それは、どうして?
端的に言うと、彼女は私の命を狙っている、そう考えているのです。
未然に防ぐには見張りが必要、違いますか?
―――それで、同僚である私に相談を持ち掛けたんですね。ただそれなら警察に相談するとか、第三者を間に挟んで円満に示談することもできるのでは。
色んな人間に恨まれるほど、長く悪事に身を浸しましたから、警察の世話になるのはできれば避けたいんです。
それに、殺意に変わるほどの恨みが示談で解決するわけがない。
ただ、拗れるだけですよ。
記者としてのそんなシーンは何度も見てきたのでしょう?
―――それは・・・。
もう一押ししましょうか。
黒川を見張ること自体は、今のあなたにとっても悪い話じゃない。
―――どういう意味ですか?
記事にすればいい。
彼女のことも。私のことも。
私がマフィアの幹部でもあなたは記事にする、そう言う人間だ。
そして、売れ行きは保証しますよ。
―――今のところ、私にはそうは思えませんが。
とにかく。
彼女が何を考えているのか、そして何者なのか。
それを突き止めてください。
手付金はお渡ししましたから、よろしくお願いしますね。
―――・・・わかりました、腹をくくりましょう。
ありがとうございます。
あなたならそう言ってくれると思いましたよ。
―――ただ、『当人に取材する』と言うのは、口ぶりからするとよくはないのでしょうね。
ははは!おっしゃる通りで。
それに、何も私だって無策で調べろとまでは言いません。
今から言う人間に、「黒川さゆ」について聞いてみてください。
アクセサリー職人、納戸青緑
株式会社DaNAマーケ部、馬大可士
都市伝説系配信者、関暁菜
タトゥーアーティスト、KEIKO
―――彼らが、黒川さゆがあなたの命を狙う理由を知っている、と?
ええ、おそらく。
ああ、なら私が直接聞きに行けばいい、そう言おうとしましたね?
それがダメなのですよ。
私が出向いても話を聞いてもらえないんです。不思議ですね!
―――ええ、とても不思議ですね、それは。
それに、あなたに声をかけた理由もちゃんとあります。
だから、今回は逃げ出さないでください。
―――・・・はい?
話は終わりです。
俺の信頼を裏切らないでくださいね、水樹さん。
<<通話終了>>
備考
依頼人は金で雇った代理人に端末を持たせて、わざわざWeb会議を設定してきた。
意図はおそらくだが、他に話を聞いている人間がいないことを確かめたかったのだろう。
端末そのものを代理人が手に持っていたため会議の録画はできなかったものの、スマホで録音はできた。
とりあえず黒川と言う社員について調べようと思う。
後日分かったことだが、経営企画室の北野が黒川さゆに好意があるようだ。
何らかの化学反応があるかもしれない、取材に同行させてみることにする。
―――まずは自己紹介をしていただいてもいいですか?
・・・私のことは、「マルティナ」とでも呼んでください。
勿論偽名ですが、呼び名が必要でしょう?
―――マルティナさん。素性を隠してまでしたい「依頼」とはどんな内容なんですか?
本題に入るのが早いですね。
あなたの会社のある社員の動向を見張ってほしいのです。
「黒川さゆ」という女性社員です。
―――それは、どうして?
端的に言うと、彼女は私の命を狙っている、そう考えているのです。
未然に防ぐには見張りが必要、違いますか?
―――それで、同僚である私に相談を持ち掛けたんですね。ただそれなら警察に相談するとか、第三者を間に挟んで円満に示談することもできるのでは。
色んな人間に恨まれるほど、長く悪事に身を浸しましたから、警察の世話になるのはできれば避けたいんです。
それに、殺意に変わるほどの恨みが示談で解決するわけがない。
ただ、拗れるだけですよ。
記者としてのそんなシーンは何度も見てきたのでしょう?
―――それは・・・。
もう一押ししましょうか。
黒川を見張ること自体は、今のあなたにとっても悪い話じゃない。
―――どういう意味ですか?
記事にすればいい。
彼女のことも。私のことも。
私がマフィアの幹部でもあなたは記事にする、そう言う人間だ。
そして、売れ行きは保証しますよ。
―――今のところ、私にはそうは思えませんが。
とにかく。
彼女が何を考えているのか、そして何者なのか。
それを突き止めてください。
手付金はお渡ししましたから、よろしくお願いしますね。
―――・・・わかりました、腹をくくりましょう。
ありがとうございます。
あなたならそう言ってくれると思いましたよ。
―――ただ、『当人に取材する』と言うのは、口ぶりからするとよくはないのでしょうね。
ははは!おっしゃる通りで。
それに、何も私だって無策で調べろとまでは言いません。
今から言う人間に、「黒川さゆ」について聞いてみてください。
アクセサリー職人、納戸青緑
株式会社DaNAマーケ部、馬大可士
都市伝説系配信者、関暁菜
タトゥーアーティスト、KEIKO
―――彼らが、黒川さゆがあなたの命を狙う理由を知っている、と?
ええ、おそらく。
ああ、なら私が直接聞きに行けばいい、そう言おうとしましたね?
それがダメなのですよ。
私が出向いても話を聞いてもらえないんです。不思議ですね!
―――ええ、とても不思議ですね、それは。
それに、あなたに声をかけた理由もちゃんとあります。
だから、今回は逃げ出さないでください。
―――・・・はい?
話は終わりです。
俺の信頼を裏切らないでくださいね、水樹さん。
<<通話終了>>
備考
依頼人は金で雇った代理人に端末を持たせて、わざわざWeb会議を設定してきた。
意図はおそらくだが、他に話を聞いている人間がいないことを確かめたかったのだろう。
端末そのものを代理人が手に持っていたため会議の録画はできなかったものの、スマホで録音はできた。
とりあえず黒川と言う社員について調べようと思う。
後日分かったことだが、経営企画室の北野が黒川さゆに好意があるようだ。
何らかの化学反応があるかもしれない、取材に同行させてみることにする。
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