総務の黒川さんは袖をまくらない

与太話

9.5話

＜＜音声書き起こし＞＞


―――武原武のご息女、さゆさんについて、李さんは何を知ってるんですか。

...離婚したでしょ、武原。
その時、姉のさゆの親権は母親が、妹の音玄の親権は武原が持ってったのヨ。
そんな姉さゆは、なぜか武原の娘に籍を戻したのネ？
そして今は、行方フメイ。

ワタシが知ってるの、それくらいヨ～？


―――･･･すいません、言い方を変えましょう。何故、妹の音玄さんは姉のさゆさんになり替わっているんですか？


アー、逆に聞くけど、聞いてどうするノ、水樹サン。
自分に何かできると思ってるワケ？


―――もし彼女が誰かの命を奪おうとしているなら止めるように言うつもりです。･･･何せ、その相手はもうその事に気付いてるんですから。

･･･おいおい、たかがブンヤが何様なのサ？
止める権利なんて誰にもナイ。


―――隠し立てするんですか。

水樹サン、年上として説教垂れるケドさ、人生に必要なのは納得だヨ。
特に、下り坂を転がり落ちて、さあこれから登ってこうとするときほど、必要ダナ。


―――美味しいごはんではないんですか。

運が悪いなら、ワタシの小籠包でイイ。
でもそれが誰かのせいなら、ただのゴマカシ。
眠れぬ宵の酒と同じヨ。


―――･･･つまり正当な復讐だ、そう言うんですね。

正当かどうかというヨリ、そうするほかナイの。
10回挑んだら9回殺される相手でも、「そうなった」んだから「そうするしかない」ワケ。
･･･ってアレ、結局喋っチャッタね。
水樹サン、やっぱりお話ジョーズ！


―――武原武によって虐待され失踪した、大好きな姉の復讐ですか。

あるいは、殺されたカモ。
水樹サン、そう驚いた顔しないヨ～、全然ありうるデショー？。

実の娘を手に掛けた不幸とひた隠す恐怖を背負うことデ、来世で幸せが舞い降りるゾ～！
･･･なんて思っても不思議じゃナイ。

そこまでイっちゃってるネ、今のアイツは。


―――まさか、それが本当なら音玄さんも危ないじゃないですか！

オーオー、話が堂々巡リ～。
ダーカーラ、堪忍袋の緒がキレたってだけデショ。

何故、黒川さゆはいなくなったのカ。
あの子はその真相を父親に問い質すつもりナノ。

そして本当に父親が原因なら、警察に突き出すんじゃナイ？
そこでぶっ殺す権利くらいは、あると思うケドネ？


―――まさか李さん、音玄さんに仕込んだんですか、「ワンパン拳法」！

アッハァ！
我が李家八太拳法は一子相伝ヤメテ、門戸開放ネ！
老若男女誰でも学ベテ、誰でも倒セル。
どうかな水樹サン、今弟子入りするなら月額料金1割引きでイイヨ！


＜＜書き起こし終了＞＞