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番外編その2 愛しい猛獣の作り方
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「ええと、それを着ける前に風呂に入った方がいいですよね?」
「うむ、だがその前にしておきたいことがあってな」
「しておきたいこと……ええとムシュカ様、何で剃刀なんか持ってるのかなぁ……?」
覚悟は決めたものの、未だ衝撃はやまず。
どこか呆然とした様子でソファに沈み込んだ新太を気にしつつも、ムシュカは台所で何かをしていたようだ。
ようやく戻ってきた神様の手には、何故かT字の剃刀とハサミ、タオル、そしてシェービング用のジェルが握りしめられていて。
(うん、嫌な予感しかしないし絶対当たってる!!)
戸惑いがちに思わず下腹部に視線を向ければ「そういう事だ」とムシュカはソファテーブルに用意した道具を並べ、スツールに腰掛ける。
「……どうしても必要ですか?」
「一応剃らずとも出来なくは無いが、清潔を保ちにくくなるし……何より、貞操具に毛が絡まって痛い思いをするのは嬉しくなかろう」
「まぁ、それはそうですよね……」
「やっぱりかぁ……」と観念した様子の新太は、その場で下履きを脱ぎ捨てごろんとソファに寝転がる。
近所のホームセンターで購入した二人がけのソファは、簡易ベッドにもなる優れものだ。こういう意図で買ったわけじゃないんだけどなと心の中で愚痴りながらも、神様の指示とあらば特段反抗する気も無く、新太は大人しくまだ元気の無い中心を晒す。
――明るいところで股間を晒すだなんて。
この二年で散々見られ慣れている筈のに、いつもと体勢が違うのはどうにも気恥ずかしい。
「先に短く切ってから剃る。お主がやるよりは、上手に出来るはずだ」
「あー、自分でやりますとはちょっと言えないっすね……髭すら剃刀は苦手なのに」
「あれほど刃物を自由自在に振り回してたというのに、その能力がお主に継がれぬとは少々意外であったな」
新太の緊張をほぐすためだろう、軽口を叩きながらムシュカはハサミを手に取る。
ふわふわした毛がしゃくしゃくといい音を立てて短くなっていく間は、なんとも言えない複雑さを抱きながらもまだ耐えられたが、流石に急所を滑る刃物の絵面は心臓に悪い。
「動くでないぞ」
「はい」
たっぷりと泡をまぶした下腹部に、温かな刃が触れる。
どうやら先に温めておいてくれたらしい、ひやりとした感触を覚悟していた身体からふっと力が抜けて、大きなため息をつく新太を横目に、ムシュカは真剣な眼差しで剃刀を丹念に肌に這わせる。
しょり……しょり…………
「……うわぁ…………」
「ふふ、何も無いとお主のここはますます立派に見えるな」
「えええ、むしろ子供みたいで情けないんですけど……」
根元の叢を根絶やしに蒸しタオルで拭き上げれば、神様の手はそのまま双球へと伸ばされる。
自在に伸縮する皮膚は、やはり相手をするのが大変らしい。
時折引っ張られたせいか、それとも毛が引っかかったのか軽い痛みは覚えるけれど、耐えられないほどではない。
(うああああ神様のご尊顔が! そんな汚いところに! ! はっ、まだお風呂入ってないから臭うよな! ? どうしよう、俺の神様を穢すような真似を……って、なんでこれで元気になるのさ、俺! ! これじゃ俺が変態みたいじゃないかああ!!)
それよりも、麗しの人が真剣な眼差しでふぐりと格闘する姿はちょっと尊さが溢れすぎて……うっかり素直な反応を見せた我が儘な息子さんに気付いて赤面する新太に、ムシュカがすっかりご機嫌になっていたことは内緒である。
「少し腰を上げた方がよいな……ヴィナよ、このクッションを腰の下に入れるぞ。そのまま足を曲げてくれ。ああ、これならよく見える……ふふ、お主はいつもこんな風景を眺めておるのだな」
「ひいぃっ、お願いしますムシュカ様、そんな汚いところ見ないでぇ!!」
「見なければ剃れぬでは無いか、そう固くなるでない」
「ううぅ…………」
剃刀の刃はそのまま玉裏へ、そしてするりと何も知らない蕾の方へ降りてきて、さも当然のように周囲の毛を刈り取っていく。
さっきの道具の形状からして、お尻は関係ないんじゃと問いかければ「まあここだけ生えておるのもな」とうそぶくムシュカの口の端はちょっと上がっていて。
(……あー…………そりゃ男としてはこの体勢はそそるよな……まして相手は俺だし……)
――どうやら神様は、いつもと逆のポジションにちょっと興奮していると見た。
万が一にも無いとは思うのだが、この貞操具がきっかけで攻守交代なんて羽目にならないことを、新太は切に祈るばかりである。
「もうだめ、恥ずかしさが天元突破した……死ぬ……」
「お主は恥ずかしくても死ぬのか。いくら何でも、命を粗末にしすぎではないか? ……第一、毎夜のように私のあられも無い姿を見ておろう? ならば、大して変わらぬではないか」
「そっ、それは、向こうの世界に恥じらいを置き忘れてきたムシュカ様だから、平気なんですってば……」
「…………向こうにいた頃の私に、恥じらいがあったと?」
「いやあったでしょ! ……あった筈ですよ、俺の記憶には全く存在しないけど!!」
がっくりと気が抜けそうなやりとりの間に、温かいタオルで股間を拭われ「保湿剤は湯浴みの後でよいであろう」とようやく恥辱の体勢から解放された新太は、思わず股間に目をやる。
「うわ……ほんっとうに、ない……」
眼前に広がるのは、つるりとした、何とも頼りない己の象徴だ。
先ほどまではご乱心めされていた分身も、流石に己を守るものが無くなったのが堪えたのだろう、今はすっかり縮こまっている。
確かに子供の頃はこれが当たり前だったのに、一度茂った物を刈り取られるのがこれほど心に来るとは思わなかった。
きっと神様は、こんな惨めな姿を嗤いはしない。
それでも強烈な光景は、まるで自分が劣った未熟者だと――今だって成熟した大人と言えるかは微妙だけど――烙印を押された様に感じて、どうにも落ち込んでしまう。
きっと新太がしょぼくれることは想定内だったのだろう、片付けを終えたムシュカは「確かに、下の毛が無いのは心許ないものよな」と、ソファで悄然と俯く愛し子の頭をそっと撫でる。
そうして
「……まあそう落ち込むでない、ヴィナよ。なにお主だけに不憫な想いはさせぬ」
「俺、だけに……いやちょっと待って」
「私もお主のように赤子のような股間に」
「待って下さいって! そんな、俺は大丈夫……ではないけど、神様にそんな変態みたいな真似をさせるわけには」
「いや、もうしてあるが」
「ふぁっ!?」
ほれ、と勢いよく下ろされた下着の向こうに広がっていたのは、しみ一つ無い透き通るような白い肌と……その中心で息づく、ほんのり赤みを帯びた雄の象徴で。
「え、ちょ、そのっ、なにそれ神様もはや生きた芸術作品……ふぅ…………むぎゅ」
「おっと危ない……こんなこともあろうかと、ティッシュを用意しておいて正解であったな」
推しのあまりに衝撃的な光景に、新太は案の定鼻血を出して倒れ、しばし作業は中断を余儀なくされた。
◇◇◇
正気を取り戻し湯浴みを終えた新太は、再びソファへと誘われる。
テーブルの上には大きめのガラスコップが置いてあって、中には先ほどの貞操具が分解された状態で、透明な液体に浸かっていた。
(何だろう、洗ったのかな……? というかこれ、本当に俺に着けられるサイズ……?)
さっきはショックが大きすぎて気付かなかったが、形から察するにあの檻のような部分が己の徴に被せられるのだろう。
しかし太さは萎えた状態なら十分収まるであろうが、長さは……足りないどころでは無い、どう見ても親指の第1関節ほどしか無いではないか。
更に、その中心から伸びるチューブの存在。
この状況でそんな細長い物が入りそうな場所など、一つしか無いわけで……それに気づいた瞬間、胸の奥が焼け付くような感覚に新太はぶるりと身体を震わせる。
(俺の息子さん、もしかしなくてもとんでもない目に遭うのでは……?)
貞操具の入ったガラスコップの横に並んでいるのは、ワセリンとディスポの手袋。
ついでに消毒キットや謎の銀色のパウチもあって……思った以上に物々しい準備態勢に、緊張は高まるばかりだ。
「それ、俺が自分で着けるのは……」
「着けるのは少々コツがいるらしくてな、お主の馬鹿力だと下手をすれば股間に大惨事が」
「ひょぇっ! おっ、お任せいたします!!」
ワセリンを手にしながら、ムシュカは新太に浅めに腰掛けるよう促す。
せめて装着は自分で、と恐る恐る尋ねるも、どうやらこれを着けるには少々コツがいるらしいと聞いて、新太はあっさり要望を引っ込めた。
そういう難儀なものは、器用な神様にお任せした方がお互いのためだ。
「ふふ……たゆんたゆんであるな」
「金属が触れる以上、皮膚の保護は必要だからな」と股間全体にたっぷりとワセリンを塗り込みながら、風呂上がりですっかり伸びきったふぐりを、ムシュカはどこか楽しそうに弄んでいる。
自分にだって付いているものだろうと指摘すれば「お主のだから、良いのだ」とこれまた直截な愛情がぶっさり新太の胸に刺さって、嬉しいやら恥ずかしいやら……非常に複雑な気分だ。
ぬるぬるした感触に何とも言えない表情を浮かべる新太の前で、ムシュカはグラスからまずはリングを取り出す。
「……サイズは確認したが、本当に小さいな……大丈夫であろうか」
「あのう、めちゃくちゃ不安なんですけど、その言葉……」
金属の部品はあらかじめ処理の甘い部分を研磨した上で洗浄し、カテーテルを着けてこの消毒薬の中に漬けてあったらしい。
「ここまでせずとも問題はないであろうが、お主に何かあってはならぬからな」と話すその心遣いはありがたいが、そんな気遣いができるなら貞操具なんて恐ろしい物には手を出さないで欲しかった。
「このリングをな、ここに通す」
「ここ、って……タマにですか? いやいや、どう見てもそのサイズじゃ通らないっすよ」
「片方ずつなら何とか通せるのだ。……まあその、少し潰しながらだが」
「えっ」
――今、神様、潰すって、言いませんでした?
その言葉を理解する前に、ムシュカはリングを片方の膨らみへと当てる。
そうして「どれ」と掛け声をかけた瞬間、新太の全身にぶわっと脂汗が浮いた。
「――――! ! ――!」
「ぬぅ、片玉がちょっと潰して通るくらいが良いと書いておったが、こうもにゅるにゅる逃げてると難しいな。自分のものとは勝手も違うし……もう少し潰さねばならぬか」
「まっ……か…………は……っ!!」
(い……痛すぎ…………るぅ……!)
容赦なくへしゃげられた内臓からの痛みに、新太の焦点の合わない瞳からは勝手に涙が滲み、はくはくと震える唇からは言葉も出ない。
俺、こんなことをされて今後も真っ当な男でいられるんだろうかと、あまりの苦痛に逆に冷静になった思考が囁きかけ、ちょっと意識が遠のきかけたとき、ずるんっ! ! と輪が外側を滑り抜ける感覚と共にすっと痛みが遠のいた。
「はーっ、はーっ…………死んだかと、思いました……」
「うむ、私も通していて冷や汗が出たぞ。……大丈夫か、ヴィナ」
「全っ然大丈夫じゃないです……」
装着一つでこの有様とは。
もう今日の気力を全部使い果たしました……と涙目で訴える新太に、しかし実にすまなそうな顔をしながら、ムシュカはそっとふぐりに手を添え
「……あ」
「残念ながら、玉は二つあってな……」
「…………うっそでしょ……」
(うん、騎士として負った傷の方が……ずっと痛くなかった記憶があるなぁ……)
忘れていたかった事実を口にしながらリングに押しつけられた瞬間襲いかかった、二つの人生を合わせても最大級の痛みに、新太の身体からはちょっぴり魂が抜けた気がするのだった。
「うむ、だがその前にしておきたいことがあってな」
「しておきたいこと……ええとムシュカ様、何で剃刀なんか持ってるのかなぁ……?」
覚悟は決めたものの、未だ衝撃はやまず。
どこか呆然とした様子でソファに沈み込んだ新太を気にしつつも、ムシュカは台所で何かをしていたようだ。
ようやく戻ってきた神様の手には、何故かT字の剃刀とハサミ、タオル、そしてシェービング用のジェルが握りしめられていて。
(うん、嫌な予感しかしないし絶対当たってる!!)
戸惑いがちに思わず下腹部に視線を向ければ「そういう事だ」とムシュカはソファテーブルに用意した道具を並べ、スツールに腰掛ける。
「……どうしても必要ですか?」
「一応剃らずとも出来なくは無いが、清潔を保ちにくくなるし……何より、貞操具に毛が絡まって痛い思いをするのは嬉しくなかろう」
「まぁ、それはそうですよね……」
「やっぱりかぁ……」と観念した様子の新太は、その場で下履きを脱ぎ捨てごろんとソファに寝転がる。
近所のホームセンターで購入した二人がけのソファは、簡易ベッドにもなる優れものだ。こういう意図で買ったわけじゃないんだけどなと心の中で愚痴りながらも、神様の指示とあらば特段反抗する気も無く、新太は大人しくまだ元気の無い中心を晒す。
――明るいところで股間を晒すだなんて。
この二年で散々見られ慣れている筈のに、いつもと体勢が違うのはどうにも気恥ずかしい。
「先に短く切ってから剃る。お主がやるよりは、上手に出来るはずだ」
「あー、自分でやりますとはちょっと言えないっすね……髭すら剃刀は苦手なのに」
「あれほど刃物を自由自在に振り回してたというのに、その能力がお主に継がれぬとは少々意外であったな」
新太の緊張をほぐすためだろう、軽口を叩きながらムシュカはハサミを手に取る。
ふわふわした毛がしゃくしゃくといい音を立てて短くなっていく間は、なんとも言えない複雑さを抱きながらもまだ耐えられたが、流石に急所を滑る刃物の絵面は心臓に悪い。
「動くでないぞ」
「はい」
たっぷりと泡をまぶした下腹部に、温かな刃が触れる。
どうやら先に温めておいてくれたらしい、ひやりとした感触を覚悟していた身体からふっと力が抜けて、大きなため息をつく新太を横目に、ムシュカは真剣な眼差しで剃刀を丹念に肌に這わせる。
しょり……しょり…………
「……うわぁ…………」
「ふふ、何も無いとお主のここはますます立派に見えるな」
「えええ、むしろ子供みたいで情けないんですけど……」
根元の叢を根絶やしに蒸しタオルで拭き上げれば、神様の手はそのまま双球へと伸ばされる。
自在に伸縮する皮膚は、やはり相手をするのが大変らしい。
時折引っ張られたせいか、それとも毛が引っかかったのか軽い痛みは覚えるけれど、耐えられないほどではない。
(うああああ神様のご尊顔が! そんな汚いところに! ! はっ、まだお風呂入ってないから臭うよな! ? どうしよう、俺の神様を穢すような真似を……って、なんでこれで元気になるのさ、俺! ! これじゃ俺が変態みたいじゃないかああ!!)
それよりも、麗しの人が真剣な眼差しでふぐりと格闘する姿はちょっと尊さが溢れすぎて……うっかり素直な反応を見せた我が儘な息子さんに気付いて赤面する新太に、ムシュカがすっかりご機嫌になっていたことは内緒である。
「少し腰を上げた方がよいな……ヴィナよ、このクッションを腰の下に入れるぞ。そのまま足を曲げてくれ。ああ、これならよく見える……ふふ、お主はいつもこんな風景を眺めておるのだな」
「ひいぃっ、お願いしますムシュカ様、そんな汚いところ見ないでぇ!!」
「見なければ剃れぬでは無いか、そう固くなるでない」
「ううぅ…………」
剃刀の刃はそのまま玉裏へ、そしてするりと何も知らない蕾の方へ降りてきて、さも当然のように周囲の毛を刈り取っていく。
さっきの道具の形状からして、お尻は関係ないんじゃと問いかければ「まあここだけ生えておるのもな」とうそぶくムシュカの口の端はちょっと上がっていて。
(……あー…………そりゃ男としてはこの体勢はそそるよな……まして相手は俺だし……)
――どうやら神様は、いつもと逆のポジションにちょっと興奮していると見た。
万が一にも無いとは思うのだが、この貞操具がきっかけで攻守交代なんて羽目にならないことを、新太は切に祈るばかりである。
「もうだめ、恥ずかしさが天元突破した……死ぬ……」
「お主は恥ずかしくても死ぬのか。いくら何でも、命を粗末にしすぎではないか? ……第一、毎夜のように私のあられも無い姿を見ておろう? ならば、大して変わらぬではないか」
「そっ、それは、向こうの世界に恥じらいを置き忘れてきたムシュカ様だから、平気なんですってば……」
「…………向こうにいた頃の私に、恥じらいがあったと?」
「いやあったでしょ! ……あった筈ですよ、俺の記憶には全く存在しないけど!!」
がっくりと気が抜けそうなやりとりの間に、温かいタオルで股間を拭われ「保湿剤は湯浴みの後でよいであろう」とようやく恥辱の体勢から解放された新太は、思わず股間に目をやる。
「うわ……ほんっとうに、ない……」
眼前に広がるのは、つるりとした、何とも頼りない己の象徴だ。
先ほどまではご乱心めされていた分身も、流石に己を守るものが無くなったのが堪えたのだろう、今はすっかり縮こまっている。
確かに子供の頃はこれが当たり前だったのに、一度茂った物を刈り取られるのがこれほど心に来るとは思わなかった。
きっと神様は、こんな惨めな姿を嗤いはしない。
それでも強烈な光景は、まるで自分が劣った未熟者だと――今だって成熟した大人と言えるかは微妙だけど――烙印を押された様に感じて、どうにも落ち込んでしまう。
きっと新太がしょぼくれることは想定内だったのだろう、片付けを終えたムシュカは「確かに、下の毛が無いのは心許ないものよな」と、ソファで悄然と俯く愛し子の頭をそっと撫でる。
そうして
「……まあそう落ち込むでない、ヴィナよ。なにお主だけに不憫な想いはさせぬ」
「俺、だけに……いやちょっと待って」
「私もお主のように赤子のような股間に」
「待って下さいって! そんな、俺は大丈夫……ではないけど、神様にそんな変態みたいな真似をさせるわけには」
「いや、もうしてあるが」
「ふぁっ!?」
ほれ、と勢いよく下ろされた下着の向こうに広がっていたのは、しみ一つ無い透き通るような白い肌と……その中心で息づく、ほんのり赤みを帯びた雄の象徴で。
「え、ちょ、そのっ、なにそれ神様もはや生きた芸術作品……ふぅ…………むぎゅ」
「おっと危ない……こんなこともあろうかと、ティッシュを用意しておいて正解であったな」
推しのあまりに衝撃的な光景に、新太は案の定鼻血を出して倒れ、しばし作業は中断を余儀なくされた。
◇◇◇
正気を取り戻し湯浴みを終えた新太は、再びソファへと誘われる。
テーブルの上には大きめのガラスコップが置いてあって、中には先ほどの貞操具が分解された状態で、透明な液体に浸かっていた。
(何だろう、洗ったのかな……? というかこれ、本当に俺に着けられるサイズ……?)
さっきはショックが大きすぎて気付かなかったが、形から察するにあの檻のような部分が己の徴に被せられるのだろう。
しかし太さは萎えた状態なら十分収まるであろうが、長さは……足りないどころでは無い、どう見ても親指の第1関節ほどしか無いではないか。
更に、その中心から伸びるチューブの存在。
この状況でそんな細長い物が入りそうな場所など、一つしか無いわけで……それに気づいた瞬間、胸の奥が焼け付くような感覚に新太はぶるりと身体を震わせる。
(俺の息子さん、もしかしなくてもとんでもない目に遭うのでは……?)
貞操具の入ったガラスコップの横に並んでいるのは、ワセリンとディスポの手袋。
ついでに消毒キットや謎の銀色のパウチもあって……思った以上に物々しい準備態勢に、緊張は高まるばかりだ。
「それ、俺が自分で着けるのは……」
「着けるのは少々コツがいるらしくてな、お主の馬鹿力だと下手をすれば股間に大惨事が」
「ひょぇっ! おっ、お任せいたします!!」
ワセリンを手にしながら、ムシュカは新太に浅めに腰掛けるよう促す。
せめて装着は自分で、と恐る恐る尋ねるも、どうやらこれを着けるには少々コツがいるらしいと聞いて、新太はあっさり要望を引っ込めた。
そういう難儀なものは、器用な神様にお任せした方がお互いのためだ。
「ふふ……たゆんたゆんであるな」
「金属が触れる以上、皮膚の保護は必要だからな」と股間全体にたっぷりとワセリンを塗り込みながら、風呂上がりですっかり伸びきったふぐりを、ムシュカはどこか楽しそうに弄んでいる。
自分にだって付いているものだろうと指摘すれば「お主のだから、良いのだ」とこれまた直截な愛情がぶっさり新太の胸に刺さって、嬉しいやら恥ずかしいやら……非常に複雑な気分だ。
ぬるぬるした感触に何とも言えない表情を浮かべる新太の前で、ムシュカはグラスからまずはリングを取り出す。
「……サイズは確認したが、本当に小さいな……大丈夫であろうか」
「あのう、めちゃくちゃ不安なんですけど、その言葉……」
金属の部品はあらかじめ処理の甘い部分を研磨した上で洗浄し、カテーテルを着けてこの消毒薬の中に漬けてあったらしい。
「ここまでせずとも問題はないであろうが、お主に何かあってはならぬからな」と話すその心遣いはありがたいが、そんな気遣いができるなら貞操具なんて恐ろしい物には手を出さないで欲しかった。
「このリングをな、ここに通す」
「ここ、って……タマにですか? いやいや、どう見てもそのサイズじゃ通らないっすよ」
「片方ずつなら何とか通せるのだ。……まあその、少し潰しながらだが」
「えっ」
――今、神様、潰すって、言いませんでした?
その言葉を理解する前に、ムシュカはリングを片方の膨らみへと当てる。
そうして「どれ」と掛け声をかけた瞬間、新太の全身にぶわっと脂汗が浮いた。
「――――! ! ――!」
「ぬぅ、片玉がちょっと潰して通るくらいが良いと書いておったが、こうもにゅるにゅる逃げてると難しいな。自分のものとは勝手も違うし……もう少し潰さねばならぬか」
「まっ……か…………は……っ!!」
(い……痛すぎ…………るぅ……!)
容赦なくへしゃげられた内臓からの痛みに、新太の焦点の合わない瞳からは勝手に涙が滲み、はくはくと震える唇からは言葉も出ない。
俺、こんなことをされて今後も真っ当な男でいられるんだろうかと、あまりの苦痛に逆に冷静になった思考が囁きかけ、ちょっと意識が遠のきかけたとき、ずるんっ! ! と輪が外側を滑り抜ける感覚と共にすっと痛みが遠のいた。
「はーっ、はーっ…………死んだかと、思いました……」
「うむ、私も通していて冷や汗が出たぞ。……大丈夫か、ヴィナ」
「全っ然大丈夫じゃないです……」
装着一つでこの有様とは。
もう今日の気力を全部使い果たしました……と涙目で訴える新太に、しかし実にすまなそうな顔をしながら、ムシュカはそっとふぐりに手を添え
「……あ」
「残念ながら、玉は二つあってな……」
「…………うっそでしょ……」
(うん、騎士として負った傷の方が……ずっと痛くなかった記憶があるなぁ……)
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