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第2章 初めてのダンジョンクエスト
【3】ヴァンさんの大きな悩み
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人数条件で受けられなかった三つ星クエストだけど、リリアさんがパーティーに加入してくれたおかげで受けられるようになった。
ということでそれぞれが準備をするために一旦解散し、正午あたりに集合してみんなとご飯を食べてから出発することになる。
ヴァンさんにはアリサが伝えておくって言ってたけど、なんだか心配になっちゃうな。たぶん大丈夫だと思うけど。
何はともあれ出発の準備をしなくちゃ。
初めてのダンジョンクエストだし、何が起きるのかわからないしね。
そう思って僕は大通りを歩く。ここは街にやってくる観光客を相手にしている店が多いんだけど、ちゃんと冒険者に向けた商品を扱っている店もあるんだよね。
えっと、確かここの角を曲がったところに行きつけのお店があったはず。
「あ、あったあった」
大通りにあるのになぜか隠れるように存在する雑貨屋【ルナガルフ】を僕は見つけた。
何でも、ルナガルフの店主は「冷やかしはお断り」ということで本当に用がある人だけ寄せつけない魔法を建物にかけたらしいんだ。
よくわからないけど、昔とんでもなく嫌な思いをしたからそういう魔法をかけたと言ってたよ。
気になるから今度聞いてみようかな?
そんなこんなと考えながら僕はルナガルフへ入っていく。
木造の建物は中も外観通り木造で、木のぬくもりを感じられるような内装になっている。たくさんの棚には様々なポーション、何に使うかわからない石、変な形をしたオモチャらしきものに剣やナイフといった武器があった。
防具となる鎧や兜もあるけど、今の僕じゃあ重すぎて使えないものだね。
でも絶対に着てやるんだ。そのためにはもっと身体を鍛えなきゃ!
「おや、また来たのかい? レインの坊や」
「メイリーさん、おはようございます!」
ルナガルフの店主であるメイリーさんが声をかけてくれた。
この方は妙齢の女性で、数年前に旦那さんから先立たれてしまったそうだ。それ以降、一人でお店を切り盛りし、ずっと守ってきた。
だから様々な嫌な体験もしてきたそうだ。でも数少ないけどいい体験もしたと言ってたかな。
何にしても現在、僕がとてもお世話になっている人だ。
「坊やはやめてくださいよぉー。僕はもうすぐ大人です!」
「まだ大人じゃないんだろう? なら坊やさ」
「むぅー、揚げ足を取ってー。買いませんよ」
「おや、冷やかしかい? ならさっさと帰りな。ここは子どもの遊び場じゃないよ」
「メイリーさんのイジワルぅー!」
「ハッハッハッ、こりゃ悪かったね。じゃ、商売してあげるから許してね」
いつものやり取りを終え、僕はちょっとふくれっ面になりながらポーションが置かれている棚に向かった。
ちょっと安くて効果のあるポーションを五個を手にとって、あとは携帯食料を買っていこう。
えっと、美味しそうな乾パンは、と――
「なんだこれ?」
携帯食料を探していると妙な商品を見つけた。それは乾燥したお肉だ。確かジャーキーという名前で、長期保存ができる食べ物だったはず。
なんでこんなものが置かれているんだろう? 前はなかったはずなのに。
「あら、お目が高いわね。それは最近入荷したばかりのものよ」
「最近? そうなんだ。これ、美味しいですか?」
「美味しいわよ。でも辛口だから坊やの口には合わないかもね」
「そんなことありません! 食べられますから!」
「そう? あ、ちょっと高いけど買ってく?」
「買います! 買って大人の証明をしてみせます!」
「まいどあり~」
そんなこんなで僕はジャーキーを買った。
なんだか口車に乗せられた気がするけど、気のせいだよね!
「ところでこのジャーキー、どこから仕入れたんですか? お肉って手に入れるの大変だと思いますが」
「最近、新しい取引先ができたのよ。まあ、半ば泣きつかれて仕方なくって感じだけどね。でも、結構いい取引してくれるから長く付き合おうと思ってるわ」
「へぇー。それはよかったですね」
「結果的にはね。でも彼女、冒険者でもあるからいつ何が起きるのかわからないかな。そこだけが心配ね~」
冒険者は不安定な職業だ。食い扶持を得られないこともあれば、一発当ててお金持ちになる人もいる。
それに加えて命がかかる仕事が多い。その分、実力次第で成り上がれるから貴族じゃない人には人気が高い。
まあ、貴族だった僕がいうのもなんだけどそこそこ食っていけるぐらい稼ぐことだってできるんだよね。
でも、冒険者は野心家が多い。そうじゃなきゃ上を目指せないからっていう理由らしい。
何にしても、自分の野心のために命を懸ける仕事だから不安定なのは仕方ないかも。
「坊や、アンタはずっと来てくれない? アンタはいい子だしね」
「ずっと通いますよ。でも僕はいい子じゃありません! すっごい悪い子です!」
「はいはい。じゃあ、悪い子な坊やは絶対に死なないでね。じゃないとおばちゃん悲しんじゃうから」
「はい、約束します!」
メイリーさんは微笑んでいた。それはもうとても優しい目つきをして僕を眺めている。
まるでお母さんみたいな人だ。でも、僕の母様はメイリーさんじゃない。
だから、絶対には約束できない。でも、できる限り死なないようにしようと思う。
「それじゃあ、メイリーさん。行ってきます」
「いってらっしゃい。気をつけてね」
僕はメイリーさんと別れ、集合場所であるギルドへ向かった。みんなが待っていると思うし、今日も頑張ろう!
★★★★★
「おい、レイン。ちょっとツラ貸せ」
ギルドにつくや否や、僕はヴァンさんに腕を引っ張られた。
そのまま裏へ連れて行かれると唐突にドンッと背にある壁を叩かれ、逃げられないように迫られてしまう。
あれ? ヴァンさんが怒っているけど何かやっちゃったかな?
「なんでリリアがいるんだ? しっかりとした理由があるんだよな?」
「なんでって、クエスト受けるためには必要でしたし」
「だからってあいつじゃなくてもいいだろっ」
「えっと、何か困ることがあるんですか?」
「大アリだから言ってんだ。ハァー」
ヴァンさんが唐突に頭を抱え始めちゃった。本当にどうしたんだろう。
そんなことを思っているとヴァンさんは僕にその理由を話してくれる。
「俺はな、リリアに付きまとわれているんだよ」
「……え?」
「いわゆるストーカーだ。なんやんやでどうにか巻いてたが、それができなくなっちまった。お前のおかげでな」
「ストーカーって、あのストーカーですか! あの子、なんて悪いことしているんですか!!!」
「目を輝かせていうことか、それ?」
なんて羨ましいげふんげふん、けしからんことをしているんだ!
これはお仕置きをしないといけないよ!
「まあ、今からでもいいからクエストを取り下げてくれ。そうすれば――」
「それは無理です。もう受諾しちゃいました」
「マジかよ。仕方ないな、じゃあ今回こっきりにしてくれ。じゃないと俺が持たない」
「了解しました! たくさんお仕置きしちゃいますね!」
「お仕置き? お前、何を言って――」
「ヴァンさんを困らせる不届き者です。なら、お仕置きしなくちゃいけません! そう、ヴァンさんが嫌われるように徹底的にです!」
「いや、そこまでしなくてもいいんだが……」
「よし、それじゃあ作戦会議といきましょう! ヴァンさん!」
「俺の話を聞いてたか? レイン?」
こうして僕はリリアにお仕置きするためにヴァンさんと作戦会議をした。
さあ、楽しいクエストになるぞ!
そんな感じにウキウキしながら、ヴァンさんと様々なアイディアを出しあったのだった。
★★★★★
今回の悪いこと︰女の子をお仕置きする作戦会議をした
ということでそれぞれが準備をするために一旦解散し、正午あたりに集合してみんなとご飯を食べてから出発することになる。
ヴァンさんにはアリサが伝えておくって言ってたけど、なんだか心配になっちゃうな。たぶん大丈夫だと思うけど。
何はともあれ出発の準備をしなくちゃ。
初めてのダンジョンクエストだし、何が起きるのかわからないしね。
そう思って僕は大通りを歩く。ここは街にやってくる観光客を相手にしている店が多いんだけど、ちゃんと冒険者に向けた商品を扱っている店もあるんだよね。
えっと、確かここの角を曲がったところに行きつけのお店があったはず。
「あ、あったあった」
大通りにあるのになぜか隠れるように存在する雑貨屋【ルナガルフ】を僕は見つけた。
何でも、ルナガルフの店主は「冷やかしはお断り」ということで本当に用がある人だけ寄せつけない魔法を建物にかけたらしいんだ。
よくわからないけど、昔とんでもなく嫌な思いをしたからそういう魔法をかけたと言ってたよ。
気になるから今度聞いてみようかな?
そんなこんなと考えながら僕はルナガルフへ入っていく。
木造の建物は中も外観通り木造で、木のぬくもりを感じられるような内装になっている。たくさんの棚には様々なポーション、何に使うかわからない石、変な形をしたオモチャらしきものに剣やナイフといった武器があった。
防具となる鎧や兜もあるけど、今の僕じゃあ重すぎて使えないものだね。
でも絶対に着てやるんだ。そのためにはもっと身体を鍛えなきゃ!
「おや、また来たのかい? レインの坊や」
「メイリーさん、おはようございます!」
ルナガルフの店主であるメイリーさんが声をかけてくれた。
この方は妙齢の女性で、数年前に旦那さんから先立たれてしまったそうだ。それ以降、一人でお店を切り盛りし、ずっと守ってきた。
だから様々な嫌な体験もしてきたそうだ。でも数少ないけどいい体験もしたと言ってたかな。
何にしても現在、僕がとてもお世話になっている人だ。
「坊やはやめてくださいよぉー。僕はもうすぐ大人です!」
「まだ大人じゃないんだろう? なら坊やさ」
「むぅー、揚げ足を取ってー。買いませんよ」
「おや、冷やかしかい? ならさっさと帰りな。ここは子どもの遊び場じゃないよ」
「メイリーさんのイジワルぅー!」
「ハッハッハッ、こりゃ悪かったね。じゃ、商売してあげるから許してね」
いつものやり取りを終え、僕はちょっとふくれっ面になりながらポーションが置かれている棚に向かった。
ちょっと安くて効果のあるポーションを五個を手にとって、あとは携帯食料を買っていこう。
えっと、美味しそうな乾パンは、と――
「なんだこれ?」
携帯食料を探していると妙な商品を見つけた。それは乾燥したお肉だ。確かジャーキーという名前で、長期保存ができる食べ物だったはず。
なんでこんなものが置かれているんだろう? 前はなかったはずなのに。
「あら、お目が高いわね。それは最近入荷したばかりのものよ」
「最近? そうなんだ。これ、美味しいですか?」
「美味しいわよ。でも辛口だから坊やの口には合わないかもね」
「そんなことありません! 食べられますから!」
「そう? あ、ちょっと高いけど買ってく?」
「買います! 買って大人の証明をしてみせます!」
「まいどあり~」
そんなこんなで僕はジャーキーを買った。
なんだか口車に乗せられた気がするけど、気のせいだよね!
「ところでこのジャーキー、どこから仕入れたんですか? お肉って手に入れるの大変だと思いますが」
「最近、新しい取引先ができたのよ。まあ、半ば泣きつかれて仕方なくって感じだけどね。でも、結構いい取引してくれるから長く付き合おうと思ってるわ」
「へぇー。それはよかったですね」
「結果的にはね。でも彼女、冒険者でもあるからいつ何が起きるのかわからないかな。そこだけが心配ね~」
冒険者は不安定な職業だ。食い扶持を得られないこともあれば、一発当ててお金持ちになる人もいる。
それに加えて命がかかる仕事が多い。その分、実力次第で成り上がれるから貴族じゃない人には人気が高い。
まあ、貴族だった僕がいうのもなんだけどそこそこ食っていけるぐらい稼ぐことだってできるんだよね。
でも、冒険者は野心家が多い。そうじゃなきゃ上を目指せないからっていう理由らしい。
何にしても、自分の野心のために命を懸ける仕事だから不安定なのは仕方ないかも。
「坊や、アンタはずっと来てくれない? アンタはいい子だしね」
「ずっと通いますよ。でも僕はいい子じゃありません! すっごい悪い子です!」
「はいはい。じゃあ、悪い子な坊やは絶対に死なないでね。じゃないとおばちゃん悲しんじゃうから」
「はい、約束します!」
メイリーさんは微笑んでいた。それはもうとても優しい目つきをして僕を眺めている。
まるでお母さんみたいな人だ。でも、僕の母様はメイリーさんじゃない。
だから、絶対には約束できない。でも、できる限り死なないようにしようと思う。
「それじゃあ、メイリーさん。行ってきます」
「いってらっしゃい。気をつけてね」
僕はメイリーさんと別れ、集合場所であるギルドへ向かった。みんなが待っていると思うし、今日も頑張ろう!
★★★★★
「おい、レイン。ちょっとツラ貸せ」
ギルドにつくや否や、僕はヴァンさんに腕を引っ張られた。
そのまま裏へ連れて行かれると唐突にドンッと背にある壁を叩かれ、逃げられないように迫られてしまう。
あれ? ヴァンさんが怒っているけど何かやっちゃったかな?
「なんでリリアがいるんだ? しっかりとした理由があるんだよな?」
「なんでって、クエスト受けるためには必要でしたし」
「だからってあいつじゃなくてもいいだろっ」
「えっと、何か困ることがあるんですか?」
「大アリだから言ってんだ。ハァー」
ヴァンさんが唐突に頭を抱え始めちゃった。本当にどうしたんだろう。
そんなことを思っているとヴァンさんは僕にその理由を話してくれる。
「俺はな、リリアに付きまとわれているんだよ」
「……え?」
「いわゆるストーカーだ。なんやんやでどうにか巻いてたが、それができなくなっちまった。お前のおかげでな」
「ストーカーって、あのストーカーですか! あの子、なんて悪いことしているんですか!!!」
「目を輝かせていうことか、それ?」
なんて羨ましいげふんげふん、けしからんことをしているんだ!
これはお仕置きをしないといけないよ!
「まあ、今からでもいいからクエストを取り下げてくれ。そうすれば――」
「それは無理です。もう受諾しちゃいました」
「マジかよ。仕方ないな、じゃあ今回こっきりにしてくれ。じゃないと俺が持たない」
「了解しました! たくさんお仕置きしちゃいますね!」
「お仕置き? お前、何を言って――」
「ヴァンさんを困らせる不届き者です。なら、お仕置きしなくちゃいけません! そう、ヴァンさんが嫌われるように徹底的にです!」
「いや、そこまでしなくてもいいんだが……」
「よし、それじゃあ作戦会議といきましょう! ヴァンさん!」
「俺の話を聞いてたか? レイン?」
こうして僕はリリアにお仕置きするためにヴァンさんと作戦会議をした。
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