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しおりを挟むリオナとオルキス殿の付き添いで、部屋まで送り届けた。そのまま応接室に戻るつもりだったのだが、オルキス殿の願いで茶をすることになった。
「…あの」
「なんだよ」
ぶすっとした態度のオルキス殿にとりあえず謝罪しようと思う。
「怪我の具合は」
「別にもう痛くもなんともない」
「…本当に申し訳、」
「謝るな」
「え?」
「…リオナに怒られた。煽った俺も、悪かった」
「そんなこと…」
いくら煽られたからといって、それ以前に屋敷に忍び込んだ自分が悪いということは重々自覚している。訴えられても仕方ないところをこうして生かされていることに感謝しか出ないほどだ。
「……父上の顔を、久しぶりに見たよ」
オルキス殿の寂しそうな声に、「え?」となる。ローレンス公爵のことだから、さぞかし息子を可愛がっていると思ったのだけれど。
「父上は、私を嫌っているから」
「ーーそんなわけないでしょ…」
思わずぽつりと漏れてしまう。嫌っているなら、人前で、まるで恋人の話でもするみたいに、顔が崩れたりしない。きっと応接室を出るときに睨まれたのも、俺がこの男になにか危害を加えないかということを思っていたのだろう。
「また貴方は。そんなわけないでしょう」
「母上が亡くなったのは私のせいだからな。きっと恨んでいるのだ」
「そう思うのなら、ローレンスおじ様に聞けばよいでしょう」
「…私が嫌われているのはきっと、そうだ、あれからだ」
「また始まった…」
どうやらオルキス殿の不幸話はいつものことらしく、リオナは呆れたように立ち上がった。
「エドワード様、戻りましょう。長くなってしまうわ」
「おいリオナ、私の話を遮るのかっ!?」
「そうだよ、リオナ。話を遮るなんて…」
と、ここでオルキス殿の味方をしてしまったのが駄目だったようだ。
「行きますよ、エドワード様」
自分を立たせようとしたリオナの顔が、少し歪んだ。それもそのはず、エドワードも何が何だか分からなかったのだから。
「…あの?オルキス殿…?」
服の裾を掴まれ、離してもらえない。
「…どうせリオナは帰るんだろ、帰ればいい。エドワードが私の話を聞いてくれる。…よ、な?」
ーー今まで気付かなかったけど!!この男、結構な美少年だなおい!!!
「…あー…そう、ですね…」
「……エドワード様。私は先に戻りますけれど、くれぐれも変な気は起こさないでくださいませ」
「へ、変な気?」
その時は分からなかったその言葉の意味も、後に分かることとなる。
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