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3,変わった未来
しおりを挟む「ルイス王子が、お前と婚約したいと言ってきた」
嬉しそうなお父様の顔に、私も笑う。
「そうですか。では、進めて下さいませ」
「ヒューリア、いいのか?」
あまりにもあっさりとしていたので、父が不思議そうな顔をする。政略結婚は嫌だとか、運命の恋だとか。ヒューリアは常日頃からそんなことを口にしていたからだろうけれど。
「もちろんですわ。この上ないほど嬉しく思っております」
調べたところ、まだあの女とルイスは共にはいない。私が未来を変えてみせる。…リーザという女が、ルイスと親密になることがなければ、復讐なんていらない。そんなことを考えていたのだ。
夢かもしれないと思ったけれど、目が覚めても日付が次の日に変わっているだけだった。復讐なんてやるべきでないことは分かっている。というか、復讐なんてしたくない。それでも、一度は死んだのだ。もう怖いものなんてない。
二度目の婚約は嬉しくなんてない。ただ、虚しいだけだった。
「ヒューリア」
「ルイス様」
婚約の準備が着々と進む中、ルイスはアルテミス侯爵家を訪れた。
確か私の記憶では、私が城へ行くはずだったのだが。そしてそこでカインと出会い、…まぁ、前とは少しずつ選択肢も変わっている。多少の行動のズレは出るのだろう。
「わざわざお越し頂いて光栄です。本来なら、私がお伺いするべきですのに」
「いい、あまり城には来るな」
「え?」
「あ、いや。私が会いたいだけなのに、自分の都合で振り回すわけにはいかない。それに時間を合わせようと思ったら、私が来るのが一番早い」
「…そうですわね。ありがとうございます」
今日はよく喋る。ルイスとはこの日を境に会話をしなくなるのだが。
「……ところで」
「はい?」
「先程、君と話していた男は誰だ?何を話していた?」
……あ。リーザのことを調べさせた人だわ。昔からお世話になっている情報屋さん。見られていたのね。
「…あの方は……街の商店の方ですわ。私、そこの菓子が大好きでいつも頼んでいますの。今日も届けてくださって、少しお話を」
口から出た出任せだが。
「そうか。…その菓子、私も後で頂いていいか?」
「え?え、えぇ…」
…まぁいいか。適当になにか渡しておこう。
「では、そろそろ帰るよ」
ルイスの声に、見送りをしようと立ち上がったがやんわりと止められた。
「あぁ、そうだ。ヒューリア」
「はい?」
「また来る」
「…はい」
にこりと笑ってお辞儀する。
さぁ、これからどうしようか。
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