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4,絶望の味
しおりを挟むおかしい。
「ヒューリア、どうした?」
どう考えてもおかしい。
「…い、いえ。なんでもありませんわ、ルイス様」
ーーどうしてこの人は毎日私の屋敷に通いつめているの!?
事の発端は数日前。『また来る』という言葉と共に帰ったルイスは翌日、『また来た』。
そしてその次の日も、その次の日も。
今日で五日目だ。
「ルイス様、この頃よく私に会いに来られますが…大丈夫なのですか?」
「なに?」
「政務があるのでは…」
「ーーまるで私にここに来て欲しくないかのような口振りだな」
「そ、そんなことないですわ!嬉しいです!」
ーーえぇ、そうよ。貴方になんか会いたくないわ。あの女の手を取り、私を裏切った貴方。大好きだった人。
ヒューリアは考えた。このまま何の策もなしにまた日々を過ごしていては、またルイスはヒューリアを裏切るだろう。もし裏切らなければ、それは単にルイスだけが幸せになるのだ。ヒューリアがルイスに残っているのは微かな恋慕と、恨みだけ。だから元から幸せになることなんて考えていないのだ。
考えているのは一つ、ルイスへの復讐の方法だけ。
「…ねぇ、ルイス様」
けれどその復讐の方法には、まだ沢山の役者が必要なの。
「なんだい?ヒューリア」
「私、ルイス様に会いに王城に行ってもよいですか?」
そう、カインという名前の…大切な、出演者が必要なのよ。
カインとはまぁ仲が良かったので、性格は知っている。とりあえずこちらの手の内にさせてもらえばいい。
「ダメだっ!!」
「………え?」
それまでにこやかだったルイスが、急に覚めたような目になる。
「…君を疲れさせてはいけない。私が会いに来るのでは嫌か?」
「……いいえ、ありがとうございます…」
ーーなるほどね。絶対に城へ行かせない気なの。その理由は分からないけれど、城に行かないとカインに会えないのよ!
(…早く段取りをつけないと…)
どんな顔をするだろう?
私は顔も素性も知らぬ女にまんまと婚約者を奪われた。では、ルイスの場合は?顔も素性も知っている、何よりも自分の兄。そんな人に自分の婚約者を奪われたら、どう思うだろう?
もちろん演出。カインは婚約者候補にあまりいい顔をしなかったので、形式上ならば婚約してくれるだろう。けれど私は家に迷惑なんてかけたくないから、カインが王になる前に婚約を破棄してすぐ、他の男と私は結婚する。
ねぇ、ルイス様。どうですか?
今は私のところへ来てくれるけれど。
絶望の味、よく噛み締めて下さいませー…。
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