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5,貴方も戻ったのですね…。
しおりを挟むルイスに急な会議が入ったと聞き、チャンスだと思ったヒューリアは出かける支度をした。
「ヒューリア様?どこへ行かれるのですか?」
心配そうに聞いてくる侍女に笑って言う。
「ルイス様にお会いしたいので、城へ行こうと思って。来て頂く時間はなくとも、少しくらいならばお会いする時間もあるでしょうから」
***
「ルイス王子は会議に出ておられます。しばらくお待ち下さい」
そう言い残してどこかへ行った従者を見送り、さて、と息をつく。
今の時間ならカインはどこかでブラブラしているのだろう。カインのサボり癖は呆れ果てるほど達者なとのだから。
ーーーと思いきや。
「…あ……」
…きたーーー。
「……あなたは…」
この世界のカインは私のことを知らないのよね。うまく丸め込まなくては……。
「ーーヒューリア…」
ーーーはい?
「えっと、あの…?」
何故!私の名を!知っている!!
「…あぁ、すまない。まだ君は僕のことを知らないのか」
切なげな表情を浮かべたカインに疑問しか浮かばない。
(今、何と仰いました?)
間違いなら有り難い。間違いでなくても有り難い。
「…カイン様…?」
もしも。もしもカインが、私のように時を越えて戻った人ならば。
「……ヒュー…リア……」
これほど有り難いことはあるだろうか。
「…一つお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「……いくつでも」
「もしかして、戻りました…?」
我ながらバカだとは思う。こんな聞き方しか出来ないなんて。
「…一年」
「!」
「目が覚めたら僕は、一年前に戻っていた。君が死んだ次の日の朝だ」
あぁ。やっぱり。
貴方も戻ったのですね…。
「…私も一年前からここへやって参りました。…お久しぶりでございます、カイン様。お元気であられましたか?」
「っ……ヒューリア…!」
「きゃっ」
いきなり抱き締めてくるカインの肩は震えていた。
「唯一の……ヒューリアが、唯一、私にとっての親友だったのだ……!」
「……カイン様…」
…そういえばカイン様は何故戻ってるの?
私は死んだから戻ったのだと思っていたけれど、別に死ななくても戻れたのかしら。
「…申し訳ございませんでした。ご安心下さい、もうこの世界で死のうとは思いませんから」
そう言うと、カインはホッとしたように手を離した。だが手は握ったままだ。
「本当だな?もう二度と、」
「何をしておられるのですか、兄上!!」
ーーーあ。
「ル、ルイス!」
「ルイス様っ…!」
大変。どこから見ていらしたのかしら。
「何故ヒューリアの手を握っているのです!お離し下さい!」
あ、来たばっかりなのね。
「ルイス様、」
「ヒューリア!!何故城に来ているのだ!来るなと言っただろう!?」
だから。何故来てはいけないのよ。
「…ルイス、やめないか。ヒューリア嬢を引き留めたのは私だ」
…カイン様、白々しいですわね。
「兄上!気でも触れられましたか!?ヒューリアは私の婚約者です!」
ハッ、何言ってるのよ。簡単に私を裏切ったくせに。婚約者だなんて。カインよりも白々しい。
「…ヒューリアとは昔からの知り合いだ」
「は?」
…は?
「昔、私が孤児院へ寄付をしに行ったとき、知り合った。まさかお前の婚約者がヒューリアだったとは」
カイン様。それ、この時間よりももう少し後のお話ですわね。
「孤児院?」
「そうだ。ヒューリアと私は親友のような…」
「それでも私の婚約者です。兄上と二人きりになってもしも噂が立てばどうなるかお分かりですか!」
私のためのようなことを言っているけれど、本当は自分の為なのでしょう?
「…ルイス様、私が軽率でしたわ。申し訳ございません。カイン様、また改めて正式な場でご挨拶致します」
そう言って会釈する。
『後でお離ししましょう』
そう口を動かすと、カインが頷いた。
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