婚約者を見限った令嬢は、1年前からやり直す。

伊月 慧

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8,怖いですわね。

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「これはどういうことだ?」

 にこやかな笑いと共に、ルイスが一つの封筒を持ち上げる。

「ルイス様、それは…」

 その封筒はヒューリアがカインに当てて書いたものだ。

「どうしてそれをお持ちなのですか…?」

 恐る恐る聞くと、ルイスがにこりと笑う。
 怖いですわね…。

「城にヒューリアの使いが来たからね、宛名はもちろん僕だと思っていたけれど。悪いと思いながらも中身を見せてもらったよ」
「ルイス様…!」

 何がどうしてこうなったのかしら…?







 その日、いつも通りにルイスは来た。前日にカインに手紙を書いたのだが、それは特に大したものではない。『時がきたらもう一度連絡差し上げます』と一筆書いた。
 まさかそれがルイスの手に渡るなんて。

「時とはなんだ。兄上と何の話をしている!」
「っ……」

 水の泡にはしたくない。だってようやく神様に与えられた復讐のチャンス。
 絶対に逃すものですか。

「ひ、酷いですわルイス様…!」
「…なんだと?」
「私はただ、カイン様とお話したかっただけですのに…!ルイス様がカイン様とお話してほしくないと仰るので、手紙を書いたのに……人の手紙を読むなんて!」

 どうだ、嘘泣き。ーーなんて考えながら顔をあげると、焦ったルイスの顔。

「わ、悪かった!勝手に手紙を見たのは謝る、頼む、泣かないでくれ…!」

 いいえ、チャンス。

「私はただ、カイン様が気にかけて下さるのが嬉しいだけですのに…!」

 なんてね。

「そ、そうか。悪かった!分かった、手紙だけならば何も言わない!」
「ルイス様…」


 決行は一週間後。一週間後、ルイスがこの邸にいるときにカインから婚約を申し込まれる。私は何も知らないフリをして、ただ驚く。
 きっと冷静ではないだろうルイスを横目に、カインが迎えに来る。私は返事をせず、考えさせてと言うのだ。考えている間、きっとルイスは気が気ではないだろう。

(私のことを考えて考えつくして、私をバカにした罪を償ってください…)

 こんなことを考えるくらい、私は彼を愛していたのだーー…。

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