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10,まさかの予感。
しおりを挟む「どういうことだ!」
顔を見るなり怒鳴ってくるルイスに思わず顔をしかめてしまう。
「ルイス様。いらっしゃっていたのですか」
カインと別れて邸に戻ると、ルイスがいたのだ。
「……私がいると都合が悪いのか。どこへ行っていた?」
「ルイス様?」
なんだろう、この違和感。
「兄上も街へ行くと言っていた。会っていたんじゃないのか!?」
ーーーえーーと…?
「ルイス様、何を仰られているのか分かりませんわ。私はただ…」
「兄上と手紙で会う約束をしたのだろう!」
どうして知っているのかしら。
あぁ、頭が痛い。夏の暑さにこんなにも苛立つ日が来るなんて。
「……ルイス様…」
ーーこれはいい機会ではないの?序盤を固めるためには…。
「確かに、カイン様とお会いしましたが…」
「やっぱりな!」
「ですがルイス様、カイン様とは偶然お会いしただけですわ。私は手紙に街へ行くと書きましたけれど、約束などしておりません。…私を疑っておられるのですか…?」
ジトリと視線をやると、ルイスは慌てたように取り繕った。
「違うんだ、疑っているわけでは…!」
「酷いですわっ…!」
「ヒューリア、頼む、話を聞いてくれ…!」
「私はカイン様が友になろうと言ってくださったのが嬉しいだけですのに!」
「と、友だと?」
「気を許せる友が出来たと、カイン様が喜んで下さって嬉しかったのにーー…ルイス様はお許しにならないのですね?」
楽しい。嬉しい。私に見向きもしなかったルイスが私のことで表情を変えるのが、とても楽しくて嬉しい。
その時だ。
「ヒューリア様、大変です!」
メイドが駆けてくる。
「あっ……ルイス、王子…」
気まずげなメイドの顔を見て分かる。カインが始めてくれたのだ。
「なんだ、どうかしたのか?」
「いえ、その…」
いいのよ、言っちゃって。
「なぁに?どうかしたの?」
「そ、その……カイン王子が、ヒューリア様を…その、婚約者として迎えたいと……」
「何だと!?」
あぁ、面白い。
「……なんですって?」
私は驚くだけでいい。
ルイスの信じられないという顔の隣で、戸惑うフリをするだけでいいのだから楽なものだ。
「あ、兄上が…?」
「まぁ、カイン様が…?」
と、その時だ。
「なんでだっ…!」
「え?」
なにが?
「今度はちゃんと防いだ!どうしてまた兄上に奪われるっ…!」
ーーーん?
「ルイス様?何のことですか?」
「君はまた兄上を選ぶのか!?」
「ま、また?」
何を言っているの?
「いつもそうだ、私の隣で笑うと言っておきながら、兄上に惹かれているのだろう!」
待ってください。私、そんなこと言っていませんが。
「ーーそうか、やはり君の涙などに流されるのではなかった!元から兄上の元へ行く気だったのだな!?」
「な、なんのことですか…?」
何を言っているの、この人は。分からない。
「いいか、もう君は僕の婚約者なんだ、勝手に離れることは許さない!!」
ーー気のせいかしら、嫌な予感。
もしかしたらまさか、ルイス様も戻っているのかも、みたいな…。予感…。
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