婚約者を見限った令嬢は、1年前からやり直す。

伊月 慧

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11,[カイン視点]変態ではない。

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 先程ヒューリアに婚約を申し込んだが……足音を聞こえた。

(あぁ、来たか)

「兄上、失礼します!」

 政務室へ断りなく入ってきた弟に、思わず顔をしかめてしまった。

「なんだルイス、勝手に入って来るでない。無礼だぞ」
「っ…申し訳、ありません…」

 先に言っておくが私は変態ではない。

 だがルイスの自分に屈服するこの姿はどうもゾクゾクして仕方ない。

 変態ではないぞ。別にそういう趣味があるわけでもなく、ルイスだけだ。多分この殊勝な顔付きが自分にとって歪むのがどうも気持ちよくて致し方ない。

「それで?何の用だ」
「まさか分からないわけではないでしょう!」

 確かにそうだが。それにしても、楽しい。ヒューリアも面白いことを考える。

「……ヒューリアのことか」
「それ以外に心当たりでもおありですか!!」

 今にも殴りかかってきそうなルイスだが、殴ればとうなるかぐらいは冷静に判断出来るらしい。

「何をそんなに怒っている。…あぁ、そうだ。確かにヒューリアはお前の婚約者だが…ヒューリアにはれっきとした兄がいる。お前がヒューリアと婚姻すれば揉めることは明らかだろう」
「私はヒューリアを愛しているのです!」

 ーーやっぱり、この弟がヒューリアを裏切るなど考えられない。ヒューリアは何か誤解をしているのではないだろうか。

「兄上、婚約の申し出をお取り消し下さい!」
「そう怒るな。……決めるのはヒューリアだろう。あぁなんだ、それとも…自信がないか?」
「兄上!!」

 確かにこの婚約の申し出で私が火を見ることは明らかだが。それでもヒューリアの手助けになるならば何だってしたいのだ。

 誰も知らない、鈍感な彼女も気付かない自分の気持ち。愛しているからここまで出来るのだと、きっと彼女は気付いてはくれない。それでいい。
 側にいられるなら、役に立てるなら何だっていいのだ。

「ヒューリアを愛しているから婚約を申し込んだ。それのなにが悪い」

 今、私はルイスに気持ちを教えた。これで隣に立つことになるのだ。

「悪いが…ヒューリアは貰う」

 あぁ、気持ちいい。

   

 …変態ではない。

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