さぁ、離縁して下さいませ。

伊月 慧

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結婚生活

解放されるために

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 精神的に追い詰められて我慢が出来なくなったシャルロットは、ゼスに離縁届を突きつけた。

「旦那様。サインをお願い致します」

 妻の欄には、シャルロットのサインが書いている。シャルロットはゼスにも書いてもらい、双方の両親にもサインしてもらうつもりだった。
 けれど、ゼスは鼻で笑った。

「離縁届、だと?なんの冗談だ」
「冗談等ではありません。お願いですから、もう私を解放してはくれませんか…」

 日に日にやつれていくシャルロットを、レイドル家にいた頃からシャルロットのそばにいた侍女のナカバは心配していた。

 苦しい思いも、痛い思いも、辛い思いも、もう嫌だった。どけだけシャルロットが我慢したところで、子供など出来なかった。これからも出来ることはないだろう。

「…ふん、そこまでして俺の気を引きたいか」

 夫のナルシストぶりは、四年間の結婚生活の中で嫌というほど分かったのでなにも言わない。

「どうとでも仰ってください。旦那様はまだ二十六、私も二十二になります。お互い、まだ新しく相手を探すことが出来ますわ」
「…なんだと?」
「私には子供は生めません。ハッキリ申し上げます。私は旦那様が大嫌いです。なので、旦那様の子を授かりたくもありません」

 さぁ、とペンをテーブルに置く。
 たが、ゼスは何か勘違いをしたようだ。

「…男か」
「はい?」
「男が出来たんだろう!ふざけるな!!」
「はい!?」
「夜会にいたあの男か!お前の再従兄だと?その割には互いに気を引き合っていたがな!」
「なっ…!ユーリお兄様は関係ありませんわ!」
「ははっ、よく言う!俺と別れて、あの男のところへいく魂胆なんだろう、この尻軽っ…!」
「旦那様!」

 なにを言っているの、この男は。
 そう、旦那様のいう通り。私はユーリお兄様を慕っている。けれどユーリお兄様はきっと、ルーラお姉様が好きなの。だってルーラは昔から、お兄様の前でだけは優しいお姉様、なんだもの。
 だからユーリお兄様のところへ行くなんて、あり得ない。そもそもユーリお兄様はルーラの婚約者。そんなことが許されるはずがないと、考えて分からないのかしら。

「言っておくが!俺だってお前のような女とは早く別れたい!だが、周りがそれを許さない!その馬鹿な頭で少しは考えるんだな!」
「旦那様…!」
「俺と早く別れたいのなら、さっさと子を成す努力でもするんだな!子供が出来たらすぐにでも、喜んでサインしてやる!」

 それが、初めて離縁届を突きつけた時だった。
 その日、シャルロットは決めた。
 解放されるために、私はどんなことだってしよう。そしてあと六年。結婚から十年経っても子供が出来ないときは、周りに頼み込んで離縁してもらおう。

 シャルロットにとって、別れる目処があるのはとてもありがたいことだった。
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