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別居生活
そのために
しおりを挟む私は自分が不幸な子供だったとは思っていない。裕福な家系に生まれ、優しい父を持った。自分で言うのはなんだけれど、容姿も悪くはないと思っている。
それだけで意地悪な義母と姉にプラマイでゼロよりも上だと思うし、お釣りが出ると思う。
けれどそれでも幸せだとは言い切れなくて、私がいつか結婚することがあったら…自分の子供は、胸を張って幸せだと言えるような環境で育てたいと思った。
「シャルロット様」
侍女のナカバが遠慮がちに聞いてくる。
「本当にこの家を出られるのですか?」
ナカバが心配しているのは、このまま私が逃げようとしているとでも思ったのだろう。
「ナカバ、私は何も逃げるためにここを出るわけではないのよ。…あの人から少し離れて、考えることが出来ただけ」
片親のいない貴族の子供がどれだけ悲惨な日々を送るかは知っている。実際、シャルロットが卒業した王国の国立学校ではそれに関するイジメが酷かった。
父親が亡くなっていない子はまだよかった。悲惨なのは、母親か父親に置いていかれた子供だった。
捨てられたのだと苛められ、蔑まれ、先生なんて役に立たなかった。上層階流に睨まれるのが怖くて見て見ぬふりをしていた。
私も弱くて、全てを止めることは出来なかった。
この子が、お腹の子が男でも女でも。周りから蔑まれるような環境に置きたくはない。
私はそのために、この子とあの家で、イルタナー家で幸せになる方法を見つけなければいけないのだ。
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