さぁ、離縁して下さいませ。

伊月 慧

文字の大きさ
19 / 47
結婚生活

別居

しおりを挟む

 シャルロットに別居を言い渡されたのは、その話した次の日だった。

「しばらく離れたいと思います」

 もう無理なのか、と思ったが、そんなゼイルドの顔を見てシャルロットが言い方を変える。

「このままここにいても、何も変わらないと思います。私にも考える時間が欲しいのです」
「…考える時間?」
「私は、…私は、ゼス様を愛したい」
「え…」

 今、俺のこと。

「一度貴方の元で幸せになろうと思ったのですから、私も貴方を愛おしいと思いたい。けれど私も思うところはあります。今まで通りの生活をいきなり変えるのは無理ですわ」

 気のせいか。

「……そうか。…なら、俺が…」
「ゼス様はここにいてくださいませ」

 あぁ、やっぱり。俺のことを、ようやく名前で呼んでくれるのか。

 シャルロットの全てが愛おしい。美しい黒い髪も、瞳も、彼女の全てが欲しい。

「…分かった」

 よくある話だ。別居を言い渡され、妻に出ていかれる。そのまま妻に逃げられた貴族の話は五万と聞く。

(例え、逃げられたとしても)

 ゼスと呼ばれただけで、俺はこんなにも幸せだった。
 だから大丈夫だ。…逃げられても、全ての権力を屈指して探し出せる。心折れたりする暇もなく、見つけるまでは寝ずにシャルロットを探し続けるだろう。

「…ありがとう、ゼス」

 ーーその時が初めてだった。人形のようにそっぽを向いて、目もロクに合わなかったシャルロットが初めて、ゼイルドに笑いかけた。

 そしてその顔で、分かった。シャルロットはゼイルドが考えているように逃げ出すために別居を言い渡したのではない。
 お腹の子供のために、ここで幸せになれる方法を探そうとしてくれたのだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

真実の愛を見つけたとおっしゃるので

あんど もあ
ファンタジー
貴族学院のお昼休みに突然始まった婚約破棄劇。 「真実の愛を見つけた」と言う婚約者にレイチェルは反撃する。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

処理中です...