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結婚生活②
過去へ囚われるのは
しおりを挟む「フィリア…」
まるで人形のように動かない彼女を見ると、身体が強張ってしまった。
「っ……」
あの、飛び降りる瞬間のフィリアの顔が脳裏に未だ焼き付いて離れない。
「……ゼス様。大丈夫です」
そう言って強張った手を繋いでくれるシャルロットがいるだけで、こうも強くなれる。
今日、ここに来れたのはシャルロットのおかげだった。
「…大丈夫だ。二人にしてくれ」
そう言うと、シャルロットは少し戸惑ったような顔をしてから、笑って部屋を出ていった。
「……フィリア、…先生」
呼び掛けにもちろん、返事はない。きっと永遠に目を覚ますことはないだろう。
「…先生が好きでした」
この気持ちを自覚するには、あの頃の俺は幼く、不器用だった。
「告白すればよかった。アンタなら、笑い飛ばして終わったんだろうけどさ」
想像して笑えてくる。
「俺、勝手かもしれないけどさ。多分もう、ここには来ない。そんで多分、アンタのこと忘れる。本当に最低だろうけど」
分かっているけれど、もう。
「もう、過去に囚われるのはやめます。…今度は…シャルロットはもう、傷付けません。…ありがとうございました」
フィリアを先生と呼んだことはない。きっとあれは俺なりの照れ隠しだった。
けれどもう、違う。感謝と謝罪を込めて。
「さようなら、先生。ありがとう」
今思えばフィリアは、俺を守ってくれたのかもしれない。伯爵家の長男でありながら問題を起こそうとした俺を庇ってくれたのかもしれない。
そう思うと、もう俺はここへは来ない方がいい気がした。
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