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本編
14日目~咲良side~
しおりを挟む昨日と同時刻。昨日大量に買った菓子は漫画を読みながら食べているといつの間にかなくなり、仕方なく…そう、仕方なく売店に買いに来たのだ。決して自分で望んだわけでは…ないのだ。まぁ、少しは望んだかもしれないけれど。
「あら、昨日の子」
昨日のあの光景を見ていたのか、昨日と同じ成り立ちでいた売店のおばさんに声をかけられる。
「いいの?お菓子いっぱい買っちゃって」
うー、聞かないで。
「えっと…あの、友達が来たときに出す分なんですぅ!」
よし、これだ。
「せっかく来てくれたのに何も出さないのは…と思って!」
煌夜を騙す時でさえ、少しの良心しか痛まなくなったのだ。知らないおばさんに嘘をついたところで、良心なんて存在しない。
おばさんはあら、そうなの、と笑って会計を済ませてくれた。
慎重に売店を出て、部屋へ戻るとき。
「ちょっと待って」
後ろから腕を掴まれる。
「えっ」
声から、湯島先生だと思った。
だからとっさに言った。
「昨日ちゃんと全部食べたもんっ!」
そして、相手の顔を見て思考が止まる。
頭の中が真っ白になった。
「……え?」
湯島先生とそっくりな声で、顔立ちで、雰囲気で。けれど湯島先生ではない。つまり。
「…湯島先輩…?」
「いやー、まさかまた会えると思わなかったよ」
「私もです」
咲良の病室まで送ると言った湯島先輩は、やはり昔と変わらない。
中学の時、委員会がなければ絶対に関わることがなかった雲の上の人。
「中学からそのまま俺のとこに上がる子、多いだろ?県外だけど、学力一番高いし。けど中西は別のとこ行ったんだな。結構ショックだった」
笑って言う先輩に、咲良も言う。
「先輩、私のこと覚えててくれたんですね」
「当たり前だろ。だって、…ほら、…」
「?」
「い、委員会。委員会で一番よく喋ってただろ!それに、煌夜とも幼馴染みって聞いてたし!」
そういえばそんな話もしたな、と思い出す。
「先輩はどうして病院に?」
「あー……ほら、あのさ、俺、兄さんがいてさ」
「湯島先生ですよね?」
「え、兄弟って知ってるの!?」
「えっと…中学の時に、湯島先生が言ってたから」
「マジか!ならあの時言ってくれれば良かったのにー!」
「実はあの時、先輩と話すのずっとビクビクしてたんですよ」
今だから言えることだが。
「先輩のファンだっていう女の子、多かったし。抜け駆けは禁止とかいう暗黙のルールがあって、私はまぁ…委員会で仕方ないって言われてましたけど」
それでも稀に、嫌がらせをされたりもしたけれど。
「そ、そうなのか?」
「はい。…あ、湯島先生に用事ですか?なら…」
「…違う」
「え?」
「昨日、兄さんと中西を見たから」
「あ、そうなんですか」
「兄さんがよく言う女の子ってのが咲良ちゃんだって分かって」
「はぁ…?」
何が言いたいのかいまいちよく分からない、と思うと、先輩が意を決したように告げる。
「中西のお見舞いに来た!」
しばらく、沈黙が流れた。
「わ、悪い、引いたよな!」
「…あ、いえ…ビックリしたけど、引いてはないです。ありかとうございます」
だから部屋まで送ると言ったのか、と納得する。
「あ、良かったらどうぞ。って言っても大したものは出せないけれど」
「あ、どうも…」
そして部屋に入る、と。
「どこ行ってたんだよ、咲良ー…」
ベッドの脇の椅子に座る、煌夜。先輩の顔を見た瞬間、固まった。
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