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本編
23日目
しおりを挟む「うっわぁぁあ!なにも変わんない!!」
入院してからなので久しぶりに入る煌夜の部屋に、咲良はほんの少しだというのに懐かしさを感じていた。毎日のようにお互いの家を往き来していては、それが日常になってしまっていたのだ。
「当たり前だろ、模様替えなんか早々しねぇよ。お前が元気になったら大掃除にこき遣ってやるから覚悟しとけ」
「分かった!煌夜のエロ本頑張って探すね!」
「阿呆」
びしりと頭を叩かれて、ぶえっと声を出す。可愛くないなんて言われて、怒って、拗ねて、笑って。
そんな当たり前のことが、当たり前だったことが嬉しいと思ってしまう。
いつまでこんな風に出来るのか分からない。いつ当たり前が当たり前じゃなくなるか、分からない。
「煌夜煌夜!!」
「今度はなんだよ?」
苦笑しながら振り向く彼に、ぎゅーっと抱き付く。
「……おーい、咲良さーん?」
「………」
「…さーくら」
「………」
「好きだよ」
「っ!」
いきなり何言ってるの、と突っ込みそうになったけれど、いきなり飛び付いたのは自分だ。
「…お肉食べたい」
「元気になったらな」
「それっていつ?」
「一ヶ月以内」
「期限がめっちゃリアルぅ」
「だろー」
どうでもいいような馬鹿話をして、また笑って、ただ抱き締める。
こんな時間が永遠に続けばいい。
「エロ本ないー」
「まだ言ってんのかよ」
「え、まさか持ってないの?E D なの!?」
「よっしお前、歯ぁ食い縛れ」
「えーー。でも浮気やめちゃったし、溜まってるでしょ?」
「じゃあお前で発散しとくか」
「あ、無理」
そういう雰囲気になって流される前に自分でストップをかける。
「湯川先生から激しい運動ダメって言われたから」
その途端、首を傾げた煌夜の顔がどんどんとニヤニヤに変わっていく。
「煌夜?とうとうおかしくなった?」
「いーや?別に?ーー激しい運動していいか、聞いたんだ?へー?」
「………ふあああああああああ!!!!!」
やってしまった!!しまった!!
「ち、ちがう!それはただ!!」
「ふんふん、俺としたかったんだ?へー?」
「違うから!!!」
この後数時間、このネタで弄られ続けたのは言うまでもない。ついでに言えば、数時間後に開き直って、
「そうだよ?煌夜にいっぱい触れられたいの」
と上目遣いで言うと、突然煌夜が素数を数え出したのはーー言わないと分からない話か、これ。
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