モブですが、婚約者は私です。

伊月 慧

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 レミーアのこれまでの人生は、平凡中の平凡、まさにモブといったところだろう。そんな私の唯一の非凡が、アスラーナと親友だということだった。アスラーナとは幼馴染であり、公爵令嬢と侯爵令嬢として、それなりに関係を築いてきた。
 だからか、国王の目に私が止まったのは。アスラーナはこのバカ王子の婚約をずっと断り続けていた。が、国王は次代の国王バカ息子のために、有力貴族の婚約者を作っておきたかったのだ。そこで私が駆り出されたのだが。
(まさか、アスラーナを婚約者と思ってこんな騒ぎを起こすとは思わなかったわね…)
 さてどうしたものか。このバカ王子以外は、婚約者は私だということを理解している。…否、バカ王子とバカ男爵令嬢以外は。
 けれど呼ばれてもいないのに出て行く必要もないだろう。しばらくは正義感の強いアスラーナの正論を楽しむとしよう。


「レミーアは私の親友です。例え学園中で噂になろうと、レミーアは強く辛抱しておりました。なのにあろう事か、貴方はそんなレミーアの存在を知らなかったと?何故自分の婚約者を理解していないのです!」
「う、うるさい!私の婚約者はお前だ!」
「何を仰っているのですか?私には正式な婚約者がおります。妄想も甚だしい」
「誰に向かって口を聞いている!己の行いを恥じよ!!」
「もしも私が殿下の婚約者であったとしても、恥じる行為をしているのは殿下だと、ここにいる誰もが思うでしょう。このような場で騒ぎを起こし、婚約者を置き去りに、貴方と何の関係もない私に有りもしない婚約を破棄し、そこにいる下劣な女と不貞を働いたと、公言したものではないですか」
「下劣な女って私のことっ!?ひっどぉい!ねぇ、殿下!聞きました!?私のことっ!」
「やめないか!お前の心の醜さをこれ以上私の前に晒すな!」
「先程、私がその令嬢を虐めたと言いましたが。その証拠とは?」
「はぁ?アンジェリカが言っているのだ、それが立派な証拠だろう!」
 そこまでの会話を黙って見ていたレミーアだったが、レミーアに限らず会場の人間の大半がため息をついた。何を言っているのか、このバカ王子は。
「物証はあるのかと聞いているのです。そもそも私と彼女は接点がありません。たかが男爵令嬢と公爵令嬢であるこの私が関わる意味などございませんが」
「なっ!殿下、私のことまた男爵令嬢って馬鹿にしました!」
 そんなアンジェリカと名乗る男爵令嬢に、バカ王子が口を開く前にアスラーナがにこりと笑う。
「たかが男爵令嬢という言葉が出ただけでバカにされていると思うのは、貴女が男爵令嬢だということを自分で恥じているからね。そもそも貴族ともあろう者が、常識も弁えず、婚約者がいると分かっている男性に近付くなど何事です?少しは自分の行いを恥じなさい」
「お前っ!まだアンジェリカを愚弄するか!」
「愚弄などしておりませんが。そもそもこの私が一人の男爵令嬢を愚弄したところで何の咎もありませんが?」
「なんだと!お前は人道に外れた行為を…」
「殿下こそ、レミーアという婚約者がいるにも関わらず、不貞を働くなど、人道に外れた行為をなさるものですね」
「私はいいのだ!私は王子だぞ!?」
「ではその男爵令嬢は?私を貶してまさか、無事で済むとは思いませんわよね?いいえ、私だけではありません。レミーアの誇りまで傷付けたのです。これは決して許されることではありません」
「なんだと!アンジェリカは王妃になるのだ!」
「そうですよっ!私が王妃になったら貴女なんかすぐに殺せちゃうんですからねっ!」
 安心しろ、と言いたくなる。真っ青な顔で現れた国王様の手によって、アンジェリカが王妃になることは永遠にないからね。
 さて、ここからが見せ場ですかね。
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