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しおりを挟む静まり帰った部屋で、レミーアもアゼルも、何も言わなかった。
(時間を作れと言ったのはそちらなのに…)
目を伏せながら、レミーアは心の中で皮肉を言う。今から言われるであろうことが分かっているので、こんな時間は苦しいだけだ。
最も、アゼルの為ならどれだけ忙しくても時間を作ってみせるけれど。
これはつい昨日聞いた話だが、アゼルが公爵令嬢ーーというには歳がかなり上だが、公爵家の者と会っていたという。
「…その、君に言いたいことがあって」
「はい」
このやり取りは実に、十二回目である。
ファミールに捨てられるどころか認識すらして貰えなかった時でさえ、ここまで苦しくなかったというのに。
「…その、言いにくいことなんだけど」
「はい」
大丈夫ですから、話してください。分かってますから。そう口に出せたらどれほどいいのか分からないけれど、返事以上のものをすれば、涙が溢れてしまう。
そんなことを考えていると、部屋にメイドが入ってきた。誰も入るなと言ったのに何かあったのかと視線を向けると。
「レミーア様、ラード様がお待ちでございます。約束をしていたとか」
ラード?約束?
真っ白な頭で考えて考えて、ようやく考え付く。
先日、アスラーナの事で相談があるから時間を作れと言われた気がする。私もアスラーナのことで聞きたいことがあり、了承したのだ。すっかり忘れていた。
「すぐに行くわ。お茶をお出ししておいてね」
「承知しました」
頭を下げて出て行ったメイドの後ろ姿を見送ってから、アゼルが口を開いた。
「…ラードが何故君に会いに?」
確かにレミーアに用があってこの屋敷に来るのは少ない。いや、全くと言っていいほどないだろう。
「(アスラーナのことで)私に話があると。私も(アスラーナのことで)ラード様に伝えたいことがあって」
「…なに?」
少し表情を険しくしたアゼルだったが、目を伏せていたレミーアは全く気付いていない。
「……それで、話の続きだが。君と、」
婚約を解消したい。そう言われてしまったら立ち直れない。立ち直れないどころの話ではない。
そもそも高望みした私がいけなかったのだけれども。
「私との婚約を解消して下さいませ」
気が付けば口から滑り落ちていた。自分から終わらせることが出来たなら、まだ大丈夫だと思ったから。それにアゼルも、言い難い一言を言わずに済んだだろう。
「では、これで失礼します。ラード様が今頃まだかと苛立っているでしょうから」
「……」
何も言わないアゼルに、レミーアは目を合わせることが出来なかった。
扉の向こうに出てから泣いてしまいそうになったけれど、ラードに会うのだから、と気を引き締める。
私のように冴えない女が一時の夢を見られただけでも、感謝するべきなのだ。
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