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しおりを挟む折角レミーアが黄を引き締めて部屋へ入ったというのに。
「なんだ、その不細工な顔は」
ラードは作られた笑みを見透かして、ため息をついた。
「アゼルが来ていたらしいな。私の方が先約だったと思うのだが」
「…忘れていたものですから」
「随分と失礼なことを言う女だ。で?」
「?」
「何があった」
その言葉に耐え切れなくなり、レミーアは涙を零してしまった。
「…私が泣かせているような図が出来上がっているのだが」
「事実でしょう」
「私は聞いただけだ」
聞いただけ。言いたいなら言えばいい、と呟いたラードにまた涙を零してしまった。誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。レミーアはゆっくりと先程までの出来事を話し始めた。
「馬鹿なのか」
一通り話し終えたレミーアに、ラードは鼻で笑った。
「なっ」
馬鹿に馬鹿と言われて心外だという事と、自分が馬鹿にされるなんて信じられなかった。
「私はアゼル様のために、」
「アゼルの為だと言うならばちゃんと向き合って話してこい」
ビシリと頭を叩かれる。話し合うも何も、もう終わったことだ。
「…私は、もういいんです」
「……へぇ。私はお前のそういう、偽善者のようなところが大嫌いだな。面倒だ、今日は帰らせてもらう」
「えっ、アスラーナのことで話があったのでは」
「偽善者と話すことなど何もない」
偽善者?私が?偽善者、偽善者、偽善者…。
「……貴方に何が分かるのよ!!」
思わず殴ってしまう。令嬢らしかぬ行為でも、この際許していただきたい。
「何も知らないくせにそんなこと言わないで!!」
「痛い!痛いって!!」
ガクガクと襟首を掴んで揺すぶったレミーアはもう、どうすればいいのか分からなかった。
「…こんなにも、好きなのに…」
好きだから迷惑をかけたくなくて。なのにこの人はそれを偽善だと言う。
「…貴方はアスラーナしか見てないくせに、知ったような口を聞かないでよ…」
私の気持ちなんて誰も分かっていない。分かるはずもない。だって口にしたことがないのだから。
「私はただ、側にいるだけで良かった。権力も地位も名声も何もいらない、ただ、好きなだけなのに…」
「…泣くなよ。悪かった」
ラードがポンポンと頭を撫でる。
「…行かないでって言いたいのに」
「言えばいいだろ」
「困るでしょう?」
「お前のことで困ることなんかねぇよ」
「嘘ばっかり」
ようやく涙が止まったレミーアを見て、ラードが安心したように笑った。
「嘘じゃねぇよ」
「本当に?言っていいの?」
もう帰ってしまっただろうか。アゼルが言いたいことをちゃんと聞けば良かった。そして、私も。言えば良かった。
「当たり前だろ。ちゃんと言え」
アゼルともう一度話そう。そう決意した、その時だった。部屋の扉が勢いよく開き、たった今会いに行こうと決意したその人が立っていたのは。
「そういうことだったんだな」
「「え?」」
何が起こっているのだろう。というかまだ帰っていなかったのか。安心と疑問。
頭が真っ白になった次の瞬間。
隣に立っていたラードが、壁まで吹っ飛んだ。
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