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 和樹との離婚届が受理されて、半年が経った。

 その間に香織と陽一の関係は変わっていた。


 その一つは、陽一が転職したことだ。何でも親戚の会社にずっと誘われていたらしい。身内ということもあり、とても待遇がいいとか。そのことに香織は安堵していた。和樹と同じ会社でなくなるのだから、もう接点もないのだ。

 そして陽一は香織と二人で住むための家を買った。それも、香織の実家から割と近くだ。

「お義父さんとお義母さんが近くにいる方が、香織も安心だろ?」

 そんな気遣いを見せてくれる陽一に感激してしまう。まぁ、ここまではいいのだけれど。

「…あっ」
「え?」

 綺麗なレストランで食事をした帰りだ。

「忘れてた」
「なにを?」

 きょとんとした香織に、和樹が気まずげに言ってきた。

「ーー俺と結婚してください」

 そうしてポケットから指輪を出したその場所は、路上の真ん中。道行く人が足を止め、こちらを見ていた。

「わ、忘れてたって…」
「さっきのレストランでプロポーズする予定だったんだよ…」

 ごめん、と頭を下げる陽一に笑ってしまった。
 レストランでは料理に夢中になっていたので、プロポーズされるかもと期待した自分が恥ずかしかったけれど。

「陽一さん、本当ぬけてる」
「ご、ごめん…」
「ーーでもね、すごく嬉しいっ!」

 道の真ん中だし、人が見てるし。どうかと思ったけれど、抱きついてしまった。

「私でよければ、お願いしますっ…!」

 ドクンドクンと心臓の音が聞こえる。どちらの心臓かは分からないけれど、鳴っているのは確かだ。

「…やった…!」

 香織を抱き締め返した陽一に、道行く人が拍手する。中には野次馬根性に口笛を鳴らす人もいた。とても恥ずかしかったけれど、これもいい思い出だ。



***


「香織、出来たか?」
「陽一さん」

 部屋に入ってきた陽一は白いタキシードに身を包んでいる。

「綺麗だな」

 そう呟いた陽一に、香織が思わず顔を赤らめた。

「そういうことは口に出さないで!」
「わ、悪い」

 今日、私は二度目の結婚をする。


 
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