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畦道での話
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まぶたの奥で、わずかに意識が揺れる。光さえ差し込まない目。それでも、感覚でわかる。見える。聞こえる。
私は動かない。動けない。ただそこに、忘れ去られ、雨風に晒され続け、苔むしり、薄汚くなるだけの存在になり果てている。そんな私の前に、その子が現れた。
ああ、なんと愛らしい
感覚で、その童の愛らしさはわかる。
いつもここで立ち止まり、こちらを見上げている。
その無垢で真っ直ぐなまなざしが、なんと羨ましいことよ。
無垢なまなざしは私に向いているのではない。
「かわいいなあ」
童の口が動く。それは、薄汚い獣に向かって囁く声だ。言葉だ。私に向けられたものではない。
ああ、口惜しい。
泥臭いこの獣に送るものがなぜ私には向けられないのか。
なぜ、わたしを見てはくれないのか。
獣が、大きく口を開く。童の無垢な言葉を食らい、私に届かぬようにしているつもりなのだ。守り神のつもりなのか。無駄なことを。童のにおい、鼓動の音、体温。それらを消し去ろうと。
毎日、毎日、童がここを通る度に、警告しているつもりなのだ。
立ち去れ、と。
幾度、そうして警告を発しても、童には届いていないというのに。。
いずれ、その無邪気な好奇心が、一歩を埋める。獣などより、私の方が強いのだ。未練も、執着も、この地に枝を、根を、伸ばしている。
薄汚い獣ごときに、守れるものか。
あれは、私の――だ。
あと少し、あと一歩でいい。こちらに寄れ。
(そう、一歩。たった一歩でよい)
ジャリッと地面を擦る音。
カッと獣が目を見開く。だが、――もう遅い!!
「わぁ! 可愛い……!!」
声が、においが、鮮明に届いた!!
「あ」
その声と、獣の一声が空に沈んだ。
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