異世界と現実世界が融合してしまったので、復元しようと思います。

月海水

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第41話 塔の中の会話

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『竜弥さま。テリアさまは管理塔の十階、そのワンフロアを貸し切ってお住まいになられております。ただいま、魔導リフトを向かわせておりますので少々お待ちください』

 竜弥の手の中で拳大の石型魔導品が、『サポーター』の声に合わせて明滅を繰り返す。

 竜弥と、ふて腐れ気味のユリファは応接室を出て、魔導リフトがやってくるのを待っていた。

「ありがとな、『サポーター』。案内までしてくれて」

 竜弥が魔魂通信用の石型魔導品にそう声をかけると、

「……仲良さそうね~」

 と、頬をぷくっと膨らませたユリファが白い目を向けてきた。

「お前、そうしてると、おもちゃ買ってもらえなくて拗ねてる子供にしか見えないな」

「あ、ひどいっ! なんてこと言うの!」

 さらに大きく頬を膨らませて、ユリファの幼い顔は種を頬張ったハムスターみたいになる。

「あのさ、今話題が出たから、この際前々から思ってたこと聞いていいか?」

「……? なによ」

 急にすっと神妙な面持ちになった竜弥に対して、ユリファは怪訝そうな視線を向けた。

 実は竜弥にはずっと気になっていたことがあるのだ。

 見た目は幼女そのもののユリファだが、今までの言動は子供のそれとは思えない。

 だからこそ、生じた疑問。

「――もしかして、ユリファってその……ロリババアって奴なのか? 見た目と違って、何百年も生きてる類の」

 その瞬間、竜弥には世界が凍り付いたかのように感じられた。

 鋭い冷気が辺り一面を満たし、ユリファは俯いてしまって表情が見えない。

『……竜弥さま。それはさすがにデリカシーの欠片もない発言かと』

『サポーター』の声も、そこはかとなく引き気味だ。

「竜弥……あなた……そんなこと思ってたの……」

 ぼそっとユリファが呟く。小さな身体が怒りでわなわなと震えていた。それはアールラインの一般人であれば、恐怖で卒倒するような光景だろう。

「いや、だってほら、本当だったらまだ無邪気に外を駆け回って遊んでる頃だろう――」

「――死にたいのね?」

 ユリファが怒りで真っ赤になった顔をゆっくりと上げる。

 その双眸はキッと竜弥を睨みつけており、身体からはうっすらと魔魂の黒光が漏れ出している。

 明らかな脅威が竜弥の眼前に存在した。
 彼は頬をひきつらせて、精一杯の笑顔を作る。

「ユ、ユリファ……その、一回話し合わないか?」

「わたしたちの間に、もう対話は必要ないわ」

『乙女の敵ですね』

 いつの間にか二対一になっていた。

 ユリファの抑えきれなくなった魔魂の光が、フロアに放出されていく。

 竜弥の笑顔は恐怖で固まってしまって、大量の冷汗が顔面を濡らしていく。

「ま、待て……いや、待ってください!」

「あら?」

 竜弥の眼前、三大魔祖と恐れられる幼女は、今までに見たことのないほど妖艶な笑みを口元に浮かべて。

「なぜ、待つ必要があるのかしら?」

 その後、黒光によって作られた無数の光弾が、死ぬギリギリのところまで竜弥の身体に叩きこまれた。



「わたしは正真正銘、見た目に見合った時間しか生きていないわよ」

 上昇する魔導リフトに乗って、ユリファは呆れたようにそう言った。

 彼女の視線の先には、リフトに横たわった状態で、全身に刻まれた傷を魔魂により急速修復中の竜弥がいる。

「いてえ……辛い……」

 生傷はほぼ修復されたものの、まだ節々が痛い。

 疑問を投げかけたことを心底後悔しながら、竜弥はやっと少し落ち着いたユリファへと視線を向ける。

「にしては、思考や発言が大人びてないか?」

「確かに人間で考えたらそうでしょうね。でも、わたしは三大魔祖の一人。有形高位存在だからね。人間よりも早く知能が発達するのよ」

「そういうもんか。見た目は人間と同じだけど、別の種族なんだもんな。ユリファは」

「そういうこと」

 魔導リフトが十階に到達して、転落防止用に周囲に展開されていた筒状の魔魂の壁が消滅する。竜弥はまだ頼りない足取りでよろよろとフロアへと踏み出した。
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