42 / 63
第41話 塔の中の会話
しおりを挟む
『竜弥さま。テリアさまは管理塔の十階、そのワンフロアを貸し切ってお住まいになられております。ただいま、魔導リフトを向かわせておりますので少々お待ちください』
竜弥の手の中で拳大の石型魔導品が、『サポーター』の声に合わせて明滅を繰り返す。
竜弥と、ふて腐れ気味のユリファは応接室を出て、魔導リフトがやってくるのを待っていた。
「ありがとな、『サポーター』。案内までしてくれて」
竜弥が魔魂通信用の石型魔導品にそう声をかけると、
「……仲良さそうね~」
と、頬をぷくっと膨らませたユリファが白い目を向けてきた。
「お前、そうしてると、おもちゃ買ってもらえなくて拗ねてる子供にしか見えないな」
「あ、ひどいっ! なんてこと言うの!」
さらに大きく頬を膨らませて、ユリファの幼い顔は種を頬張ったハムスターみたいになる。
「あのさ、今話題が出たから、この際前々から思ってたこと聞いていいか?」
「……? なによ」
急にすっと神妙な面持ちになった竜弥に対して、ユリファは怪訝そうな視線を向けた。
実は竜弥にはずっと気になっていたことがあるのだ。
見た目は幼女そのもののユリファだが、今までの言動は子供のそれとは思えない。
だからこそ、生じた疑問。
「――もしかして、ユリファってその……ロリババアって奴なのか? 見た目と違って、何百年も生きてる類の」
その瞬間、竜弥には世界が凍り付いたかのように感じられた。
鋭い冷気が辺り一面を満たし、ユリファは俯いてしまって表情が見えない。
『……竜弥さま。それはさすがにデリカシーの欠片もない発言かと』
『サポーター』の声も、そこはかとなく引き気味だ。
「竜弥……あなた……そんなこと思ってたの……」
ぼそっとユリファが呟く。小さな身体が怒りでわなわなと震えていた。それはアールラインの一般人であれば、恐怖で卒倒するような光景だろう。
「いや、だってほら、本当だったらまだ無邪気に外を駆け回って遊んでる頃だろう――」
「――死にたいのね?」
ユリファが怒りで真っ赤になった顔をゆっくりと上げる。
その双眸はキッと竜弥を睨みつけており、身体からはうっすらと魔魂の黒光が漏れ出している。
明らかな脅威が竜弥の眼前に存在した。
彼は頬をひきつらせて、精一杯の笑顔を作る。
「ユ、ユリファ……その、一回話し合わないか?」
「わたしたちの間に、もう対話は必要ないわ」
『乙女の敵ですね』
いつの間にか二対一になっていた。
ユリファの抑えきれなくなった魔魂の光が、フロアに放出されていく。
竜弥の笑顔は恐怖で固まってしまって、大量の冷汗が顔面を濡らしていく。
「ま、待て……いや、待ってください!」
「あら?」
竜弥の眼前、三大魔祖と恐れられる幼女は、今までに見たことのないほど妖艶な笑みを口元に浮かべて。
「なぜ、待つ必要があるのかしら?」
その後、黒光によって作られた無数の光弾が、死ぬギリギリのところまで竜弥の身体に叩きこまれた。
「わたしは正真正銘、見た目に見合った時間しか生きていないわよ」
上昇する魔導リフトに乗って、ユリファは呆れたようにそう言った。
彼女の視線の先には、リフトに横たわった状態で、全身に刻まれた傷を魔魂により急速修復中の竜弥がいる。
「いてえ……辛い……」
生傷はほぼ修復されたものの、まだ節々が痛い。
疑問を投げかけたことを心底後悔しながら、竜弥はやっと少し落ち着いたユリファへと視線を向ける。
「にしては、思考や発言が大人びてないか?」
「確かに人間で考えたらそうでしょうね。でも、わたしは三大魔祖の一人。有形高位存在だからね。人間よりも早く知能が発達するのよ」
「そういうもんか。見た目は人間と同じだけど、別の種族なんだもんな。ユリファは」
「そういうこと」
魔導リフトが十階に到達して、転落防止用に周囲に展開されていた筒状の魔魂の壁が消滅する。竜弥はまだ頼りない足取りでよろよろとフロアへと踏み出した。
竜弥の手の中で拳大の石型魔導品が、『サポーター』の声に合わせて明滅を繰り返す。
竜弥と、ふて腐れ気味のユリファは応接室を出て、魔導リフトがやってくるのを待っていた。
「ありがとな、『サポーター』。案内までしてくれて」
竜弥が魔魂通信用の石型魔導品にそう声をかけると、
「……仲良さそうね~」
と、頬をぷくっと膨らませたユリファが白い目を向けてきた。
「お前、そうしてると、おもちゃ買ってもらえなくて拗ねてる子供にしか見えないな」
「あ、ひどいっ! なんてこと言うの!」
さらに大きく頬を膨らませて、ユリファの幼い顔は種を頬張ったハムスターみたいになる。
「あのさ、今話題が出たから、この際前々から思ってたこと聞いていいか?」
「……? なによ」
急にすっと神妙な面持ちになった竜弥に対して、ユリファは怪訝そうな視線を向けた。
実は竜弥にはずっと気になっていたことがあるのだ。
見た目は幼女そのもののユリファだが、今までの言動は子供のそれとは思えない。
だからこそ、生じた疑問。
「――もしかして、ユリファってその……ロリババアって奴なのか? 見た目と違って、何百年も生きてる類の」
その瞬間、竜弥には世界が凍り付いたかのように感じられた。
鋭い冷気が辺り一面を満たし、ユリファは俯いてしまって表情が見えない。
『……竜弥さま。それはさすがにデリカシーの欠片もない発言かと』
『サポーター』の声も、そこはかとなく引き気味だ。
「竜弥……あなた……そんなこと思ってたの……」
ぼそっとユリファが呟く。小さな身体が怒りでわなわなと震えていた。それはアールラインの一般人であれば、恐怖で卒倒するような光景だろう。
「いや、だってほら、本当だったらまだ無邪気に外を駆け回って遊んでる頃だろう――」
「――死にたいのね?」
ユリファが怒りで真っ赤になった顔をゆっくりと上げる。
その双眸はキッと竜弥を睨みつけており、身体からはうっすらと魔魂の黒光が漏れ出している。
明らかな脅威が竜弥の眼前に存在した。
彼は頬をひきつらせて、精一杯の笑顔を作る。
「ユ、ユリファ……その、一回話し合わないか?」
「わたしたちの間に、もう対話は必要ないわ」
『乙女の敵ですね』
いつの間にか二対一になっていた。
ユリファの抑えきれなくなった魔魂の光が、フロアに放出されていく。
竜弥の笑顔は恐怖で固まってしまって、大量の冷汗が顔面を濡らしていく。
「ま、待て……いや、待ってください!」
「あら?」
竜弥の眼前、三大魔祖と恐れられる幼女は、今までに見たことのないほど妖艶な笑みを口元に浮かべて。
「なぜ、待つ必要があるのかしら?」
その後、黒光によって作られた無数の光弾が、死ぬギリギリのところまで竜弥の身体に叩きこまれた。
「わたしは正真正銘、見た目に見合った時間しか生きていないわよ」
上昇する魔導リフトに乗って、ユリファは呆れたようにそう言った。
彼女の視線の先には、リフトに横たわった状態で、全身に刻まれた傷を魔魂により急速修復中の竜弥がいる。
「いてえ……辛い……」
生傷はほぼ修復されたものの、まだ節々が痛い。
疑問を投げかけたことを心底後悔しながら、竜弥はやっと少し落ち着いたユリファへと視線を向ける。
「にしては、思考や発言が大人びてないか?」
「確かに人間で考えたらそうでしょうね。でも、わたしは三大魔祖の一人。有形高位存在だからね。人間よりも早く知能が発達するのよ」
「そういうもんか。見た目は人間と同じだけど、別の種族なんだもんな。ユリファは」
「そういうこと」
魔導リフトが十階に到達して、転落防止用に周囲に展開されていた筒状の魔魂の壁が消滅する。竜弥はまだ頼りない足取りでよろよろとフロアへと踏み出した。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる