クリエイタースキルを使って、異世界最強の文字召喚術師になります。

月海水

文字の大きさ
3 / 86

第3話 魔王じゃないから!

しおりを挟む
 120体のアンデッドたちに命令を出した俺は、その後、周辺調査を兼ねて、拠点建設地区より東の森林へと足を向けていた。

 数体の骸骨を引き連れて探索した結果、東の森林にはモンスターのようなものは生息しておらず、代わりに木の実などの食物類が大量にあることがわかった。

 モンスターに関してはそもそも、この世界に存在するのかどうかもまだわからない。

 俺が生み出した奴らはあくまで俺が作り出した存在であり、この世界に原住するモンスターとはまた別種のものだからである。

 鳥の鳴き声は森に入ってからずっと絶えないから、小動物の類は生息しているらしい。あるいは、姿を見せないその鳥もモンスターの一種なのかもしれないが。

「私たちは食事をしないので、これらの木の実は召喚主さまがお召し上がりください……」

 森林の中央、少し開けた場所に腰を下ろして休憩している途中、一匹の骸骨におそるおそるそんなことを言われて、俺はまた一つ大きな事実に気付いた。

「そうか、飯もいらないのか。大規模な戦闘になったら、兵糧もなくていいってことだな。やっぱり強いな……。何か他にデメリットは?」

「特にありません……」

 恐縮したように骸骨は俯き、それ以降、口を開こうとしなかった。

『地獄骸』によると、最底辺であるD級モンスターからすれば、俺は神をも超越する存在なのだそうだ。

 それはそうだ。アンデッドを束ねる神的存在はSS級に設定してあり、彼らの言う通りなら、俺の立場はSS級よりも上なのだから。

「でも、これからどうするか。目標も特にないしなあ」

 それが一番の悩みだった。

 勇者として転生したならば、魔王を倒すという目標がある。

 だが、残業中にただ転移してきた一般人の俺には、目標などあるはずがない。

 だが、こうして自分の生み出したモンスターと会話をすることができるのは、とても興味深い経験だった。

 今回はたまたま、一緒に転移してきた紙資料が文字召喚を発動したが、一から仕組みを学び、その技術を極めてもいいかもしれない。

「この世界で最強の文字召喚術師を目指してみようかな。けっこう、熱中できそうだし」

 昔から、創作することは大好きだった。

 学生時代から趣味として小説などを書き、ゲーム会社に就職した。

 それはずっと熱中していた創作を仕事にしたかったから。
 
 だが、仕事としてこなすのは趣味とは別だった。今の仕事に熱中できているかと聞かれたら、俺は答えを濁すだろう。

 だからこそ、こんな世界に来てしまったのだから、自分の好きなものを好きなだけやれたらいいと思う。

「うん。最強の文字召喚術師……面白そうだ」

 少しだけ、心が晴れた気がした。



「――それで、なんなのこれは?」

 馬鹿すぎて怒る気にもならない。

 東の森林から拠点建設地に戻った俺が見たのは、大量の骨でできた五階建てくらいの建造物が出来ていた。

 元の世界の尺度だと、かなりの大豪邸といった感じ。

「はっ。まだ仮のものではありますが、邪悪な存在に相応しい居城を用意いたしました。骸骨型モンスター『雑魚と呼ばれる死後』の能力『骨生成』を使って大量の骨素材を用意、その後、それらを組み上げ、高位モンスターたちの粘液や魔法を活用して、建造物を仕上げました」

「いや、そんなのはどうでもいいんだけどさ」

 俺は目の前にそびえたつ大豪邸を見上げて。

「どう考えても目立つんだけど……」

 と、大きく息をついた。

 東の森林を出た時からまさかとは思っていた。さっきまで明らかに存在していなかった白い謎の物体が視界には入っていたが、考えないようにしていた。

 だが結局、それは暗黒の民によって建造された俺の居城であり、そしてそれは、とってもとっても目立つ。

 草原にない白色、丘の上、超豪邸、周囲は見晴らしが良い。
 物件的には最高だ。俺にとっては最悪だが。

「この建造物を見て、討伐隊とか来たらどうするつもりなんだ?」

 怒る気力も怒らず、疑問を投げかけると、

「滅します」

 即答。『地獄骸』は迷うことなく即答した。

「あー、そういう思考か~~」

 もうこれ、完全に魔王じゃない? 魔王が手下に拠点作らせて、町襲おうとしているようにしか見えないんだけど。

「悪いけど、こんなとこ誰かに見られる前に一度、その大豪邸を破壊して――」

 と、俺が指示を出そうとした時。

「ひぅ……!」

 背後から、小さく怯えるような声が聞こえた。

 柔らかく、愛らしい声質。どうやら女の子のようだ。……ん?

「女の子……?」

 そんなもの、120体の召喚モンスターの中にいなかったはずだ。

 ということは……ついに恐れていたことが……。

 俺がおそるおそる振り返ると、そこにはやはり、女の子がいた。

 愛らしい大きな瞳に、小振りな桜色の唇。茶色の髪は肩にかかる程度で、草原のそよ風で毛先が小さく揺れている。

 白を基調としたブレザーのようなものを着ていることもあり、年齢は若く見えた。日本でいうと高校生くらいだろうか。全体的に発育がいいのか、胸部はかなりジャケットが盛り上がって強調されていた。

 スカートも短く、そこからすらりと伸びた白く細い足に一瞬、視線を奪われる。が、俺は強い精神力でなんとか視線を彼女の顔へと戻した。

「ひぅぅ……」

 情けない声を出して、後ずさりする彼女。

 丸い瞳には遠慮なく涙を浮かべている。身体は大きく震え、今にでもこの場から逃げ出しそうだ。

 だが、足も竦んでいるせいで動けないらしい。

 俺は、彼女に完全に怖がられていた。

 後ろにじりじりと下がった彼女は、地面に転がっていた石に気付かず、「きゃっ」とその場に尻餅をつく。

そして、絶望した表情で言う。

「ま、魔王……!」

「魔王じゃねえ!」

 ほら! 誰でも絶対に勘違いするよ、この状況は!

「ひゃ、百体以上のアンデッドを文字召喚して使役するなんて、この世の存在とは思えない……お師匠だって、十体のモンスターを召喚するのでせいいっぱいだったのに……」

 逃げられない状況を悲観したのか、目からだーっと涙を流しながら、彼女は目をこすりこすりそう呟いた。その口ぶりから文字召喚を知っていることがわかる。

 ちょうどいい。文字召喚については詳しいことを知りたかったのだ。文字召喚について彼女から聞き出し、この辺でちゃんと知識を整理しておくのもいいだろう。

 俺はぺたんと尻餅をついたままの彼女に近寄って、手を差し出す。

「ほら、立て」

「……え? あなた、悪い人じゃないの?」

「言っただろ。俺は魔王でもないし、ただの一般人だよ」

 そう告げてもしばらく、彼女は座り込んだまま目を白黒させていた。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

処理中です...