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第4話 見習い召喚術師
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「わ、わたし、召喚宮殿に仕える見習い召喚術師のレーナといいますっ!」
目の前に正座で座っている女の子がいる。
彼女は冷汗だらだら、こっちまでかしこまってしまうほどの緊張感の中で自己紹介をしてくれた。
なぜそんなに空気が重いかというと、彼女はまだ俺のことを魔王だと思っているからである。
「それで……優しい魔王さま!」
「魔王に優しいも優しくないもないから!」
「じゃあ……優しくない魔王さま?」
「そもそも魔王じゃないから!」
どこをどう見たら、俺のことを魔王だと思えるのだろう。
服装にしても、会社のオフィスから直接転移したので、白いシャツにスーツの下という完全サラリーマンスタイルである。
どこからどう見ても一般人。ただの冴えない若者である。
だが。
「そ、その服装、高位の召喚術師さまなんですよねっ? そして、魔王を兼任している……」
「どうしてそうなる」
しかし、レーナと名乗った彼女の服装を観察すると、少しだけ理解できる気もした。
彼女の服装はブレザーの制服。それが召喚宮殿とやらの装束だとするなら、シャツやスーツで構成された俺の外見も、似たようなジャンルではある。
「レーナ。もっと落ち着いてくれていいぞ。そっちがそこまでガチガチだと、俺も気を張ってしまうからな」
「は、はい……」
現在、俺はルーナと二人、アンデッドたちが作ってくれた大豪邸――名前はマジで暗黒城というらしい。究極的にダサい――二階の居間で対面していた。
モンスターたちが全員、屋内に入ってくると邪魔なので、彼らには外で拠点作りを進めてもらっている。簡単な塀と門を要望しておいた。
暗黒城の外観は骨を継ぎ合わせたような奇怪なものだったが、どういう作りなのか、内装は日本で見るお金持ちの屋敷と変わらない。
向かい合った対の応接ソファまであり、あらためて120体のモンスターの力というものを知る。
一日でこれほどの物ができるとは思っていなかった。120体の中にはS級、A級のモンスターも多く、特殊能力持ちもいる。
その辺りがこの製造速度に影響を与えているのかもしれない。
「で、レーナはなぜここに来たんだ?」
俺が問うと、びくっと肩を震わせてから、レーナが話し出した。早く慣れてほしいものだ。
「わ、わたしは王都にある召喚宮殿から近くの村に派遣されていたんですけど、その村の人から、突然草原の丘の上に見慣れない建物が出現したって報告を受けて……」
やっぱり簡単に見つかっていた。
あとで『地獄骸』を叱りつけないといけない。
「それで調査のために来てみたんですが、そしたら怖いモンスターがたくさんいて……」
がくっと項垂れるレーナ。そこまで絶望した態度をしなくても、と俺は苦笑いする。
「ま、心配するな。俺も配下のモンスターも、レーナには絶対に手を触れないよ」
「それも不思議なんです。アンデッド系のモンスターなんて会うことも珍しいし、彼らは基本的に本能のままに生者を襲いますから」
やはり、レーナを暗黒城に招いたのは正解だったようだ。
彼女はこの世界の常識を知っている。
俺も『地獄骸』たちもこの世界には疎いのだ。
配下のモンスターたちは、自分を生み出した文字召喚については知っていたが、この世界自体の情報は持っていなかった。
そこに異世界人であるレーナの登場。これは情報を集めるいい機会だ。
「なあ、話を戻すが、お前は文字召喚師、なんだよな?」
「はいっ。わたしは召喚宮殿所属の文字召喚師です。一番下位の見習い召喚師なんですけどね。えへへ」
照れたようにはにかむレーナは可愛かった。少し朱に染まった頬は柔らかそうで、指でつついてみたくなる。
「じゃあ、文字召喚については詳しく知っているよな? 俺はまだ何も知らないんだ。外の奴らはたまたま召喚できただけ。よければ、細かいことを教えて欲しい」
その言葉を聞いて、レーナは驚いたように目をまん丸にした。
「文字召喚を知らないんですか!? そんな……。何も知らないで120体も召喚できるはずが……」
そう言われても、一瞬で120体が目の前に現れたのは事実だ。
彼らが俺を召喚主と呼ぶことからも、俺が主体となって召喚したことは確実である。
「じゃあ、文字召喚を実際にやってみましょうか。もしかしたら、わたしが教えられることなんて、シュウトさまにとっては文字召喚を知るうちに入らないかもしれないですが……」
「そんなことはない。ぜひ頼むよ!」
本物の文字召喚師による、本物の文字召喚。
それをこれから見せてくれると言う。俺は期待を込めた視線でレーナを注視する。
「あ、あんまり見ないでください。恥ずかしいですから……」
そう言って、顔を赤らめてそっぽを向くレーナも可愛い。
そして、彼女はすっと目を閉じた。
さっきまでの緊張感はふっと消え、集中しているのが伝わってくる。
俺はごくりと唾を呑んだ。
これはとんでもないモンスターが召喚されるのでは……。
彼女は集中を終えたのか目を大きく開く。すると、その瞳は赤く輝いた。
彼女が右手を宙にかざすと、何もない空間から光と共に羊皮紙と万年筆が現れる。
彼女は万年筆を手に取り、羊皮紙にさらさらと文字を書きつけていく。
その姿はとても格好いい。どんなモンスターが召喚されるのか楽しみだ。
記述を終えたのか、彼女は文字を書くことをやめ、書いた文字列を指でなぞった。
すると、書きつけられた文字たちが、レーナの瞳の色と同じ赤に輝いた。
いよいよ、モンスター召喚か! と、両手を握りしめ、派手な召喚術を期待する俺。
だが――いくら待っても、モンスターが出てくる気配はない。
「あれ、これなに待ち?」
「なにって、顕現待ちですよ」
「顕現待ちってなに?」
「モンスターを召喚するには、記述した文字列を指でなぞり、対応した属性の祈りを捧げる必要があるんです。その祈りがモンスターを顕現させるまで、時間がかかるんですよ。ちなみにわたしは火の属性の祈りしか使えません。召喚宮殿のものすごく偉い高位召喚術師さまなら、三属性は使えると思いますけど」
「対応した属性の祈り……? そんなもの使った覚えがないな」
「まさか~それはないですよ。そんなことができたら、召喚宮殿が大騒ぎになっちゃいます」
俺が冗談でも言っていると思ったのか、あははーと笑い飛ばすレーナ。
だいぶ慣れてきたようで何よりだ。しかし、彼女の言葉がどうにも引っかかる。
「で、顕現待ちはまだ?」
「え?」
俺が当然の質問をすると、レーナは何を言っているんだというように聞き返してきた。
どうも会話が噛み合わない。なんだか怖い。
「あと何秒でモンスターが出てくるか、知りたいんだけど……」
そう訊ねた俺の言葉に、レーナは驚きの答えを返してきた。
そしてそれは、この世界における俺の存在位置を決定づけるものとなる。
「え? 何言ってるんですか? 顕現まで、あと三十分はかかりますよ?」
目の前に正座で座っている女の子がいる。
彼女は冷汗だらだら、こっちまでかしこまってしまうほどの緊張感の中で自己紹介をしてくれた。
なぜそんなに空気が重いかというと、彼女はまだ俺のことを魔王だと思っているからである。
「それで……優しい魔王さま!」
「魔王に優しいも優しくないもないから!」
「じゃあ……優しくない魔王さま?」
「そもそも魔王じゃないから!」
どこをどう見たら、俺のことを魔王だと思えるのだろう。
服装にしても、会社のオフィスから直接転移したので、白いシャツにスーツの下という完全サラリーマンスタイルである。
どこからどう見ても一般人。ただの冴えない若者である。
だが。
「そ、その服装、高位の召喚術師さまなんですよねっ? そして、魔王を兼任している……」
「どうしてそうなる」
しかし、レーナと名乗った彼女の服装を観察すると、少しだけ理解できる気もした。
彼女の服装はブレザーの制服。それが召喚宮殿とやらの装束だとするなら、シャツやスーツで構成された俺の外見も、似たようなジャンルではある。
「レーナ。もっと落ち着いてくれていいぞ。そっちがそこまでガチガチだと、俺も気を張ってしまうからな」
「は、はい……」
現在、俺はルーナと二人、アンデッドたちが作ってくれた大豪邸――名前はマジで暗黒城というらしい。究極的にダサい――二階の居間で対面していた。
モンスターたちが全員、屋内に入ってくると邪魔なので、彼らには外で拠点作りを進めてもらっている。簡単な塀と門を要望しておいた。
暗黒城の外観は骨を継ぎ合わせたような奇怪なものだったが、どういう作りなのか、内装は日本で見るお金持ちの屋敷と変わらない。
向かい合った対の応接ソファまであり、あらためて120体のモンスターの力というものを知る。
一日でこれほどの物ができるとは思っていなかった。120体の中にはS級、A級のモンスターも多く、特殊能力持ちもいる。
その辺りがこの製造速度に影響を与えているのかもしれない。
「で、レーナはなぜここに来たんだ?」
俺が問うと、びくっと肩を震わせてから、レーナが話し出した。早く慣れてほしいものだ。
「わ、わたしは王都にある召喚宮殿から近くの村に派遣されていたんですけど、その村の人から、突然草原の丘の上に見慣れない建物が出現したって報告を受けて……」
やっぱり簡単に見つかっていた。
あとで『地獄骸』を叱りつけないといけない。
「それで調査のために来てみたんですが、そしたら怖いモンスターがたくさんいて……」
がくっと項垂れるレーナ。そこまで絶望した態度をしなくても、と俺は苦笑いする。
「ま、心配するな。俺も配下のモンスターも、レーナには絶対に手を触れないよ」
「それも不思議なんです。アンデッド系のモンスターなんて会うことも珍しいし、彼らは基本的に本能のままに生者を襲いますから」
やはり、レーナを暗黒城に招いたのは正解だったようだ。
彼女はこの世界の常識を知っている。
俺も『地獄骸』たちもこの世界には疎いのだ。
配下のモンスターたちは、自分を生み出した文字召喚については知っていたが、この世界自体の情報は持っていなかった。
そこに異世界人であるレーナの登場。これは情報を集めるいい機会だ。
「なあ、話を戻すが、お前は文字召喚師、なんだよな?」
「はいっ。わたしは召喚宮殿所属の文字召喚師です。一番下位の見習い召喚師なんですけどね。えへへ」
照れたようにはにかむレーナは可愛かった。少し朱に染まった頬は柔らかそうで、指でつついてみたくなる。
「じゃあ、文字召喚については詳しく知っているよな? 俺はまだ何も知らないんだ。外の奴らはたまたま召喚できただけ。よければ、細かいことを教えて欲しい」
その言葉を聞いて、レーナは驚いたように目をまん丸にした。
「文字召喚を知らないんですか!? そんな……。何も知らないで120体も召喚できるはずが……」
そう言われても、一瞬で120体が目の前に現れたのは事実だ。
彼らが俺を召喚主と呼ぶことからも、俺が主体となって召喚したことは確実である。
「じゃあ、文字召喚を実際にやってみましょうか。もしかしたら、わたしが教えられることなんて、シュウトさまにとっては文字召喚を知るうちに入らないかもしれないですが……」
「そんなことはない。ぜひ頼むよ!」
本物の文字召喚師による、本物の文字召喚。
それをこれから見せてくれると言う。俺は期待を込めた視線でレーナを注視する。
「あ、あんまり見ないでください。恥ずかしいですから……」
そう言って、顔を赤らめてそっぽを向くレーナも可愛い。
そして、彼女はすっと目を閉じた。
さっきまでの緊張感はふっと消え、集中しているのが伝わってくる。
俺はごくりと唾を呑んだ。
これはとんでもないモンスターが召喚されるのでは……。
彼女は集中を終えたのか目を大きく開く。すると、その瞳は赤く輝いた。
彼女が右手を宙にかざすと、何もない空間から光と共に羊皮紙と万年筆が現れる。
彼女は万年筆を手に取り、羊皮紙にさらさらと文字を書きつけていく。
その姿はとても格好いい。どんなモンスターが召喚されるのか楽しみだ。
記述を終えたのか、彼女は文字を書くことをやめ、書いた文字列を指でなぞった。
すると、書きつけられた文字たちが、レーナの瞳の色と同じ赤に輝いた。
いよいよ、モンスター召喚か! と、両手を握りしめ、派手な召喚術を期待する俺。
だが――いくら待っても、モンスターが出てくる気配はない。
「あれ、これなに待ち?」
「なにって、顕現待ちですよ」
「顕現待ちってなに?」
「モンスターを召喚するには、記述した文字列を指でなぞり、対応した属性の祈りを捧げる必要があるんです。その祈りがモンスターを顕現させるまで、時間がかかるんですよ。ちなみにわたしは火の属性の祈りしか使えません。召喚宮殿のものすごく偉い高位召喚術師さまなら、三属性は使えると思いますけど」
「対応した属性の祈り……? そんなもの使った覚えがないな」
「まさか~それはないですよ。そんなことができたら、召喚宮殿が大騒ぎになっちゃいます」
俺が冗談でも言っていると思ったのか、あははーと笑い飛ばすレーナ。
だいぶ慣れてきたようで何よりだ。しかし、彼女の言葉がどうにも引っかかる。
「で、顕現待ちはまだ?」
「え?」
俺が当然の質問をすると、レーナは何を言っているんだというように聞き返してきた。
どうも会話が噛み合わない。なんだか怖い。
「あと何秒でモンスターが出てくるか、知りたいんだけど……」
そう訊ねた俺の言葉に、レーナは驚きの答えを返してきた。
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