12 / 86
第12話 『地獄骸』の実力
しおりを挟む
「やってしまえ、警備兵諸君!」
村長の号令が村の入り口に響き渡る。
それと同時、剣や槍を持った警備兵たちが投げやりな雄叫びと共に、俺たちへと突っ込んできた。
「これマジでシャレにならないぞ……」
動揺する俺を、相手は待ってくれない。
アンデッドたちの先頭に立っていた俺が、まず初めに攻撃を受けることは必然だった。
俺と同年代くらいの青年が恐怖を瞳に宿らせて、手に持った槍を一直線に突く。
その切っ先は、俺の鼻先をかすめた。
一筋、傷口から血が流れ落ち、それにより大きな反応をしてみせたのは、攻撃を受けた俺自身ではなく、背後のアンデッドたち。
低音の唸り声のようなものが幾重にも聞こえ、俺はそちらに視線を向けると、目を見開く。
そこにあったのは、主を傷つけられて憤怒に身を落としたアンデッドの姿だった。
「お前ら、落ち着け!」
俺は槍を持った青年から後ずさり、十分に距離を取った。
相手の勘違いとはいえ、実際に俺が攻撃を受けてしまったのは良くなかった。
主が傷ついたとなれば、通常好戦的なアンデッドたちの枷を解き放ちかねない。
対話を優先することにも限界はある。
一番言いつけをよく守る『地獄骸』でさえ、その身体には見たことのない邪悪な黒いオーラを纏っていた。
レーナはアリカに手を引かれて、集団の後方へと避難したようだ。その判断は賢明である。
この世界の文字召喚術師はその性質上、リアルタイムの交戦が苦手だ。実際の戦場でも、後方で召喚に徹するのが普通なのだと思う。
「早くあの召喚術師をやってしまえ! そうすれば、奴の軍は崩壊するだろう」
そう喚く村長の瞳は恐怖で曇っていた。それもそうだろう。彼には現状が見えていない。
たとえ、俺を倒したところでこのアンデッドたちは逆上して襲い掛かるのみだ。
むしろ、アンデッドたちの暴走をせき止めている俺がいなくなれば、この村は壊滅してしまうだろう。
剣と槍で武装した十数人の警備兵たちがじりじりと間合いを詰めてくる。
完全無傷の決着はどうやら難しそうだ。
ならば、最低限の武力で相手の武装を解除させるしかない。
俺は目配せで『地獄骸』をそばへと呼んだ。
「ご指示を。召喚主」
『地獄骸』は俺が行動を起こすことを悟ったようで、最少の言葉で返答をする。
つくづく、良い配下だ。……って、この発想がもうほぼ魔王なんだけれど。
ともかく、俺は久しぶりに真面目な顔して命令する。
「いいか。戦意のある村人から戦闘能力を奪え。だけど、絶対に殺すな。重傷を負わせるな。最高の戦績は全員無傷であることを覚えておけ」
「やむを得ない場合は、どこまで負傷させても大丈夫でしょうか?」
そんな責任重大な質問、してこないでほしい……。
「あーまあ、全治一日くらいだったらいいんじゃない? 後遺症残るようなのはなしで」
すまん、村人たち。あんたたちが先に攻撃してきたのが悪いってことで、一つ許して欲しい。
「かしこまりました」
恭しくお辞儀をする『地獄骸』。
そして、彼は次の瞬間、村の入り口上空十メートルほどの高さへと跳躍した。
「えーー! そんな飛べたの!?」
真顔を崩して、素直に驚く俺。
それは村人たちも同じだ。
『地獄骸』が八つの手を握り締めると、その手の平に黒い光が収束し、八つの剣が顕現する。
あー、そんな設定あったわと思っていると、彼は猛スピードで落下し、着地の激しい衝撃波で周囲の警備兵を全て吹き飛ばした。
思っていた以上にS級モンスターの戦闘能力は凄まじいようだ。
警備兵たちは全員、近くの地面に弾き飛ばされて、呻き声を上げている。
あれ、大丈夫? 骨いってない? と心配になるが、見た目でそこまで重傷そうな人はいなかった。それでいて、起き上がれるほど元気な者もいない。
『地獄骸』は俺の命令通り、確かにちょうどいい塩梅で戦闘を終わらせてみせたのだ。
すげえな、あいつ。
警備兵が全滅したのを目の当たりにして、善良な村人たちは悲鳴を上げる。信じられないと言った目で俺を非難するように見てきた。
俺は初めから戦う気がないと言っているのに、なんでこっちが悪者になるんだ……。
村長は腰を抜かしたようで、地面に尻餅をついていた。
俺もそろそろこの茶番に付き合ってはいられないので、少し威圧した態度を作って、彼に告げる。
「あの、すいません。とりあえず、俺の話をきちんと、正確に、聞いてもらえますか?」
『地獄骸』の動きの後では効果もてきめんだったのだろう。
完全に怯えきった村長はようやく、俺の平和的な言葉の前に首を縦に振った。
村長の号令が村の入り口に響き渡る。
それと同時、剣や槍を持った警備兵たちが投げやりな雄叫びと共に、俺たちへと突っ込んできた。
「これマジでシャレにならないぞ……」
動揺する俺を、相手は待ってくれない。
アンデッドたちの先頭に立っていた俺が、まず初めに攻撃を受けることは必然だった。
俺と同年代くらいの青年が恐怖を瞳に宿らせて、手に持った槍を一直線に突く。
その切っ先は、俺の鼻先をかすめた。
一筋、傷口から血が流れ落ち、それにより大きな反応をしてみせたのは、攻撃を受けた俺自身ではなく、背後のアンデッドたち。
低音の唸り声のようなものが幾重にも聞こえ、俺はそちらに視線を向けると、目を見開く。
そこにあったのは、主を傷つけられて憤怒に身を落としたアンデッドの姿だった。
「お前ら、落ち着け!」
俺は槍を持った青年から後ずさり、十分に距離を取った。
相手の勘違いとはいえ、実際に俺が攻撃を受けてしまったのは良くなかった。
主が傷ついたとなれば、通常好戦的なアンデッドたちの枷を解き放ちかねない。
対話を優先することにも限界はある。
一番言いつけをよく守る『地獄骸』でさえ、その身体には見たことのない邪悪な黒いオーラを纏っていた。
レーナはアリカに手を引かれて、集団の後方へと避難したようだ。その判断は賢明である。
この世界の文字召喚術師はその性質上、リアルタイムの交戦が苦手だ。実際の戦場でも、後方で召喚に徹するのが普通なのだと思う。
「早くあの召喚術師をやってしまえ! そうすれば、奴の軍は崩壊するだろう」
そう喚く村長の瞳は恐怖で曇っていた。それもそうだろう。彼には現状が見えていない。
たとえ、俺を倒したところでこのアンデッドたちは逆上して襲い掛かるのみだ。
むしろ、アンデッドたちの暴走をせき止めている俺がいなくなれば、この村は壊滅してしまうだろう。
剣と槍で武装した十数人の警備兵たちがじりじりと間合いを詰めてくる。
完全無傷の決着はどうやら難しそうだ。
ならば、最低限の武力で相手の武装を解除させるしかない。
俺は目配せで『地獄骸』をそばへと呼んだ。
「ご指示を。召喚主」
『地獄骸』は俺が行動を起こすことを悟ったようで、最少の言葉で返答をする。
つくづく、良い配下だ。……って、この発想がもうほぼ魔王なんだけれど。
ともかく、俺は久しぶりに真面目な顔して命令する。
「いいか。戦意のある村人から戦闘能力を奪え。だけど、絶対に殺すな。重傷を負わせるな。最高の戦績は全員無傷であることを覚えておけ」
「やむを得ない場合は、どこまで負傷させても大丈夫でしょうか?」
そんな責任重大な質問、してこないでほしい……。
「あーまあ、全治一日くらいだったらいいんじゃない? 後遺症残るようなのはなしで」
すまん、村人たち。あんたたちが先に攻撃してきたのが悪いってことで、一つ許して欲しい。
「かしこまりました」
恭しくお辞儀をする『地獄骸』。
そして、彼は次の瞬間、村の入り口上空十メートルほどの高さへと跳躍した。
「えーー! そんな飛べたの!?」
真顔を崩して、素直に驚く俺。
それは村人たちも同じだ。
『地獄骸』が八つの手を握り締めると、その手の平に黒い光が収束し、八つの剣が顕現する。
あー、そんな設定あったわと思っていると、彼は猛スピードで落下し、着地の激しい衝撃波で周囲の警備兵を全て吹き飛ばした。
思っていた以上にS級モンスターの戦闘能力は凄まじいようだ。
警備兵たちは全員、近くの地面に弾き飛ばされて、呻き声を上げている。
あれ、大丈夫? 骨いってない? と心配になるが、見た目でそこまで重傷そうな人はいなかった。それでいて、起き上がれるほど元気な者もいない。
『地獄骸』は俺の命令通り、確かにちょうどいい塩梅で戦闘を終わらせてみせたのだ。
すげえな、あいつ。
警備兵が全滅したのを目の当たりにして、善良な村人たちは悲鳴を上げる。信じられないと言った目で俺を非難するように見てきた。
俺は初めから戦う気がないと言っているのに、なんでこっちが悪者になるんだ……。
村長は腰を抜かしたようで、地面に尻餅をついていた。
俺もそろそろこの茶番に付き合ってはいられないので、少し威圧した態度を作って、彼に告げる。
「あの、すいません。とりあえず、俺の話をきちんと、正確に、聞いてもらえますか?」
『地獄骸』の動きの後では効果もてきめんだったのだろう。
完全に怯えきった村長はようやく、俺の平和的な言葉の前に首を縦に振った。
0
あなたにおすすめの小説
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる