クリエイタースキルを使って、異世界最強の文字召喚術師になります。

月海水

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第23話 ギルダム大峡谷

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 暗黒城の西に位置する大きな峡谷、それはギルダム大峡谷と呼ばれていた。

 接している草原からみると、いきなり地面がなくなっているように見えるほど、峡谷地帯の大地は大きく裂けており、その幅は200メートルほど。

 その峡谷を越えた向こう側が、ギルダム中央村を襲撃してきたアルガリンガン帝国の領土である。

 遠くに広がる広大な大地。

 俺はそれを大地の亀裂のすぐそばに立って、感嘆しながら眺めていた。

「圧巻だな、こりゃ……」

 こちらも草原もかなりの広大さを誇るが、向こうの荒野もどこまでも広がっている。

 そして、目の前の峡谷の底はとても深い。こんな規模の風景、前の世界では簡単に目にすることはできない。

「召喚主、そろそろ先に進みましょう。日が暮れてしまいます」

 荷車から顔を出してそう言ったのは、『地獄骸』だった。

 確かにもう日が傾き始めている。俺は頷くと、新たに召喚したモンスター『魔地まちを駆ける馬』が曳く荷車の中に戻った。

 荷車の中は四畳ほどのスペースがあり、椅子が設置されている。

 先に乗っていたのは、レーナ、アリカ、『地獄骸』の三人だ。

『魔地を駆ける馬』は魔力を持っており、荷車の重量を軽減するという特殊効果がある。

 ゲームの主人公たちの移動速度を上げるための補助モンスターというコンセプトで召喚してみたが、やはり現実で使っても便利な奴である。

 巨大な荷車をものともせず、かつ高速で、『魔地を駆ける馬』は崖沿いに走っていく。

 ギルダム中央村の村長の情報だと、どこかに峡谷の底に下るための道があるという。

 そして、目的の村はその底にあるらしい。

 どうしてこんな辺鄙な場所に、とも思うが、実際あるのだから仕方がない。

「ぜーんぜん、見つかりませんねー。通り過ぎちゃったんですかね?」

 レーナは荷車の窓から顔を出して、ずっと外をきょろきょろと見回していたが、やがて飽きたようにふわぁ~と欠伸をして、

「もう風景楽しみましたし、そろそろ飽きちゃいました~ひま~」

 と、やる気なさすぎることを言ってのけた。俺は無言でレーナの頭をぺしっと叩き、外の様子を見る。

「辺りが暗くなってきましたね。これでは、本当に道を見逃してしまいそうです」

 そうやって、ひょっこりと顔を近づけてきたのはアリカ。

 彼女も外を見ているのだが、同じ窓から覗いているせいでほぼ密着状態である。

 彼女の長い髪が、ドキドキしている俺の腕にさわっ、と触れて、俺はびくっと情けなく震えてしまった。

「……どうかしました?」

「いや、ちょっと密着しすぎかと」

「別にいいじゃないですか。ほら、私はもっと近づいてもいいですよ?」

 そう言って、アリカは華奢な肩を押しつけてくる。ああ、なんかいい匂いするわ…………じゃねえ! 危ない、もう少しで虜にされるところだわ!

 というか、レーナに対してもアリカの愛着度合いというか、距離感は若干変だし、俺に対してもそれは同様だ。

 一度、好きになったものに結構依存するタイプなんじゃ……と、アリカを危険で魅惑的な女認定しかけていると、

「召喚主。この暗さでは確かに問題があります。何か発光するモンスターを呼び出してはいかがですかな?」

『地獄骸』がいきなり真面目なトーンで話しかけてきて、「はぃぃ!?」と変な返事をしてしまった。

「……あー、そうだな。やってみよう」

 俺は調査にここに来ているのである。

 弟子たちとラブコメしている場合ではないのだ。

 アリカから身を離すと、彼女はえー、と不満げに口を尖らせたが、俺が魔法具を出現させると、いつもの冷静な表情に戻ってその様子を見守る。こういう聞き分けのいいところは素直に可愛い。

 必要なモンスターの条件を頭の中で整えて、俺は魔法の羊皮紙に記述していく。
 完成した文字列を指でなぞり、祈りを捧げて、顕現。


灯籠とうろう代わりのほのお精霊せいれい』D級。
 全身が燃え盛っている火属性の小型使役精霊。
 魔法によって身体を消すこともできるので、明かりが必要な場所で、照明としてオンオフする形で使用することができる。戦闘能力はない。


 赤色の光と共に荷車内に出現したのは、五匹の『炎精霊』。D級モンスターなので、クリエイトゲージの減りは微々たるものだった。

 全員が人型で背中から羽を生やしている。

 愛くるしい瞳をしており、みんな可愛い笑顔を浮かべていた。だが、その身体は篝火のように激しく燃え、辺りを一瞬で明るくする。

「ふわあああああっ!! 可愛い!!」

 レーナが愛くるしい『炎精霊』に抱きつこうとするが、彼らはするり、とそれをかわして俺の前に集まる。

 避けられたレーナは荷車の壁に激突し、「ぐへっ」と女子が出してはいけないような声を漏らして、大人しくなった。

「ご主人さま、わたしたちはなにをすればいいですかー?」

『炎精霊』の中のリーダー的な存在が、レーナの惨状に構わず、俺にそう訊ねてきた。

 どうやら、精霊たちは召喚主以外にあまり興味がないようだ。俺は苦笑いしながら、指示を出す。

「『炎精霊』たちにはこの荷車の周囲を照らしてほしい。できるだけ明るく。お願いできるか?」

「もちろんですよー! おまかせ下さい!」

 そう頷いた『炎精霊』たちは窓から一斉に飛び出していく。

 すると、陽がほぼ落ちて、闇に満ち始めていた周囲が、急激に明るさを増した。これならば、道を満足に探すことができる。

「ありがとう、精霊たち! その調子で頼む」

 俺は上機嫌になってそう言った。

 確かに周囲は明るくなり、道も見つかりそうだった。

 だが、この行動が結果的にどんな厄介事を引き寄せるのか、この時の俺はまだわかっていなかったのだ。
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