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第60話 聖巨人
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階段を降りた先には、再び通路が続いていた。
だんだんと警備が厳重になり、ある程度進む度に魔法バリアの張られた小さな扉が現れる。
オルビークの解除技術の前には、全く意味を為さない扉ではあるが、その数の多さが最深部に近づいているという証拠だ。
俺たちは強く緊張感を持って、闇の先へと進む。
そうして、ようやく大部屋に出た。
上の階の、たくさんの通路と繋がっていた大部屋と同じ構造になっている。
広さもほぼ同じだが、この大部屋には、奥の壁に一つ鉄扉があるだけだった。
「ここが最深部……」
俺の声は震えていた。
やっと、ここまで辿り着いた。
俺は思わず、最後の扉に駆け寄っていく。
大部屋に入っても、何かが起こる様子はない。部屋の中央を過ぎて、もうすぐ扉に手が届く。
『地獄骸』を失ってから、俺はこの時だけを思い描いていたのだ。
これでようやく、平和な日々が訪れる。
よかった、俺はもうこれ以上、誰も傷つけずに済む――。
鉄扉に手をかけようとした時だった。
ものすごい速度で『邪神剣』の操る左腕が背後を向こうとする。
左手の強力な方向転換に、身体全体が引っ張られ、何事かと思った瞬間。
目の前に、俺の身体以上に巨大な鉄の拳が迫っていた。
『ちっ! ぼうっとすんな! 召喚主ッ!』
『邪神剣』は激しい罵倒の言葉と共に、その刀身で拳を受け止める。
『邪神剣』を守るように、邪悪な闇の光が渦巻き、折れる寸前のところで巨大な拳を受け流した。
『さっさと距離を取れッ! 次が来る!!』
俺は急いで、その場を離れる。
腕が大きすぎて敵の全貌がよくわからないが、どうやら俺は大部屋の中心に出現した謎の巨人によって、仲間と分断されてしまったようだ。
もう片方の鉄剛腕が振り下ろされることを警戒していた俺だったが、二撃目は予想外の攻撃方法だった。
正面から俺に向けて放たれたのは、聖なる光の弾丸。
『天使翼』の攻撃と同種のものだ。
アリカがさっき説明していた単語に置き換えると、聖属性の攻撃。
素早く身をかわして、俺は弾丸を回避する。
が、今度は鉄の巨拳が再び迫りくる。
俺が上を見上げると、敵の全貌がようやく視界に入った。
天井ギリギリのところに大きな鉄の顔があった。
その表情は険しく、何かに激怒しているような表情で完全に固定されている。
鉄の像に生命が吹き込まれたようなモンスターだ。
だが、特筆すべき点はそこではない。
彼の大きな右手は直接俺を攻撃しているが、その左手からは聖なる光弾を出現させ、攻撃に使用しているのだ。
巨人の左手は、俺と反対方向に向けられた。
その狙いは、アンデッドたちだ。
多数の聖なる光弾が放たれ、それを撃ち落とすために『地獄射手』が闇を生み出し、矢に変換しようとするが――
「グォォォォォッ!!!」
巨人が突然咆哮したかと思うと、聖なる白の衝撃波が部屋中に広がった。
それと同時、『地獄射手』の闇は霧散し、大量の光弾がアンデッドたちの群れに着弾する。
アンデッドたちの悲鳴が上がり、統制に混乱が生じた。
「……こいつ、鉄属性じゃなく、聖属性の召喚モンスターか!?」
地上階にいた有象無象の文字召喚術師たちの使役していたモンスターは、鉄か獣だった。
聖属性を操るモンスターは初だ。
闇の無力化能力、それは大半がアンデッドで構成された俺たちの戦力にとって、早急に対処しなければならないものだった。
「闇を生み出す能力は使うなッ! またかき消されるぞッ!」
俺は配下たちに向かって叫ぶが、彼らの混乱は広がっており、収拾がつかなくなっている。
好転しない状況に俺が歯噛みしていると、
「あはははははははッ!」
大部屋全体に、不快な哄笑が鳴り響いた。
声のした方向を見ると、いつのまにか巨人の足元近くに、一人の男が立っている。
細長い瞳を持ち、やけに赤黒い唇はにやりと歪んでいた。
長い髪は床につくほど伸びており、引きずる形になっている。
男の肌は全体的に血色が悪く、まるで幽霊のような、嫌な空気を周囲に作り出していた。
さっきまでは確かに気配を感じなかった……ということは、気配消失の魔術が用いられていたのだろう。
だが、オルビークが何かを察知した様子もなかった。
俺がそんな疑問を一瞬、顔に表したことに気づいた男は、「ああ」と何かを納得した様子に頷いた。
「私の気配消失魔術が、きみたちなんかに見破れると思っていたのかね? なんだかねえ、浅慮だよねえ。この地に足を踏み込む段階でわかっていたはずだよねえ?? ここで遭遇する相手は高位の存在であるということを」
男は言葉を紡ぐごとに、強い嫌悪感をその顔に表していった。
複数の火炎球で巨人を牽制していたオルビークはその男の姿を見て、目を見開き、そして吐き捨てるように言う。
「ううむ……わらわの魔術感知が効かないわけじゃな……」
火球を巨人の顔面に集中させ、一瞬の隙を作ったオルビークは滑り込むように、俺の前までやってくる。
そうして、謎の男を正面から睨みつけたオルビークは憎々しげに呟く。
「お主が高位文字召喚術師……? 何の冗談じゃ? 王国八人の高等魔術師が一人――エイドス・ヴェルガ」
だんだんと警備が厳重になり、ある程度進む度に魔法バリアの張られた小さな扉が現れる。
オルビークの解除技術の前には、全く意味を為さない扉ではあるが、その数の多さが最深部に近づいているという証拠だ。
俺たちは強く緊張感を持って、闇の先へと進む。
そうして、ようやく大部屋に出た。
上の階の、たくさんの通路と繋がっていた大部屋と同じ構造になっている。
広さもほぼ同じだが、この大部屋には、奥の壁に一つ鉄扉があるだけだった。
「ここが最深部……」
俺の声は震えていた。
やっと、ここまで辿り着いた。
俺は思わず、最後の扉に駆け寄っていく。
大部屋に入っても、何かが起こる様子はない。部屋の中央を過ぎて、もうすぐ扉に手が届く。
『地獄骸』を失ってから、俺はこの時だけを思い描いていたのだ。
これでようやく、平和な日々が訪れる。
よかった、俺はもうこれ以上、誰も傷つけずに済む――。
鉄扉に手をかけようとした時だった。
ものすごい速度で『邪神剣』の操る左腕が背後を向こうとする。
左手の強力な方向転換に、身体全体が引っ張られ、何事かと思った瞬間。
目の前に、俺の身体以上に巨大な鉄の拳が迫っていた。
『ちっ! ぼうっとすんな! 召喚主ッ!』
『邪神剣』は激しい罵倒の言葉と共に、その刀身で拳を受け止める。
『邪神剣』を守るように、邪悪な闇の光が渦巻き、折れる寸前のところで巨大な拳を受け流した。
『さっさと距離を取れッ! 次が来る!!』
俺は急いで、その場を離れる。
腕が大きすぎて敵の全貌がよくわからないが、どうやら俺は大部屋の中心に出現した謎の巨人によって、仲間と分断されてしまったようだ。
もう片方の鉄剛腕が振り下ろされることを警戒していた俺だったが、二撃目は予想外の攻撃方法だった。
正面から俺に向けて放たれたのは、聖なる光の弾丸。
『天使翼』の攻撃と同種のものだ。
アリカがさっき説明していた単語に置き換えると、聖属性の攻撃。
素早く身をかわして、俺は弾丸を回避する。
が、今度は鉄の巨拳が再び迫りくる。
俺が上を見上げると、敵の全貌がようやく視界に入った。
天井ギリギリのところに大きな鉄の顔があった。
その表情は険しく、何かに激怒しているような表情で完全に固定されている。
鉄の像に生命が吹き込まれたようなモンスターだ。
だが、特筆すべき点はそこではない。
彼の大きな右手は直接俺を攻撃しているが、その左手からは聖なる光弾を出現させ、攻撃に使用しているのだ。
巨人の左手は、俺と反対方向に向けられた。
その狙いは、アンデッドたちだ。
多数の聖なる光弾が放たれ、それを撃ち落とすために『地獄射手』が闇を生み出し、矢に変換しようとするが――
「グォォォォォッ!!!」
巨人が突然咆哮したかと思うと、聖なる白の衝撃波が部屋中に広がった。
それと同時、『地獄射手』の闇は霧散し、大量の光弾がアンデッドたちの群れに着弾する。
アンデッドたちの悲鳴が上がり、統制に混乱が生じた。
「……こいつ、鉄属性じゃなく、聖属性の召喚モンスターか!?」
地上階にいた有象無象の文字召喚術師たちの使役していたモンスターは、鉄か獣だった。
聖属性を操るモンスターは初だ。
闇の無力化能力、それは大半がアンデッドで構成された俺たちの戦力にとって、早急に対処しなければならないものだった。
「闇を生み出す能力は使うなッ! またかき消されるぞッ!」
俺は配下たちに向かって叫ぶが、彼らの混乱は広がっており、収拾がつかなくなっている。
好転しない状況に俺が歯噛みしていると、
「あはははははははッ!」
大部屋全体に、不快な哄笑が鳴り響いた。
声のした方向を見ると、いつのまにか巨人の足元近くに、一人の男が立っている。
細長い瞳を持ち、やけに赤黒い唇はにやりと歪んでいた。
長い髪は床につくほど伸びており、引きずる形になっている。
男の肌は全体的に血色が悪く、まるで幽霊のような、嫌な空気を周囲に作り出していた。
さっきまでは確かに気配を感じなかった……ということは、気配消失の魔術が用いられていたのだろう。
だが、オルビークが何かを察知した様子もなかった。
俺がそんな疑問を一瞬、顔に表したことに気づいた男は、「ああ」と何かを納得した様子に頷いた。
「私の気配消失魔術が、きみたちなんかに見破れると思っていたのかね? なんだかねえ、浅慮だよねえ。この地に足を踏み込む段階でわかっていたはずだよねえ?? ここで遭遇する相手は高位の存在であるということを」
男は言葉を紡ぐごとに、強い嫌悪感をその顔に表していった。
複数の火炎球で巨人を牽制していたオルビークはその男の姿を見て、目を見開き、そして吐き捨てるように言う。
「ううむ……わらわの魔術感知が効かないわけじゃな……」
火球を巨人の顔面に集中させ、一瞬の隙を作ったオルビークは滑り込むように、俺の前までやってくる。
そうして、謎の男を正面から睨みつけたオルビークは憎々しげに呟く。
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