クリエイタースキルを使って、異世界最強の文字召喚術師になります。

月海水

文字の大きさ
62 / 86

第62話 信頼の盾

しおりを挟む
 爆煙が晴れ、オルビークの姿を再び捉えられるようになる。

 だが、その光景はあまり喜ばしいものではなかった。

「ぐっ……」

 床に仰向けに倒れたオルビークの服はところどころが破け、柔肌が露わになっている。

 だがもちろん、その肌の一部は光弾によって焦げ、治療がなければ、戦闘に復帰することは難しいだろう。

 動けないオルビークを守るように、彼女の前にアンデッドたちが立ち塞がる。

 その面子は軍の中心メンバーたちだ。

 さすがにA~S級のモンスターは、聖巨人の光弾攻撃による混乱においても、大きな負傷はしていないようだった。

「さっきは見事に不意を突かれたよ。でももう通用しない。さて、お礼をしなくちゃね」

 飄々とした言葉とは裏腹に、仲間がダメージを負ったことに対して、怒りの感情を迸らせている『地獄射手』が聖巨人を見上げる形で睨みつける。

 その手には短刀。

 闇を生じさせて、矢に変換する攻撃方法は、聖巨人に無力化されてしまうため、物理攻撃に切り替えたようだ。

『地獄射手』は隣に並ぶ『地獄暴食』に合図を出す。

 すると、『地獄射手』は『地獄暴食』の大きな右の手の平に乗り、『地獄暴食』は全力で投げつける形で『地獄射手』を聖巨人へとぶん投げた。

 高速で聖巨人の懐に潜り込んだ『地獄射手』は闇の短刀を振るい、聖巨人の鉄の胴体を抉る。

「ゴォォォォォォ……!」

 聖巨人が低い呻き声を上げる。

 どうやら痛覚は存在しているようだ。

 一瞬、ぐらついたところを『地獄射手』は見逃さない。間隔を空けずに短刀による連撃を繰り返す。

 みるみるうちに聖巨人の傷は増え、呻き声も大きくなっていく。

「今だ、召喚主! さっさとこいつの相手をできるモンスターを召喚してくれ!」

『地獄射手』の言葉通り、俺は再び魔法記述具を顕現させる。

 だが、万年筆を握った瞬間、

「残念だよねえ、させるわけがないよねえ、学習できないのかねえ!!」

 俺の顔面の真横、息を感じられるほど近くに、エイドス・ヴェルガの顔があった。

 とっさに飛び退いたのと同時、ヴェルガの周囲にオルビークが扱っていたのと同種の火炎球が出現し、その全てが俺の身に襲い掛かった。

 邪神剣がすんでのところでその全てを斬り捨てるが、集中が途切れたことによって、魔法記述具は空中に霧散してしまう。

「クソッ!」

 俺が悪態をついてヴェルガを睨むと、彼は涼しい顔をして指をパチンと鳴らした。

 すると、傷ついた聖巨人の身体がみるみるうちに再生していく。

 その一部始終を見ていた『地獄射手』の顔がひきつった。

「……そ、そんな巨体を一瞬で回復させる治癒魔術を使えるなんてね。さすがは高位の魔術師といったところか」

『地獄射手』がそういうのも無理はない。

 ギルダム大峡谷で彼らが重傷を負った時、レーナたちが数時間かけてやっと、彼らの傷は癒えたのだから。

 治癒魔術とは本来、一瞬で回復できるような便利なものではないのだ。

 しかし、眼前に立ちはだかるヴェルガは、『天使翼』とほぼ同じレベルの高速で、傷を回復させることができる治癒魔術を使用した。

 それが示す事実は、聖巨人を倒すには治癒を許さない高火力の一撃を浴びせる必要があるということ。

 今いるモンスターたちの中に、その条件を満たすものはいない。

 やはり、俺が聖巨人を一撃で屠れる、新しいモンスターを召喚するしか勝ち筋はなかった。

 だが、どうする?

 文字召喚を行う僅かな時間。
 それさえも、王国八人の魔術師が一人、エイドス・ヴェルガが相手では稼ぐことができない。

 反撃できなければ、俺たちは死ぬのみだ。

 必死で頭を回転させるが、妙案は出てこない。

 冷汗が流れる。こんなところで死ぬわけにはいかない。
 何か、何か策は――。

 そうやって苦悩する俺の前に、不意にたくさんの影が並んだ。

 俺には、その意味が一瞬わからなかった。

 でも、すぐに気付く。

 事態を察した『地獄射手』が聖巨人から距離を取って、影たちのもとまで戻ってくる。

 そうして俺は、俺の目の前に立ち並んだたくさんの影たち――俺の召喚したモンスターたちと視線を合わせた。

「お前ら……」

 彼らが何をしようとしているのかはわかった。

 端的に、彼らは盾になろうというのだ。自らの身を差し出して。

「止めないでくれよ、召喚主。時間さえ稼げれば、召喚主がなんとかしてくれると信じているからこそ、ぼくたちはこの行動を選択しようと思う」

『地獄射手』は俺と正面から目を合わせてそう言った。

 彼らの目には覚悟があった。決意があった。

 危険な役目だ。本当なら止めたい。

 しかし、制止の言葉は口から出てこない。

 俺だって、それが最善の選択だというのなら、望んでこの身を差し出すだろうと思ったからだ。

 だから、彼らにかけるべき言葉はただ一つ。

 俺は魔法記述具を顕現させ、真剣な表情で命令を下す。

「ああ、頼んだ――なんとしても持ちこたえろ」
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

処理中です...